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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第四章 セルベルティア再び
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165話 暴言

今回主人公の口がいつも以上に悪いです。

 何故こんな状況になっているのか、それを俺は尋ねたはずだったが…返事は帰ってこない。

 昼間だというのに深夜のようだ。ただその夜の静けさとは違った類の静けさではあるが。


 俺は再度苛立ちを込めて尋ねた。


「オイ…何黙ってんだ…あ? その口は飾りか?」

「…ぅっ…」

「今この子に何をしようとしたのかって聞いてるんだよっ! 答えろ!」


 ついさっきまで俺を睨んでいた遣いの顔は、既になりを潜めている。そしてそれは、後ろに控えているお共の2人も同様だった。

 睨み合いは、俺に軍配が上がったようだ。


「こ、子供とはいえ、そやつらは我に無礼を働いた…。ならば当然だろうが?」

「…どんな無礼だよ?」


 正直何が当然なのか分からなかったが、どうせそれは貴族だからとかそんなちゃちな理由によるものだろうと推測。

 だが今はその無礼とやらの詳細の方が気になったため、理由はどうだっていい。


 するとどこか苦しそうに、だが怒りはむき出した状態で、遣いは口走る。


「その子供が我にぶつかって来たのだ。おかげで地面に倒れて恥をかいた…! 実に気にくわん!」


 遣いの口から出た内容に…一瞬理解が追い付かなかった。

 というのも、理由がくだらなさすぎだと思ったからである。


 ……はぁ? んなくだらねー理由かよ。


「我に今ここで斬られた方が、この子供のためになるだろうよ」


 あまりにも傲慢な言いよう。

 自分の癇に障った輩は死んだ方がいい。そしてそれがその者のためになると……そう言いたいわけだ。




『地位が高かろうと…人は人。理不尽に屈する必要はありませんもの。抗うことはむしろ正常なことですわ』




 この時、昨日姫様と会話した時のことを思い出した。

 そして俺はその時、理不尽には理不尽で対抗してやると考えたはずだ…。





 ブチッ




 どこかのタガが外れた音がした気がした。

 それと同時に俺を縛っていた自制心は決壊し、結果……久々にキレた。


「ぎ、ギルドの前を走ってたら……この人たちが急に出てきて…僕…止まれなくて…」


 自分が悪いことをしたと思っているのか、この子は泣きそうな顔で事情を話してくる。


「…そうかそうか。それは確かにお前も悪いな。…だけど、たったそんだけで斬る理由にはならねぇよな? オイ…」

「「「!?」」」

「ちょっとご主人!? 魔力漏れてるって!?」


 ナナの声が聞こえてくるが、んなもん知るか。


 俺は構わず遣いらに意識を向け続ける。


「…何様だ? お前ら…。貴族だか王族か知らないけどさ…神様にでもなった気でいるとかじゃないよな? 第一ここはお前らの国でもねぇんだぞ。自分達のルールがまかり通るとでも思ってんのか?」

「く、口の聞き方に…気をつけよ! やはり高貴な血筋でもない者は、い、異世界人といえど蛮族であったか…。陛下に進言する必要が、あるようだな…」


 勝手にしろボケ。つーかどっちが蛮族だよ。

 自分のこと棚に上げて偉そうにしてんじゃねーよ。


「その高貴な血ってのは…何を基準に決めてんだ?」

「それは…こ、この身に流れる血が高貴だからに…決まっているだろう? 理由など…それ以外にない!」


 説明になってないんだよクソが…。

 何さも当然みたいな顔して言ってやがんだこの野郎…!


「へぇ…じゃあその高貴な血ってのはこの世界じゃいらない存在の象徴みたいなもんだな。くだらないことで癇癪を起して騒ぎにする…迷惑極まりないな」

「な、なに!?」

「だってそうだろ? 俺達が何かしたから騒ぎになったわけじゃない…お前らがここに来たから騒ぎになってんだぞ。それも分からないのか?」

「フンッ、このような場所になど…よ、用が無ければくることなどないわ!」




 ブチィッ!




