表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第四章 セルベルティア再び
182/531

180話 ジークの変化

 ◇◇◇




 夜風が幾分か暖かい。もう半袖で一日中過ごしても問題ない程の季節となりつつある。

 もう春と夏の境に入ったくらいの季節だな…。


「……これが全部だ。俺に非があっただけだ」

「……皆怪我とかしてなかったけど…なんでだ?」

「セシルが治した、なんでも天使の力だとさ…。それであの部隊の連中も全員治しちまって、だから今日の内にそいつらは帰ってったぞ。…セシルは今部屋で休んでる。少し一人にしてくれってよ…」

「そっか。……はぁ、何がどうなってんだか…」


 現在は夜も耽った深夜の最中。

『安心の園』の屋根上で、俺とジークは並んで空を見上げて並び、話をしている


 俺がセルベルティアから帰ると、皆の様子が何処か変だった。

 王が派遣した部隊は撃退した。それによる怪我も皆無し。それにも関わらずだ。一体何があったのか…。


 だから、俺がセルベルティアにいる間にあったことを一通り聞くことにしたのだ。本当は皆から聞いても良かったがジークが話すと言い出したので、今この場でその説明を受けたところである……が、驚愕と不安と戸惑いによる3つ攻めに、俺のsan値は限界間近ですよ…。


「オイ…なんでそんな普通でいられんだよ」


 そんな状態の俺だが、顔は至って素面を保つように努力していた。そのためかジークは俺が話に動じていないと判断したようで、俺へと疑問をぶつけてきた。


「普通じゃないって。超驚いてるよ…」

「そうじゃねぇ。なんで…ちっとの怒りも見せねーんだよお前は。俺のせいでアイツら大変な思いさせたんだぞ? しかも一人はお前の彼女だ。なのに…なんでだよ…」


 …ん~? あぁそういうことか。普通でいられるってのはそっちの意味なのか。


 ジークが珍しく困惑した様子だったので始めは意味が分からなかったが、どうやら俺がジークに対し怒りを見せないことに困惑しているようだ。


 といってもなぁ…。


「お前でもそんな風に思うんだな? ……お前に皆を任せたのは俺だ。非は俺にもあるだろ……配慮が足りなかったし、見通しが甘かった。ただ…『夜叉』がいたんならそれくらいは教えてもらいたかったな…」


 これなんだよなぁ…。

 俺が離れることで危険性が高まるのは分かってたことだし、その対策をジークに任せたのは俺だから俺にだって非は当然ある。それに、ジークの存在自体が連中への抑止力になると思い込んで、ジークに全て投げっぱなしにして綿密に対策を練ったわけでもないから、それを怠った俺に一番非があるように思えて仕方がない。

 つーかそれ以前に、ジークが後れを取るっていう事態が想定できなかった。


 怒りがあるとすれば…自分に対してだな。


「オイオイ…お前何言って…「それにお前は後悔してるみたいだし、何より気遣ってくれた結果だから強く怒れねーよ。つーか怒りをぶつける奴は『夜叉』に対してだ、お前じゃない。…あ、ちっとはあるけどさ…」

「…」


 ジークが意味が分からないといった表情で俺に突っかかろうとするが、それを遮って俺の考えを打ち明ける。


 いや確かにちょっとは怒りあるよ? 油断してんじゃねーよとか、最初から話も聞かずに追っ払えよ…とかさ。

 でも、それって全部俺にブーメランで帰ってきそうだから言えるわけない。

 俺だってセルベルティアの広間で、ファンキーお兄さんの『マルチブレスガン』の説明ダラダラ聞いて油断して一瞬危なかったしね…。


「…確かにさ、本来なら俺はここでお前のことぶん殴るくらいの理不尽さを見せるところなのかもしれない。普通…自分の彼女が危ない目にあったらその原因になった奴に苛立つだろうしな。でも俺さ…情けねーことにそんなことする気力が湧いてこないんだ…。悪気がなかったことが分かってるから…尚更な。俺やっぱり普通じゃないんだと思う」

「………」


 彼女を第一に考えなきゃいけないのは分かってる。でもなんか違う気がするんだよな…上手く言葉で言えないけど。


 俺がそこでまで言うと、ジークは沈黙した。俺は一通り話を聞いたため今度は逆に質問をしようとするも、いつもと違う様子のジークに声が詰まり声を掛けられなかった。




 それから何分経った頃だろうか? 

