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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
序章 旅立ち
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14話 職員の困惑

 それからギルドのテーブルに座り、俺たちはしばらく4人で話をしていた。


 どうやらセシルさんはDランクの冒険者で魔法がメインの戦闘スタイルをしているらしい。

 半年ほど前に冒険者ギルドに登録をし、現在は色々なパーティーに潜り込んで依頼をこなしているそうだ。簡単な依頼は一人でやると言っていたが。

 まぁ半年でDランクということは腕は確かなのだろう。


 セシルさんはというと、現在ポポとナナをやさしく指で撫でている。

 ポポとナナは気持ちよさそうだ。


 撫でたくなる気持ちはわかる。あれ…意外と楽しいんだよな。

 地球にいた時は毎日のように俺も撫でてた。


 俺がそんな光景を見て和んでいると一人の職員がパタパタと走ってきた。


「ツカサさん。換金の準備が整いましたので受付までお願いします」

「あ、分かりました。ポポ、ナナ、行こう」


 返事を返しテーブルから立ち上がる。

 すると


「…私もついて行っていい?」


 セシルさんが聞いてきた。


 まぁ別にいいが…


「別にいいけど、お金貰うだけだよ?」

「ん。なんとなく」

「ふーん、じゃあ行こっか」


 なんか不思議な娘だなぁ。


 そんなことを思いつつ、俺たちは受付に向かう。

 するとそれに気づいた他の冒険者たちは道をザザッと空ける。


 HAHAHAキミ達、楽にしたまえ。

 ドラマで見たヤクザやマフィアの重鎮ってこんな感じなのだろうか? 俺はあんまり好きじゃないなぁ。


 空いた道を歩き、受付まで行く。


「ツカサさん、換金が終了しました。まず薬草分の換金額ですが、合計921本でしたのでコチラ、銀貨8枚と大銅貨8枚、それと銅貨が3枚になります、お確かめください。それと38本が少し痛んだ状態でしたのでコチラは少し割引いた買取り価格となっています。ご了承ください。次にスライムの魔核ですが…」