 なら一生家に閉じこもってろ!

 その言葉はこの町を馬鹿にしてると捉えていいのか? なら…この町全員を敵に回してるようなもんだぞ。


「なら出てけよ。振り返ることなく、今すぐこの町から出ていけ! 迷惑な奴はお断りだからなこっちは…。用件は済んだ! もうお前らがこの町にいる理由はねーだろ!」

「貴様! 先程からなんたる罵詈雑言を吐いているのだ!」


 取り巻きの騎士恰好の2人が、ようやく俺に食って掛かってきた。

 正直今頃動いても遅すぎると思ったが、自らの立場を考えて動き出したんだろう。

 遣いを守るための騎士が、守ることもしないなんてのは論外だ。


 コイツらは一応忠義に励んでいるようにみえて…実はコイツの腰吟着みたいなもんだろ? バレバレなんだよ。

 さっき話してる時から遣いの機嫌ばかり気にしてたからな…。

 嫌な忠義関係だな実に…。本人たちはそれでさぞご満悦なんだろうが、見ているこちらとしては良い気分でもないし…むしろ不愉快だ。


「ダーブラ様に向かってよくそんな口が聞けたものだな! お前のような奴が陛下にお会いになるなど…」

「…だからなんだよ? あ? 第一アンタらだって俺と似たような暴言吐いてんだろうが。加えて殺人まで起こそうとした…俺の言葉遣いなんて可愛いもんだと思うけどな」

「くっ…口だけは達者だな…」

「なんとでも言え。自己中心的な考えしかできないアンタらの脳みそよりかはマシなつもりだ。…ったく! 貴族の家系に生まれただけで偉そうにしてる奴風情が人の上に立ってんのかよ………笑わせんな!」

「ぅっ!?」

「…な、なんだ…一体…。それは何なのだっ!?」


 思ったことを隠しもせず、俺はただ暴言に似た言葉を吐きだしていく。

 そして怒りも含めて、魔力を目の前の3人にぶつける。

 俺が守っているこの子には【隠密】の効力で影響は及ばないはずだ。その証拠に、泣いてはいるものの特に変化は見られない。

 対する3人はというと、苦しそうに俺の魔力の圧力に耐えている姿を見せているが…どこか様子が変だった。


「あ? 何言ってんだ? ……ん?」


 遣いらが今にも卒倒しそうな顔で俺を見ていたため、何事かと少し疑問に感じた。

 いきなり態度が変わったわけだが、俺は魔力をぶつける以外に特に何かした覚えはない。

 周りを見てみると…


「なんですかそれは…!」

「ご、ご主人…それ…」

「…?」


 何だ? 一体何が見えてるんだ?


 野次馬もそうだが、ポポとナナでさえ驚いてるってことは…何かあったことは確かなんだろうけど…それが俺には分からない。

 体を見回してみても異常や変化は見られないし、驚いている理由に見当がつかない。




 …ま、んなこた後でいいか。今はコイツらの事だけに意識を集中していればいい。

 よく分からんが、俺に対して恐怖を覚えているというなら…むしろ好都合だ。

 …ハッキリ言ってもっと苦しめとさえ思う。この子が感じた恐怖はそれ以上の恐怖だっただろうからな。

 俺のやってることはまだ……ぬるい方だ。


 ただ、ずっとこのままでいるわけにもいかなかったため、さっさとコイツらを追い出すこととする。




「…とにかくだ。お前がこの子を気に入らないって思ったように…俺もお前らの態度と行動が気に入らないってことだ。王はそうじゃないことを祈ってると伝えとけ! 分かったらさっさと出てけ!」