 ようやく…ジークが口を開いた。


「なぁツカサ……仲間って何だ?」

「は?」


 突然、そんな質問をされて呆けてしまう。


 何だ急に…。それ友達と仲間の少ない俺に聞くの間違ってないか? 


 …とまぁそんなこと言えるわけもなく、ジークの言葉に耳を傾ける。


「俺ぁよ、今まで少しでも一緒にいる奴なんてのはガキの頃と、連中とつるんでた時くらいしかなかったし、その辺りのことがよく分からねぇんだ。連中とはただ利害が一致したからいただけだが、お前等とはなんかその…違くてよ。今回アイツらに嫌な思いをさせたのがなんかすげぇ嫌でさ、いつもと違ぇんだよ。連中に対しては一度も思ったことがねぇ何か…それが今はあるんだ。それが…仲間ってやつの影響なのかと思ってな…」

「…具体的にはどんな感じだそれは…? どう嫌なんだよ?」

「…俺ぁ知ってたんだ、セシルが天使だってのは。ずっとそれを隠してたのはアイツを見てれば分かる。それをバラすような展開にしちまったことに対してがまず一つ。そんで…アイツらを危険に晒したこともそうだな…。アイツらがいくら強くなっても…執行者(リンカ―)にはまだ勝てねぇ。今回は『夜叉』の分身だけだったから運が良かっただけだし、本体が来てたら間違いなく全員殺されてた。それがもう2つ目の嫌な感じだな…」

「そうか…。多分間違ってないぞそれ……きっと…」


 えっと…今まで仲間というモノが分かってなかったけど、今回の件でいつの間にかその意識が芽生えてて、自分のこの気持ちが何なのか知りたい…ってことか。

 なんだ…既に分かってんじゃん。ならそれには頷くしかない。


「やっぱりか…。これが仲間意識ってやつなのか…」

「その歳で知るってのも不思議なもんだな」

「あぁ。なんつーか…自分の物を汚された気分だ…」

「…まぁ、皆はお前のじゃないけど…自分が汚されたみたいに感じるし、相手に腹立つよな」

「…おう。お前と初めて会った時、お前が俺に敵意むき出しにした気持ちが今ならよく分かる。そりゃ…怒るよな………悪ぃな…」


 俺と初めて出会った時のことを思い出しているようで、ジークからは全くと言っていい程想像もつかなかったのだが、酷く落ち込んだ様子を見せている。

 溜息まで吐く始末で、いつも刺々しいオーラが今ではヘナチョコに感じる。


 誰だお前? お前ホントにジークかよ…別人じゃねーだろうな?

 あのいつもの横暴っぷりと態度はどこに行ったんだ…。


 俺がそう思うくらい、今のジークはいつもとはかけ離れている。

 比べるなら、今ではテリスちゃんの方が頼もしく見えるんじゃないだろうか? …いやマジで。


 こんな時どう声を掛けていいかも分からず、俺は当たり障りないと思った言葉をジークへと掛けることにした。それを自分にも言い聞かせるように…。


「と、取りあえず…セシルさんの正体が露見したことと皆を危険に晒したことに罪悪感感じてんなら…次は全力で守れ。多分セシルさんも狙われることになるんだろ? ならそれで今回はチャラにしてやるよ」

