表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第四章 セルベルティア再び
147/531

145話 ジーク協定三箇条

今回からしばらく日常回? が続きます。

 翌日…




 グランドル郊外、西の草原例の跡地…。


「ぐぬっ!? んなやらしー攻撃してくんな! 死ぬわっ!」

「ちっ! 仕留め損ねたか!」

「仕留める気で掛かって来るんじゃねー!」

「じゃないとお前本気出さねーだろーが!」

「クソッ…なんでこうなるんだよーーーっ!!!」





 なぜだろう。

 一昨日俺は…ジークとガチの戦いを繰り広げた。


 あれは…そらもう大変でしたね。かつてない強敵…それを前に恐れずに立ち向かうカミシロさん。彼は守るべきものの為、そして自分のために戦い…死闘の末に勝利を収めた。

 その彼が得たものは…希望、友情、そして…恐怖に立ち向かう勇気だろう。彼はそれを胸に、新たな道と目標を切り開くことができたと思われる。

 これはきっと…歴史に残るものとなるだろう。彼が勇敢に彼奴に立ち向かったこと…それは誰しもができることではなかったのだから…。

 彼こそが人類の希望、そして最終兵器。世界は…救われたのだ(自己満足)。


 そして、ここで確かに伝えておきたいことがある。


 戦いは…終わったということを…。




 そう、終わったはずなのだが…




 俺…またジークとガチで戦ってんだけど…なんで? 誰か教えてチョリソー。ついでにお酒もプリーズギブミー。




 いやまぁ…ジークとは定期的に相手をしてやるとは言ったけど…まだ約束してから1日なのよ? 何コイツ…アホなの? 脳みそムキムキすぎるだろ…。

 私の時間を気にしてくれないとか酷すぎる。


 ジーク許すまじ!!


 …あ、許す、マジって意味じゃないからね?




 なぜこうなってしまったのか…今日の朝から今に掛けて遡ってみよう…。




 ◆◆◆




 まずは早朝。『安心の園』の時は…。




『起きろゴラァッ! 昨日の今日だが早速一戦相手しろやあっ!』

『んぁ…?』

『『っ!?』』


 俺がスヤスヤと眠ってたら…ジークの大声で目が覚めてー。


『朝っぱらからなんだよ…ったくさぁ…』

『おめぇと戦いたくて昨日あんまり眠れなかったんだよ!』


 っていう子供みたいな理由が判明してー。


『え~…我慢しろよ。こっちはまだ眠い…』

『うるせぇっ! さっさと行くぞ!』

『あ!? ちょっ…離せっ!!』


 …そんで無理矢理担がれて、窓からお外にダイビング。そのまま拉致されてー。




 ◆◆◆




 …今現在に至る。


 ハイ、遡る必要がないくらいついさっきの出来事でした。まだ目覚めてから10分も経ってないよ俺…。

 当然…俺の今の恰好、寝間着ですよ? 靴も履いてない…。そんな姿で剣を持って戦うとか…どんなシチュエーションだよって話だ。




 分かる? この気持ち…。まだ早朝だよ? 朝っぱらなのよ? 早起きの爺さんが散歩してる時間帯だよ? 起きて1分もしないうちに拉致されて草原に連れてかれる気持ち…分かる?

 眠気とか吹っ飛ぶどころじゃないよ…意識吹っ飛びそうだよ俺は…。

 頭が真っ白になりそうなのに、視界は緑が青々としてるしさぁ…。


「うらぁっ!」

「うおぁっ!?」


 でも油断すると…景色は血しぶきで真っ赤、俺の命が吹っ飛びそうなんですよねー。


 今は草原で戦ってるからいいけど、これが町中だったら散歩してる爺さんの口から入れ歯が飛び出すんじゃないかって思う。




 はぁ…どうすりゃええねん。




 ◆◆◆




「さてさてジークさんや、今後君の相手をするにあたってちょいとルールを決めようと思うんですがよろしいですね?」


 なんやかんや、適当な所で逃げることで事なきを得たわけだが、『安心の園』での食卓の場で俺はそう告げた。

 既に全員が起きてこの場に着席しており、各々で朝食を食べている。


「はぁ? んなもんいらねーだろ?」


 と、俺の要求に対し否定的なジークさん。どうやらお気に召さないご様子。


「アハハ…ご冗談を。君が力をセーブしてくんないと地形が変わっちゃうんですよ…ホントに」

「知らねーよそんなの。地形が変わっちまうくらい自然が弱いのがいけねーんだ」


 ブチッ…


「だぁ~かぁ~らぁ~必要だって言ってんの! お前の都合なんぞ知ったことか! 第一この前お前と戦ったあの場所、直すの超大変だったんだぞ!? 瓦礫みたいになった地面を平坦に戻して、草木をナナの魔法で生やして元の景観に戻して、生態系が狂ってないか夜分遅くにダグさんに頼んで確認してもらって…! そのせいで昨日俺達あんまり寝れなかったってのにお前は朝っぱらから勝負仕掛けてくるし!!」