 言いたいことはあらかた言い放った。後は早く出て行ってもらうだけだ。

 だが…


「ひぃっ!? ち、調子に乗りおって…! この餓鬼めが…!」


 魔力を少し俺が抑えると、楽になったことで遣いが罵ってきた。

 恐怖も感じてはいるようだが、それと同じくらいに怒りを感じている様子である。


 …ちっ、しつけぇ。


「なんだ? 怒りを我慢もできないのか? …というか何に対して怒りを覚えてるか理解しがたいんだが? 怒りたいのはこっちだってのにさぁ…」


 あ~……駄目だ。


 沸々と、また内側が熱くなるのを感じる。

 言いたいことを言って少し収まった怒り、それはコイツらの態度でまた再燃してきた。


「なら庶民は優秀だよな…お前らが先に馬鹿にしてきても我慢できるんだから。あ~高貴な血って随分とちゃっちいんだな?」

「だから、わ、我々は高貴な者だからこそ…それが許され「もういい…黙れ」…っ!?」


 その台詞は一番聞きたくない言葉なんだよ…。

 私だから許されるなんて発言は、誰にも許されねーんだよ。


「本当に何を言っても無駄だな…お前らみたいな人種は…。確かに分かりあえそうもない…」


 姫様…ゴメン。

 当たり障りない対応は無理そうですわ。貴女がまともでホント良かったよ…。だからこそゴメン。

 作戦は当然実行する。

 でも…俺は姫様達のいる世界には絶対に踏み込みたくないや。


 内心で姫様に約束を守れないことを謝ったが、そんなことは姫様は知りもしないだろう。

 …最後の締めへと、俺は入る。


「よく…そんな態度で生き抜いてこれたな? 俺の世界じゃ…間違いなくお前らは社会不適合者だ。俺から言わせてもらえばお前らの方が死んだ方がマシだ! 生きているだけの害虫なんぞ、いない方がいいに決まってるからなぁっ!」

「害虫!? なんt「追加でこれもよ~く伝えとけ!」


 また癇癪をおこしそうだったが、構わず言葉を続ける。


 これは、俺の最後の良心とも言える要求だ。


「少しでもだ。ほんの少しでもこの町の人に手を出したら、その時は…問答無用でお前らを地の底に叩き落すと伝えろ! これが守れないならセルベルティアの歴史はそこで終わりだ。王なんて関係ない…その時は生まれたことを後悔させてやるって言い聞かせとけ! …オラ! 分かったらさっさと帰れ! 指定された日時にはちゃんと行ってやっからよぉっ!」


 これさえ守ってくれるなら俺は何をされても別に構いやしない。

 一際力を込めて、相手を睨みつけながら怒鳴り散らす。

 コイツらが俺の言ったことを理解したかは分からないが…


「うわああああっ!!!?」

「命だけは取らないでくれぇっ!!?」

「ま、まてお前らっ!? 我を置いていくでない! ひ、ひぃっ!?」


 想像以上に怖かったのかしらんが、情けない声を上げてどうやらようやく退散してくれるようだった。

 こんな、時間にしたら数分のやり取り。酷く長く感じてしまったわけだが、それだけ嫌な時間だったんだろう。

 体感時間が狂ってしまうほどに、俺にとっては非常に無駄な時間だった。


 …ついでに俺の非を清算しとこうか?