「あぁ…悪いな」


 だがジークは変わらない…いや、変わってくれない。


 なんだよその顔は……ちっ、調子狂うな…。そんな普通の返答なんて求めちゃいないんだよ…。

 何故に俺がそんなこと抜かす状況になってるんだろうか? 人のこと言えんのに…。

 というか、事のあらましを聞くだけだったはずがジークの心理カウンセラーみたいになってるぞ。


「つーか…何でセシルさんが天使だってこと知ってたんだ? 聞いたわけじゃあるまいし…」

「それなんだがな、似た匂いを知ってたから…だな」

「似た匂い? …ってお前なぁ、急になに性癖暴露してんだよ気色悪い…匂いフェチなのか?」

「馬鹿! ちげーよっ! そっちの匂いじゃねーっての!」


 いきなり変な事を言うもんだから、そっち方面の話題を想像してしまった。しかし…どうやら違ったようである。


 先程とは違い、今度は呆れの溜息を吐いたジークは、ポツポツと話し始める。


「俺ぁ嗅覚が優れててよ、常人には分からない匂いも嗅ぎ分けられるんだ。…まぁ種族の特徴みたいなもんなんだが…俺はその中でも一際その力が強いみたいでな、種族特有の匂い…もっと言えば魂の匂いを感じ取れるんだよ」

「魂の匂い…だと?」

「おう。連中曰く、数少ない魂を感じ取れる者の一人だって言ってたっけな…。だから…セシルの匂いが天使特有の匂いだって初めて会った時に分かってたんだよ」

「そ、そうだったのか……で、似た匂いってどういうことだ? そんなの何処で…?」


 魂を感じ取れる云々も気になるが、似た匂いを知っていることも気になる。

 それをジークに確かめようとしたが、ジークはここで頭をガリガリ掻いては困った顔をしてしまった。


 …はて?


「それなんだけどよ…ちっとばかし信じられないかもしれねーんだが…。何故か知ってるんだよな…俺」

「…」

「俺はセシル以外の天使の奴になんて会ったことねーし、知ってるはずがねーんだよ……でも天使の匂いは知ってる…。意味わかんねーこと言ってるけどよ」


 心底困ったように言うジークからは…冗談を言っているようには聞こえなかった。

 ただ…


 うん、意味分かりまへん。矛盾してるしな。

 記憶喪失なのか? いやいや、例え記憶喪失だったところでそもそも天使は絶滅しているわけで、会うことすらできない状況だからな…それはないわ。

 だとしたら…何だろうか?


「お前と俺が誓約を交わしたあの日、未来の記憶云々のことお前持ち出したろ? 俺も似たような境遇だったわけだ。俺の場合は未来とは言えねーけどな。お前の言葉を借りるわけじゃねーけど…魂がそう言ってるって言うのかもしれねぇ。なんかこう…染みついてるってゆーか…」


 ジークの抱える感覚は、どうやら俺と似ているのかもしれない。俺も確かに、未来の自分の記憶はもう自分の物の様に感じているし、染みついているっていう表現はそれと近い。

 だがそこまで分かっていて、さらにはセシルさんが本当に天使だったことを考えるに、その感覚は本物だと思われる。


「ジークのそれは間違ってないんだろうな…。ただなんでそう感じられるのかは分かんないけど」

「まぁ別に俺に害があるってわけじゃないからどーでもいいんだけどな。ただ、セシルが天使だって分かったのはそれが理由ってだけで、それが正しかっただけだ」

「そうだな。…なんにせよ、セシルさんが天使だってことを俺達以外は知らないのが不幸中の幸いだったな。多分イーベリアって人も平気っぽいんだろ?」

「セシルは心が見えるし、多分な…」


 アンリさんが何故狙われたかも気にはなりはしたが、一番驚いたのは…やっぱりそれかな。まさかセシルさんが天使だったなんて…。


 話を聞く限りでは、『夜叉』が皆の油断を誘うために狙ったイーベリアという人を庇った際、『夜叉』の『黒傀儡』の持つ闇の力に侵食されそうになってしまったところを、天使の力で無理矢理浄化したそうだ。

 天使には浄化の力が備わっていて、多分それが『黒傀儡』とかってやつを消し去ったり、または自らを襲う侵食を振り払うことを可能にしたのだと…その時の話を聞いたジークが言っていた。




 ただ、分かっている事実があるとすれば、セシルさんはやはり優しい娘だったということだ。

 自らの正体を隠すよりも人の命を守ることを優先したんだから、それは間違いない。


 今まで天使だということを隠し通してきたのもどうやら過去が関係しているようで、今はそのショックで部屋に塞ぎこんでしまっている。ポポとナナが様子を見に行ってからまだ帰ってこないのを見るに、相当重い案件なようだ。