「…それこそ知ったことかよ」

「知れよ!? お前が原因だろーがっ!」


 ジークの態度が気に入らなくて、俺は怒鳴り散らした。

 テーブルに手をついて、対面に座っているジークへとメンチ切りをするが…特に効果はない様子。


 昨日は舞い上がってた部分もあるけど、やっぱりコイツには誓約以外にも何か枷をつけないと駄目だ。下手すりゃ死人が余裕で出る。…勿論俺だ。

 世界一有名な配管工みたいに残機増やせるんだったら全然構わないけど…これはリアルだ。命は1つ、命大事にの作戦は常時行使に限る。


「あらまぁ、朝から2人共元気なのね」

「はわわ…!」


 俺とジークのやり取りを眺めていたミーシャさんとフィーナさんが、それぞれの反応をする。

 ミーシャさんは慌てて、フィーナさんは楽しそうに笑っている。


 すんませんねぇ朝から怒鳴っちゃって…。でも怒鳴らずにはいられないんスよ。


「あー…ミーシャ嬢ちゃん、そんな慌てなくても多分平気だから落ち着けって、フィーナさんみたいにどっしり構えてな」

「そんなこと言われても~…」


 と、昨日のことが嘘のように、ジークに慣れたシュトルムがミーシャさんに言う。


 …つーか、ナナ以外の皆の適応の早さに俺は驚いていたりする。


「…にしても、なんかスゲーことサラッと言ってんなぁ」

「うん。普通…壊した自然って元に戻せないと思うけど…」

「ナナ様の魔法は…想像を越えてますね」

「まぁ色々と自分で作れるからね~」

「私もナナみたいに便利だといいんですが…汎用性がないんですよね…」


 と、ポポがため息を吐いて自分を嘆くが…


「んー、そう? 私は…自分にできることがそれだけだからやってるだけだし~、ポポもそれは当てはまるでしょ? 私は魔法は得意だけど近接戦闘苦手だしね。…ポポは近接戦闘なら無類の強さじゃん」

「でもご主人がいるとあんまり役に立てる機会が少ないんですよね…」

「大変だね…ポポ達も。でもその先生と本気で張り合えるジークさんって相当だよね…」


 などと会話をしているのが聞こえた。


 だが、今の俺はそっちの会話に混ざれる余裕はない。




 とにかく、世の為人の為俺の為…ルールを決めようじゃないか。


「じゃあこれは守れ! 相手をする時はスキルの使用禁止。もちろん魔法もだ! んで、余計な怪我を防ぐために1回でも有効打を与えたら即対戦は終了! 分かったか!」


 俺はルールを提案…というよりかは命令だが、ジークに対してそう伝える。

 しかし…


「馬鹿かお前は! んなもん全然滾んねーじゃねーか! 満身創痍の方が楽しいに決まってるだろ!」

「なんで死にかけて楽しみを感じるドM発言してくれちゃってんだお前は!? 滾りたいのはお前だけだ! 俺はんなもん望んじゃいない! つーか俺はできれば戦いたくねーんだよ! 今日だって!」

「うるせー! お前昨日定期的に相手してやるって言ったじゃねーか! 毎日1回・朝早く! これのどこが問題だゴラァ!」

「問題ありありだ馬鹿! それは定期的とは言わねーよ! もはや習慣だよ! 朝の体操みたいになってんじゃねーか!」


 ラジオ体操じゃねーんだぞまったく…! あんな命がけのラジオ体操なんて付き合ってられっか! 小さい頃はサボってよく怒られたもんだけど…これはむしろサボって褒められるレベルだわっ!


「ふざけんなっ! んなもん納得できるか! 常識なさすぎだろてめぇっ!」

「俺が言ってんのは常識の範疇だろうが! むしろこの程度で譲歩してやってる俺の気兼ねに感謝しろやぁっ!」


 ぐぬぬっ…! と、お互いの額をぶつけ合う俺達。

 互いに譲らない姿勢をずっと取っていると…


「はいはい…その辺にしなさい2人共」

「あたっ!?」

「いてっ!?」


 突如、俺とジークの脳天に鈍痛が走り、そちらに意識を取られる。

 何事かと思ってその鈍痛の原因を確認すると…


「仲良いのは分かったから…も少し静かにして。うるさい」


 どうやらセシルさんが俺達に対して手刀を振りかざしたようである。うるさすぎたらしい…。


「ふふふ…朝から賑やかで楽しいわ~。私こういうのが冒険者だと思うのよね~」


 その光景を見ていたであろう、フィーナさん。本来であれば迷惑行為で注意は当然の所を、この人は頬に手を当てては天然染みた発言をして軽く流す。

 フィーナさんは意外にも、騒がしくしてもらった方がいいと思っているらしい。ミーシャさんの方はそうじゃないみたいだが。


「ジーク。ジークに悪気が無いのは分かってる。でも少しは妥協してあげなさい」


 ここで、セシルさんからのご助力を得られた。

 セシルさんもジークに対し、俺の言ったルールを守る様に言ってくれたが…


「え~、だがよぉ…」

「しなさい」

「……ちっ、わぁったよ。すりゃいいんだろ」


 意外にも、ジークが折れた。


 …あれ? もっと頑固かと思ったんだけどな…。

 セシルさんに弱い…のか? なんで…。


「ツカサもだよ? ちゃんと自分の言ったことは守ってあげてね」

「あ、うん。それは…多分平気」

「絶対ね」

「……あい」


 疑問を感じて思案しているところで、今度は俺に向かって話し始めるセシルさん。

 俺に対して絶対の約束をさせてくるが、その言葉に掛けられた重みに返事をするしかなかった。




 取りあえず…



 ・ジークの相手は3日に一度。……早朝に。

 ・有効打を当てたら戦いは即終了。……当たらない場合は永遠に継続。

 ・戦いから逃げてはならない。……もし逃げたらペナルティ。次の日も戦いの場を設ける。


 ……となった。




 3日に一度は死ぬかもしれないという状況…なんだそれは。3日坊主の人なら丁度良いんじゃないですか?(死ねるという意味で…)


 死ぬときはお天道様が看取ってくれるってさ。……ハハッ! その暖かい日差しで綺麗に俺を彩ってくれよな。



 ………。



 命がいくつあっても足りねぇ!

次回更新は火曜です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