 筋肉さんがペラペラと喋り続ける。

 長いので割愛するが結果だけ言うと…



 大銀貨2枚

 銀貨9枚

 大銅貨7枚

 銅貨4枚



 となった。

 かさばるのもあれなので両替をしてもらった。

 筋肉さんからお金の入った袋を受け取ると、チャラチャラと少し音が鳴る。


 うん、ちょうどいいな。


『アイテムボックス』にお金をしまう。


「近くでみるとそんな感じなんだ…」


 セシルさんは『アイテムボックス』の収納を間近で見るのが初めてだったらしく驚いていた。


 俺も最初は驚いた。だって空間? に亀裂が入るんだもん、そりゃ驚く。


 ギャラリーは今回の俺たちの換金の結果に騒いでおり、後ろで「マジかよ」、「俺これから薬草の採取で稼ぐぜ!!」などと聞こえる。


 ごめんなさい。俺たちの場合は【神の加護】があったからです。

 それと薬草とスライムはもう数が少ないかもしれないです。

 だからあなた達は無理だと思います…。


 頭の中でそう謝っておいた。


 ゲームみたいにリポップとかするんだろうか…? しないだろうなぁ、現実だし。いや、でもファンタジー設定とかであったりして…。

 今度調べてみようかな。


「金も十分稼いで腹も減ったし、そろそろ帰るか」

「賛成です」

「私も~」


 そろそろ帰りたい。

 昼に目が覚めたから疲れてはいないが、他にやることもないので今日はそうしておく。

 まだ魔法の本も全部は読みきれてないしな。


「どこに宿泊してるの?」


 セシルさんが聞いてきた。


「ん? この建物の裏の『安心の園』ってところだけど」

「なら一緒に帰る。私もそこに泊ってるから…」

「あ、そうなのか。じゃあ一緒にいこうか」


 奇遇なことにセシルさんも『安心の園』に宿泊しているみたいだ。


 そういえば全身ローブの人がいたかもしれない…。

 もしかしたらあれはセシルさんだったのかも、いや、分かんないけどさ。


 あ、そうだ。帰る前に筋肉さんの名前聞いとこう。また忘れるとこだった。


「あの、まだ名前を伺っていなかったんですけど、できれば教えてもらえます?」

「そういえばまだ名乗ってはいませんでしたね…。私はマッチと言います。改めてよろしくお願いしますね」


 マッチさんか…。惜しいな、あと少しでマッチョさんじゃん。

 さすがにそれはなかったみたいだが。


「よろしくお願いします、マッチさん。ではまた明日…。セシルさん行こうか」


 そう言って俺たちはギルドから出て『安心の園』へと向かった。




 ◆◆◆




『安心の園』へと着いた俺たちはミーシャさんに出迎えられた。


「あっツカサさん、それとセシルさんも? お帰りなさいです」

「ただいまミーシャさん」

「ただいま」

「もうすぐ夕食ができますからちょっと待っててくださいねー」

「そっか。じゃあそれまで部屋で休んでようかな? セシルさんはどうする?」

「私も部屋で休もうかな、身体拭きたいし」

「ならお湯とタオル持っていきますね。ツカサさんはどうします?」

「あー、お願いできる?」

「分かりました。すぐに持っていきますね~」


 セシルさんが言ってくれたおかげで、俺も自分の状態を確認することができた。


 ちょっと汚れている。まぁあれだけ走り回ればなぁ…。むしろこれだけですんでいるからまだいい方か。だがさすがにこの状態で夕飯は食べたくない。

 ポポとナナの方も汚れている。毛繕いで幾分かマシになったとはいえ、コイツらも水浴びが必要だろう。コイツらはあんまり気にしていないみたいだけど。


「じゃあ部屋に行くか。セシルさんはどこの部屋?」

「ん、こっち」


 セシルさんが指を指す。

 どうやら俺と同じ方向の部屋みたいだ。


「俺と一緒の方向か…、近いのかもね」

「かも」


 とりあえず部屋へと移動する。

 …なんとな~く予感はしてたが、セシルさんはどうやら隣の部屋だったようだ。


「隣だったのか、セシルさん」

「みたいだね」


 まさかお隣さんだったとは…。

 なんか運命感じちゃうよ? 


 …冗談です。


「それじゃ、また後で」


 と言ってセシルさんは部屋の中へと入っていった。


 後で? 夕飯一緒に食べようって意味か? …多分そうか。


 セシルさんの発言に自問自答しながら、俺たちも部屋に戻った。


 ただ、女の子とご飯とかあんまりしたことないからちょっと緊張するな…。




 ◇◇◇




 一方そのころ…。


 ギルドでは職員の人が集まり、何やら話をしている。

 表情は少々真剣で、真面目な話をしていることがわかる。


「彼、昨日冒険者になったのが信じられないわね。まさかドミニクさん相手に一歩も引かないどころか、倒してしまうなんて…」

「確かに問題を起こしてばかりの奴だったが、Cランクで実力は確かだったしな。マッチさん、あの人を担当したのはアンタだよな? その時気づかなかったのか? アイツの強さによ」

「ええ、まったく気づけませんでした。武器も持っていませんでしたし…。それに田舎から出てきたばかりでギルドのことも何も知らなかったみたいです。ですので冒険者に憧れる若者という印象しかありませんでしたね」


 マッチと他の数人のギルド職員が、どうやら司のことを話しているようだ。

 ドミニクとは司が撃退したオッサンのことである。やはり今日のことは見過ごしていいようなことではなかったらしい。


「魔法の適正も昨日調べて初めて分かったみたいですし、今日ツカサさんが『アイテムボックス』を使っているのを見て驚きましたよ。…薬草と魔核の量にも驚きましたが」

「確かにな。ぶっちぎりで最高記録だありゃ。でもじゃあ『アイテムボックス』なんて中級魔法を1日で使えるようにしたってことか? だとしたらカイルさん並だぞ。あの人も中級魔法を数日で使えるようにしてたからな」

「もしかしたらカイルさん以上かもしれないわね。カイルさんは魔法学院の先生に師事をしてもらっていたみたいだし…。でも彼は違うのでしょう?」

「恐らくは…。昨日ギルドの魔法の本を借りていきましたから、独学かと思います」

「それが本当なら末恐ろしいな、底が見えねぇよ。それより魔法もそうだが一番ヤバいのはあの防御力だろ? 武器であの大剣を受けるならまだしも素手でだぞ? そんなことができるやつが他にいるか?」


 異世界のジャンパーがあってこそ成し得たことだが、それを知る者はこの場にはいない。

『アイテムボックス』については【成長速度 20倍】のおかげである。もし常人が現在の司の魔法のスキルレベルまであげる場合、魔力量が多い人でも数ヶ月は掛かる。それも死に物狂いで取り組んでだ。

 司は魔力が元々多かったこともあり魔力切れを特に起こしてはいなかったが、常人ならば何度も魔力切れを起こして倒れてしまうくらいなのだ。

 その事実に当の本人は気づいていない…。



「分かりません。ただ、身体強化を使っていたのでは? それなら少しは説明がつきますが…」

「確かにね、それならなんとか説明がつくけど、魔法も知らない人が身体強化を使えるのかしら…?」

「魔法も使えて身体能力も半端ない…羨ましいねぇホントによぉ」

「考えても疑問しか浮かんできませんね。これは…ギルドマスターに報告をしておくべきでしょう」

「ああ」

「そうね」


 マッチの言葉に他の職員も頷く。


 ギルドマスターはというと、今日は非番である。

 冒険者ギルドの職員は忙しい印象があるが、10日に一度は休みがもらえる。それはギルドマスターも例外ではなく、今日は休みであったため休息をとっていた。

 忙しさゆえに体調を崩されても困るというのが理由で、冒険者ギルドは意外にもブラック企業ではない。


「本当に冒険者ギルドにいると何かしらありますね」

「だなー」

「仕事が増えなければいいけど…」




 ギルド職員内に何やら疲れ切ったようなドンヨリとした雰囲気が出ていた。

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