 食事も喉を通らないようで、夕飯時にはセシルさんは姿を見せなかった。…まぁ俺達全員あまり食べれなかったけどな。とてもそんな気分ではなかったし。


『夜叉』の襲来は皆に大きな爪痕を残してしまった。


 だが…取りあえず今やるべきことは1つだ。

 ついこの間までの雰囲気まで…俺達のパーティを元に戻したい。ただそれだけだ。

 こんな雰囲気は…俺達のパーティには合わないからな。そのために俺は動くだけ…そんで皆の力になれればそれでいい。


「セシルさんがそう言うならそれを信じるだけだ。そんで俺達は…セシルさんが少しでも早く立ち直ってくれるように努力すればいい」

「……そうか」

「…あ? 何他人事みたいに言ってんだ? お前もやんだぞ?」

「いや…だが俺は…」


 まるで他人事のように言うジークに、内心溜息を吐きそうになる。


 恐らくまだ受け入れられてないんだろうな…これは。

 急に仲間というものを知ったから、今どうしていいかまだ分かってないんだろうきっと。

 一応俺もこの前知ったばかりで受け入りみたいなもんだが、ここは論してあげた方がいいかもしれない。


「俺とお前はさ、未来だとちゃんと仲間だったみたいなんだよな。だからさ、流れは違うだろうけど、その仲間になるきっかけが今なのかもしれねー。ジーク…今ここで、俺達を仲間として受け入れてくれよ。そんで…俺と一緒に皆を守ってくれ」

「いや…分かってはいるぞ? ただまだ受け入れきれないってだけで…」


 うん、知ってる。見りゃ分かるわボケ、だからさっさと頷けコラ。

 すぐに変われるなんて思っちゃいねーよ。


「知ってるっつーの。まぁ急なことの連続で、流石のお前も混乱してるのは分かる…だが、事実だろ? すぐに受け入れられるなんて思ってないし、少しずつでいいからさ」

「……努力する」


 言質は取れたな。

 …ま、例え何も俺が言わなくても、悪意が元々ない、戦闘欲が異常なだけのある意味純粋すぎるような奴だ。答えには自ずと辿り着いてたと思う。

 だから…これは最後の後押しだ。


 俺はジークの肩を、トン…と軽く拳で叩く。

 そして…


「…言っとくが、あの日から俺はお前を仲間だとしか思っちゃいないからな? …今回は完全に俺達の負けだ。セシルさんがいたから助かっただけで…俺達(・・)は『夜叉』に負けたんだ」

「! お前…。あぁ…そういうことかよ。少し分かったぜ…仲間ってもんがな…」

「…だから頼むぞ? お前が負けていいのは俺だけだ。それ以外の奴には負けない奴だって俺は思ってっから。その力でお前も一緒に皆を守れ、そんで次は必ずやり通せ」


 仲間なんだから、お前が負けたことは俺の負けと何ら変わらない。そしてそれは、逆にも言い換えられることだ。


 そこまで俺が言うと、ジークは俺の拳を軽く手で振り払った。

 そしていつもの獰猛な笑みを浮かべると、元気よく返事を返してくる。


「…ヘッ、当たり前だろうが。つーかそのうちお前にも勝ってやるから待ってやがれ」


 その声からは、先程までの意気消沈した様子は見られない。


 もう大丈夫そうだな。良かった…。


「おう。待ってるよ。ま、いつものジークに戻って何よりだ。皆も心配だけど、お前までそんな態度してるからぶっちゃけ不安だったんだよな」

「あ? お前……マジかよ…」

「? なんだ?」

「…なんでもねぇ。お前はやっぱり化物だって改めて思っただけだ」

「はぁ? いきなり何喧嘩売ってきてんだお前…。悪いが乗らねーぞ」


 いきなりポカンと口を開けたと思ったらそれかよ…。相変わらず口悪いなコイツ。

 まぁ、それでこそジークって気はするけど。


 今の発言にカチンとくるものはあった。しかしまぁ、私はコイツよりも年上だし? 黙って見逃してやりますとも。


「いや、別にそんなつもりは今ねー。…でよ、話変わるんだが、お前に言っておきたいことがある」


 ん?