「オイ、さっきの宝剣とやらの価値は知らねーけど、代わりにこれやるよ」


『アイテムボックス』を発動して、見た目はショボく見える斧を差し出した。

 宝剣を壊した代わりになるかはしらないが、出さないよりかはマシだろう。

 ベルクさんに丹精込めて作って貰って悪いが、あの宝剣相応のものはドラゴンの武器達しか俺は今持っていない。

 その中で、比較的使用頻度の少ない斧を俺は選択した。


 すると…


「っ!? …な、なんだ? そのなまくらは…。貴様この宝剣がどれほどの価値があると思っているのだ! 実に金貨30枚は軽くくだらんほどの価値があったのだぞ!?」


 あんなゴチャゴチャと装飾のされた宝剣だったが、やはり見た目相応に価値は高かったようである。

 まぁそりゃそうか、金みたいなのも使われてたしな…。バラバラになっても、それなりに高く売れそうだな。

 でも、性能もそれなりに良いだろうが…これはそれを上回ってるがな。


「…じゃあ平気だ。これ…ドラゴンの素材でできてるからな。金貨50枚は軽く価値あると思うぞ?」

「そんなバカな!? いや…だがやはりそれでは…!?」

「嘘だと思うんならどっかの鑑定屋にでも持っていってみるんだな。そこで分かるさ。この斧もそうだが、見た目でしか判断できないんじゃ…この剣も可哀想にな」


 足元に散らばった宝剣の残骸を見て、俺は舐めきった態度を取った。

 宝剣なだけに、宝の持ち腐れもいいところだと思ったのだ。

 見た目は確かに成金が使いそうなものだ。しかし、手で砕くときにそれなりに武器としての質も高いと俺でも分かったことから、もっと使うにふさわしい人物がいるに違いない。


「…く、クソ! いらんいらんっ! こんなもの…! 我はもう帰るぞ!」


 俺がそんな馬鹿にするような態度をしたことで、モノの価値を見抜けなった屈辱を感じているようだ。

 捨て台詞を吐き、俺の差しだした斧をそのまま放置し、連中は逃げるようにしてその場を後にしていった。


 …いらないってことは、宝剣を壊したことは無償でチャラにしてくれるってことでいいんだよな? 

 それはそれは…ご寛大な配慮ありがとうござんしたー。

 お礼にここから壁外まで投げ飛ばしてやろうか? 一瞬だぞ?


 内心でそんなことを考えながら、取り出した斧を再度『アイテムボックス』に放り込む。

 やがて角を曲がり、連中の姿が見えなくなったところで、すぐ近くで声が聞こえてくる。


「あ、ありがとう…兄ちゃん」


 無論この子である。

 この子以上に俺に近い人物は誰もいないし。


「いいんだよ……俺はこれくらいしかできることないからさ…。それより、怪我が無くて良かった」


 頭を撫でる。

 正直お礼を言われてはいけないが、この子の心境を考えるなら素直に受け取っておくことにする。


「でも、見えない角には気をつけろよ? ちゃんと角に差し掛かったら一時停止はしなさい。そんで、誰かの迷惑にならないよう、いつもの空き地でなるべく遊びなさい。今日みたいなことが起こってからじゃ遅いんだから…」

「うん…ごめんなさい…。それで……その…」

「ん? どうした?」


「あ……。消えちゃった…」

「消えた? …何がだ?」

「うん。さっきまでね、兄ちゃんが竜みたいに見えてたの。でも…消えちゃった…」


 …は? なんだそりゃ。

 俺が竜に見えた? …なに? そんな竜に見えちゃうくらいに俺って怖かったのか?

