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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第四章 セルベルティア再び
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189話 集会②(別視点)

久々の『ノヴァ』方面の話です。

 薄闇に包まれた異質な空間。そこに鎮座するのは、この空間と同じように異質な力を持つ7名の人物達。

 ボルカヌ大陸から撤退し、新たに作った別の拠点にて集会を開いている様子だ。毎度のことのように『執行者(リンカー)』達のみが集結している。

 ただ前回と違うのは……『闘神』と呼ばれていたジークがいないことか…。ジークのいた席は誰も座らずに空いており、そこに座するに値する存在はもう『ノヴァ』にはいない。現在は司達の仲間として、『ノヴァ』との縁は絶たれている。

 8人で完全な円形になるはずの配置が、なんとも不完全な陣形になってしまっているのが目に付く。




「見つけたのか! 遂に…!」

「ええ、間違いないわ。確かに感じた……僅かにだけどあの方の波長を。ついでにその片割れの方もね。やっぱり混じってるみたいだわ」


 先日の司一行との出来事を『夜叉』が皆に報告すると、『クロス』が年甲斐もなく興奮した様子で反応する。


「…双方を持っているのは推測通りだったようだな。それは今真実となったと…」

「ここにきて朗報だなそりゃ。最後の面倒なピースが揃ったわけだが……」

「そうね……それでも手出しなんて出来ない状況だわ」


『クロス』程ではないが同じような反応を見せる『絶』と『銀』を見るに、司一行との戦闘は『ノヴァ』にとって非常に有力な情報を得るきっかけとなったようである。

 しかし、喜びを見せる一方で『夜叉』の言葉にはすぐに皆表情を曇らせてしまったが…。


「『神鳥使い』だけならまだしも…『闘神』までいるとなるとな……」

「……勝ち目無いですもんねぇ」


 溜息を吐きながら『絶』が懸念していることを口にすると、それにつられて『白面』も弱気な発言をする。

 それもそのはず、司とジークの戦闘力は、Sランクを上回る力を持つ『ノヴァ』のメンバー達を上回るからだ。たった1人で。

 下手に手を出せば自分達が壊滅的状況になってしまうことが分かっている手前、ここまで積み重ねて来たものを全て台無しにされるのは絶対に避けなければならない。しかも、小細工をしたところで大した意味を成さない程の実力を誇り、また周りに従えている者達の特異な力も厄介である以上、非常に相手にしづらい判断を下すしかないのが現状のようであった。


「確かに2人のどちらか一方いるだけでも無理だけど、悪い知らせがあるわ」

「なんだ?」

「取り巻き達よ。アイツら……もうデータ通りじゃないわ。全員が強者に入る部類にまで成長してる」

「……嘘だろ?」

「本当よ。エルフの男は精霊の行使でAランク並み程度、『鉄壁』に至っては最早Sランク上位と言っても過言じゃないわ。魔法にも相当精通してるしね。もしかしたら『武神』と並ぶわよ……」


『夜叉』は自らが相対して分かったことを元に、そう皆に告げた。当時を思い出しているのか、少々不満気な顔で。

 ただ、素直に戦力を把握して理解する程度の余裕は持ち合わせているようだ。


「『神鳥使い』が頂点じゃねーのか?」

「馬鹿、あんなの論外に決まってるでしょ、『闘神』に関しても……。そもそも同じ枠組みで考える方がおかしいわよ。SランクがA……いやBランクだとすると、あの2人は正真正銘のSランクよ」

「確かにね~。『神鳥使い』の方はともかく、『闘神』も世界が生んでしまった異物みたいなもんだからね」

「あの時相討ちでもして2人の魂が回収出来れば最高だったんじゃがな。……だが結果は最悪か。上手くいかん世の中よ…」


 年寄りだからか、どこか悟ったように肩を落とす『クロス』からは哀愁に似た何かが滲み出ていた。

 そしてそれを見ていた者達は同感だったの同情したのかは分からないが、頷いたり難しい顔をしたりと…それぞれの反応を見せた。


「……世界の異物は『神鳥使い』を含め今の所3人か……。恐らくあと1名いるはずだが……一般人に上手く紛れている可能性が高いだろう。こちらに関してはもうどうしようもない。判明している3名のみに気を付ければよいだろう」