 先程までお互いにずっと空を見上げる形で屋根に寝転がり、焦点の定まらない瞳でペラペラ話していた俺達。

 だがここでジークがいきなり体を起こし、俺の方に顔を向けてジッと見つめてきたのだ。それに触発され、俺も同じように体を起こすことにした。


 何か…重大なことのように思えたから…。


 俺はジークの言おうとしていることを催促する。


「…なんだ一体?」

「アンリのことだ」

「っ!?」


 アンリさん!? 


 好きな娘の名前が出た瞬間に、心配と同時に嫌な予感が俺の脳裏をよぎった。

 そしてそれは俺の運の悪さを肯定するかのように、要らぬ心配事を増やすこととなった。


「アンリだがよ…なんで連中が目の色変えて狙って来たのか、その本当の理由は俺にも分からねー。…だが、アンリには不思議な点が1つだけあるんだよ」

「不思議な点…!? 何だそれは…!?」

「アンリの種族は人だ…それは間違いない。匂いも人特有のそれだし、外見もお前と変わらないしな」

「…」

「だが…魂がどうもおかしいんだよな。俺がお前の…仲間(・・)になってからずっと気になってたんだよ。なんでアンリはあんなに弱ぇんだろってな」

「は? いやだってそれは…アンリさんまだレベル上げとかしてないし「必要ねぇよ」…え?」


 俺の考えは、即座にジークに否定された。


 アンリさんが弱いのはただ単純にレベル上げしてないことと経験の少なさがあるからであって、個人としてはそれなりに上の部類に入ると思っていた俺はジークの言うことがよく分からなかった。


 俺達基準で物を言うのはどうかと思うが…。

 俺達と一緒にいるからといって強くなるなんて理由にはならないしな。それが普通だ。


「必要ねぇんだよ。…人の強さってのは魂で決まるって神が言ってたんだろ? お前の魂が相当ヤベェのはもう知ってるし分かる。漂ってくるモノが半端ないからな…それは俺自身にも言えることだ。だが…」


 そこで一旦言葉を止めて数秒黙った後、ジークはまた…語り出した。

 驚愕の事実を。


「アンリの魂は…俺らのそれと変わらねー。俺達と同じか…下手すりゃそれ以上だ。それくらいの魂をアイツは宿してる。にも関わらずあの強さはどうも不自然で仕方がねぇんだよ…」


 絶句した。

 ジークの口から出た信じられない事実に、何も考えられなかった。


 それでも…ジークは言葉をやめてはくれない。


「ぶっちゃけ俺の威圧にビビるアイツを見て、はぁ? ってなったぜ。ツカサと一緒で楽しめそうな奴がもう1人いて嬉しかったんだが…違ったんだよな。だからツカサ、アンリには…何か秘密があるぜ。アイツ自身気づいていない…とんでもねぇ何かが…。多分それが連中が狙うほどのモンなんだろうぜ」


 そんなこと…本人に言える訳ないだろう。

 そういや神殿の時もオーラは3つ出てた。あれは…必然だったのか? それに準じた何かを…アンリさんは持ってるってことなのか? 嘘だろ…。

 アンリさんには…どんな秘密が…?


「ジーク、それ…アンリさんには絶対にまだ言うなよ」

「…でもアンリ自分のことをちょっと不思議に思い始めてるが…問い詰められるのも時間の問題だぞ? 当事者には伝えても良いんじゃ…」

「今言ったら混乱するに決まってる…! 落ち着いたら…俺から話すから…」

「…分かった」


 俺がそう伝えると、ジークは了承してくれたようで引き下がってくれた。




 そしてその後アンリさんが心配になった俺は、アンリさんの部屋を夜遅くにだが訪ねた。しかしドアをノックしても返事がなかったため、どうやら既に就寝してしまっていたらしく、会うことはできなかった。

 胸に不安が残ったがその気持ちを押し留め、俺も自室へと戻って眠りにつくのだった。

次回更新は金曜です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