 どんだけだよ…。


 この子の言ったことは…ハッキリ言って嘘くさい。

 ならなんで…この子は怖がっていないんだ? 竜……まぁドラゴンだけど、そんなものを見たら恐怖しないわけないだろうし。


 だが、遣いらの様子も確かに変だったし、あながち間違いとも言い切れない…か。


「…よく分かんねーけど、もう過ぎたことだ。…それで、何処行こうとしてたんだ? 送ってくよ」


 取りあえず今はもう安全になったとはいえ、乗り掛かった舟というわけではないが送り役をすることにした。


 このままサヨナラっていうのもどうかと思うし、これぐらいはさせてほしい。


 なにより、この子に迷惑をかけてしまったということに対しての自責の念が大きい。


 連中にはお前らが来たから騒ぎになったと言ったが、それは…傲慢だな。

 俺にも非はあるといえばある。




 ◆◆◆




 この子と俺+αの2人で、道を歩く。


「(…やっちゃいましたねご主人。…流石にやりすぎです)」


『転移』で移動したことで、肩から落とされるようなことになってしまった2匹だが、状況が落ち着いたのを見計らっていたようで、俺の肩へと再度とまってくる。


 ポポが今のことで、小声で俺に対して辛口の評価をしてくるが…それは俺も分かってはいる。

 だが…


「(我慢できなかったんだよ…! こんな小さな子ですら簡単に殺そうとするアイツらが…。そしてそんな奴が人の上に立って、楽して生きてるのが許せねーんだよ)」

「(まぁ…この子助けるのはいいんだけど、その後がね~。どうすんのこれ? ちょっとマズくない?)」

「(…やっちまったからもう取り返しつかないけどな…。あ~…どうしよっか?)」

「(ちょっとは考えて下さいよ。もう少し後先考えてくださいね)」


 俺のことをジト目で見て、溜息を吐くポポ。


 でも、ならどうすれば良かったって言うんだ? 


「(じゃあお前ならどうしたって言うんだよ?)」

「(そりゃ…ぶちのめしますね)」

「(変わんねーじゃねーか!)」

「(そらそうでしょうよ、あんな腐った連中…本能のままに殺してやろうかとさえ思いましたもん。まぁご主人の迷惑を考えたらそんな行動には出ないですけど…」

「……?」


 …物騒だなオイ。

 まぁポポとナナはあくまで鳥だし、本能とか残ってるからなぁ…。

 例え人の知能があろうと、やろうと思えば人は殺せるとか言ってたからそりゃそうか。


 俺とは違うものを持つ2匹を再分析し、俺も溜息をついた。

 非常に小さな会話だからいいが、この子には絶対に聞かせらんないような内容を話しているなぁと思った。




 そんな状態ではあったが、まだ少し気がかりがあったので…


「ポポ…アイツらが本当に何事も無く帰ったかどうか確認したい。少し後をつけて、問題ないと思ったら戻ってきてくれるか? …やっぱり少し不安があるからさ…」


 これだ。

 連中の姿が見えなくなったから安心したが、帰る道中で何もしないという保証はない。

 あんだけ脅しを効かせたからしないとは思うが、それでもあのような思考を持っている連中だ。根本的なところから一般の人のそれと違うし、最早同じ人間とは思えない。


 八つ当たりで誰かに迷惑を掛けたりしたらたまったもんじゃねーぞ。


「…分かりました。問題ないというのは…私の裁量で決めてもいいんですよね?」

「あぁ。頼んだ…。可能性は低いと思うけど、もし何かやらかしやがったら……遠慮なくやれ」

「…了解です」


 俺の頼みを快く引き受けてくれたポポ。


 後は…ポポに任せよう。

 状況判断は適格な奴だから、俺が細かく言うよりも自分の判断をして貰った方がずっといいはずだ。


 肩から勢いよく飛び立っていくポポを見た俺は、今度はナナへと話しかける。


「…で、ナナ」

「んー?」

「アイツらの波長は記録したな?」

「とーぜん」


 …流石だ。やはり抜かりないな。


「…ならいい。今後アイツらが近くにいると分かったら知らせてくれ。多分王都に行けば感知に引っかかるだろうけど」

「…まぁ大体想像つくけどー…その時は近づく前に遠距離で仕留めようか? 最近地形把握もできるようになったから、被害も証拠も出さずに実行できるけど?」

「…その前に俺に知らせてくれればひとまずいいよ」


 ナナが知らない間にまた成長していることに若干驚いたもんだが、それはそれで好都合である。

 相手を手玉にとれる方法が確立されていることが分かれば今はいい。


 …にしても、遣いってことをちゃんと理解してたのかねぇアイツらは。遣いが個人の裁量で問題を起こしてちゃ駄目だろうに…。

 遣いは王の代わりに行くのであって、遣いの対応は王の意思とさえ取れる行為に等しいんだぞ。

 それも分からないくらいに…この世界は教養が行き届いてないのか? それが王族や貴族であっても…。

 わっかんねーなぁ。




「………はぁ…」

「………」


 大勢の人の視線が痛い。

 体の中をグサグサと突き刺されるような感覚を、俺は感じていた。




 もう…この町にはいられないのかもな…。




「あぁ…本当にこの世界は、俺には合わない…」

次回更新は火曜です。

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