「そうだな。しかも内2名が固まってるのは案外ラッキーかもしれねーぜ? ネズミはともかく他に集中できるしな」

「そうね。でも……」

「どうしたんじゃ?」

「まだ報告することがあるわ。……ちょっと想定外の人物に会ったものだから驚いたんだけど……天使に会ったわ」

「「「「……は?」」」」


『影』は終始無言であったが、それ以外の他の者達から間抜けな声が漏れる。

 あり得ない単語が聞こえたぞと……。


 しかし……


「天使……あの小さいローブのお嬢さんが天使だったのよ。アタシの闇を跳ね除けたし間違いないわ」

「馬鹿な!? 天使が今まで生きているなどあり得んぞ!?」

「でも現実に見たのよ。背中に純白の翼だって生えてたし、なによりアタシの力が通じないのがその証拠でしょう。退魔の力を持つのは天使くらいのものなのは知ってるわよね?」

「だが…それなら一体どうやって……? 我々が見つけてもおかしくないはずだが…」

「さぁ…そこは分からないわ。でも現実として生き残ってた……それは事実よ。成長が止まっているように見えたから、多分……」

「……まぁそうなるわなぁ。この長い年月の間大したもんだが…」

「フフフ……それはさぞ辛いでしょうにねぇ。想いとは実に残酷なものです」


 セシルの身体の成長が止まっている理由を知っているらしく、今だに若い姿をしていることに疑問があるわけではないようだ。疑問に思っていることは、自分達に今まで見つからず、そして気づかれずに生きていたということに対してだろう。

 世界がいくら広かろうと、長い歳月を経れば大抵の人物を見つけ出すことくらいは可能な索敵能力を『ノヴァ』は持っている。にも関わらず見つからないと言うことは、不思議では済まされない何かがあるはずだった。


「天使のことは今は置いておけ」


 ここで、場の流れを変える雰囲気で『絶』が語り始めたので、皆は閉口し耳を傾ける。


「総員……天使のことを含め新たな情報はまた後日改めて話し合おう。今は…魂の回収が先だ。もう成長が見込めない、または劣化の始まった者に関しては順次対処していけ。期日間際でドタバタされても適わんからな……動ける者から動いていけ」

「あ、それなら一旦『鉄壁』は候補から外しといた方がいいわ。あれは……きっとまだ伸びるから」

「……了解した。まぁそちらはどのみち手出しできん。今は放って置け。……して、聞くところによるとセルベルティア王家が『神鳥使い』との接触で我々の警戒を始めているとのことだ。これも考慮しておけ。すぐに大陸全土に広まるぞ」

「……勘付かれちまったのは痛いが、もうあまり関係ないしな」

「はいは~い。じゃあ僕も新しい子達と一緒に集めちゃおっかな……待つの面倒だし」

「東の時のような騒ぎをなるべく起こすなよ? 『影』を見習えお前は」

「…(コクコク)」

「分かってるってー。レッツゴー♪」


『絶』の忠告をしっかり理解したのか定かではないが、一番早く『虚』が行動に移り、さっさとこの部屋から退出していく。そしてそれを合図に他の者も椅子を立ち上がり、次々に自らの目的……ノルマを達成させるため動き出した。


「『夜叉』も行け。……お前の本領は今こそ発揮されるだろう?」

「そうね、じゃあアタシも行くわ。……やっとこの子を使ってあげられそうよ」


 残った『夜叉』にも、早く他の者同様に動けという指示を出す『絶』。『夜叉』もその指示に納得し動き始める。

 しかし席を立った直後、『夜叉』の手に闇が集まり、ヒナギと相対した時に見せたあの大太刀を急に手に取ったと思いきや……別の形状の武器を携える。長さは同じであっても、大太刀のようなスラっとした刀身は面影を失くしている。


 手に握られているのは……大鎌であった。

 湾曲した刃に手を当てて、『夜叉』がどこかうっとりした表情で見惚れている。


 そのまま片手でクルリと大鎌を器用に回す『夜叉』の様子から、相当この武器に精通し手慣れているらしく、少なくとも熟練者以上の使い手であるようだ。

 どうやら大太刀は本気の得物ではなく、こちらの大鎌が『夜叉』のメインの武器だったらしい。

 大鎌が空を切る音が不気味にこの場に響く。


「この子使ってたら全部一瞬で済んでたんだけどね……。あ~……強力すぎて夜にしか使えないのなんとかならないかしら?」

「愚痴を言っている暇があったら今の内に回収に励め。それも含めてあの方から授かった力だ」

「分かってるけど、少しは同情しなさいよアンタは……。それじゃあね」


『絶』に言葉を吐き捨てて、『夜叉』もその場を後にした。

 それを『絶』はジッと見送り、『夜叉』の姿が見えなくなると…


「……私も行くとするか」


 続いてこの場を後にしていった。

次回更新は月曜です。

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