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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第三章 狂いし戦の虜、闘神の流儀
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140話 『闘神』との対談①

今回から3話ほど、『闘神』との会話が続きます。

少々長くなりますがお付き合いください。

 奴…『闘神』の言うことに俺は一瞬狼狽えた。

 自分が神様から聞いていたものとは違う内容に、どうすれば良いか分からなかったからだ。


「いや、でも神様が帰れるって…」

「…へ~、神って本当にいるのか。てか、本当にお前何も知らねーんだな。…じゃあ教えといてやる。いいか? 魂ってのは世界ごとに現存する量ってのが決まってる。そしてこれらの魂は循環して減ることもないし増えることもない。これは知ってるか?」

「ああ、知ってる」

「そうか…。で、今言ったように、世界中にある魂ってのは増えることはあり得ないんだよ。循環してるから…。でも増えた時ってのが、過去に何度かあった。それは何だと思う?」


 ここまでは神様が言っていることと同じだ。


「異世界人…か?」

「そうだ」


 だが、次は予想していなかった。


「世界の魔力ってのは有限だからな、使えばそのうちなくなる。それを回避するために贄として捧げられるのが異世界人だ。…まぁお前のことだな」

「…え?」

「ご主人! 惑わされないで! コイツ嘘言ってるだけだよ!」

「嘘じゃねーよ。……多分」


 多分かよっ!? 紛らわしいわっ!

 でも…ちょっと安心した。それならまだ希望はある。


「っ…コイツ、一発ぶちかましていい?」

「待て待て、頑張って落ち着け…。俺も、頑張るからさ」


 ナナがまたも手を上げそうになるのを、なんとか抑える。


 正直俺もカチンと来る言い方だったが、刑事ドラマみたいにすぐに手を上げるのはナッシング。

 相手のペースに飲まれるな。冷静に落ち着いて、相手の心をほぐして開いていくのが理想である。


 …まぁ、理想はあくまで理想。私が奴に対して何をするか分かりませんけどねー。フフフ…。

 コイツだし、どんな尋問しようが私にお咎めなんてないでしょうしー、どれだけ人的非道に扱っても、尋問のためとか理由を並べればいくらでも勝ち確ですしねー。


 正義は我にありですたい。


 …ま、んなことする気ないけど。

 真面目に話聞きましょうかね。


「だってさー、俺もアイツらの話を聞いてたのを繋ぎ合わせてその結論に至ったからよ、確証はねぇんだもん。でも、お前さっき俺が言ったことを元々知ってたよな? あれ…俺がアイツらから聞いた話だったんだが…一緒だったんだろ?」

「そうだな。なら、間違ってはない…か。いや…でも…」

「別にまぁ信じるか信じないかはお前次第だ。第一俺もそれが真実かどうか知ってるわけでもないから聞き流しゃいいさ」


 言いたいことを言いきった奴は、最後にそう軽く言った。


 …なら惑わすような言い方すんなって話じゃん。この馬鹿。

 でもまぁ自分でこう言ってるくらいだから、信じる必要は確かにない。…ないけど、…でも、頭から離れない。


「…と、取りあえず、お前らの組織について教えて貰おうか。一体…何を企んでやがる?」

「…さぁな。知らね」

「…オイ」


 OKナナ、一発かましてやれ。まぁ何発でも構わんが。

 大丈夫、後のことは気にするな。いくらでも隠蔽は効くから遠慮何てものはいらん。この建物を崩壊させない程度ではっちゃけていいぞ。


「怒んなって。だって俺会議出ても寝てばっかだったからよぉ、聞いてないことの方が多いんだよな」


 そんな俺らの気迫が伝わったのか、奴が制止してくる。


 というか…会議って何だ? 知らんことが多すぎる…。


「それにしても…随分とペラペラ喋りますね?」

「だって隠す必要ねーし。もうアイツらとつるむこともないだろうからな…」


 確かにポポの言う通り、コイツ結構すんなり喋るな…。真実かは別にしてだが。

 まぁ俺と話がしたいとか言ってんだからそれは当然か…?


 う~む、どうしたもんか。


「信用しても…いいのか?」


 正直意味があるのかは分からないが、一応直接聞いてみた。


「…信用してくれていいと俺は言えるが…それはお前が決めるもんだろ。自分の目で、体で、心で、お前が信用できるかどうかは判断しろよ」

「…お、おう。分かったよ…」


 奴は、特に考えるようなそぶりもなく、さらりと自然に言い切った。


 ちなみに、今の奴の判断基準を聞いて、若干カッコイイ言い方だなと思いました。…ポッ。




 …まぁ冗談はほどほどに。

 でもこういうときだからこそ冗談が言えるほどの余裕があるというのも、かっこよくないですか?

 私は結構良いと思います。


「…じゃあ質問してくからそれに答えろ」

「おう何でも聞いてくれや。それでお前が得るモンがあるかは分からねぇが、嘘は言わねぇぜ?」


 にしても…


 嘘…ついてるようには見えないんだよなぁ。

 思えばコイツってギルドで会った時から嘘は結果的につかなかった訳だし…。戦いたいだけだったのは昨日で分かってるし。

 多分…平気だろうな。

 それになんだか、さっきよりも懐かしい気持ちが強まってる。…もう、これは間違いじゃないな…ホントなんだコレ?


 自分の中に芽生えていた懐かしい感覚。それは…間違えようもないほどにまで大きくなりつつあった。


「…お前の言ってた『虚』って奴と『白面』ってのは、何なんだ?」


 だからか、体はもう警戒なんてものは特にしていなかった。至って自然に、それこそシュトルム達と会話をするような感覚で、俺は喋れていた。

 そんな状態を頭で分かっていながら、特に何かしようとも思わなかった。


 そして、昨日奴がギルドで言っていた人物名っぽい名称を…俺は聞いてみた。


「『虚』と『白面』は『原点回帰(ノヴァ)』の幹部で、『執行者(リンカ―)』って呼ばれてる奴のことだ」

「…ノヴァ?」


 何だ? あのピンクのウサギがCMに出てる会社のことか? その幹部がそいつらってこと? 

 それは是非ともお近づきになりたいもんだ。就職先には困らんし。


「それは連中の総称。『執行者(リンカ―)』ってのは、その『原点回帰(ノヴァ)』の中でも最高の地位と戦力を持った7人のことだ。『絶』、『クロス』、『夜叉』、『影』、『虚』、『白面』、…えっと…あと『銀』…だな。俺はその中の8人目…『闘神』として特別扱いで入ってたんだが…もう関係ねぇな」


 さらに知らん人物名が増えたな…。まぁいいけど。

 だが…これだけは分かったぞ。…お前コネ入社してたのか。

 やーいやーい。リストラ残念でちゅね~。ハロワに行きまちょーね。


「…それで?」

「…『虚』はこの前東でお前にちょっかい出した張本人だ。推定Sランク以上のモンスターから魔物まで、色々と使役してる奴だな。白髪で小柄の…正直頭がイッてるキチガイ」


 お前が言うな。お前も十分キチガイだわ。


「んで、お前と同じ…【従魔師】だ」

「…へぇ」


 俺の場合は【従魔師】って言えるかどうかもはや分からんけどな。スキルがあるだけみたいなもんだし。まぁスキル技はちゃんと使ってはいるけど…。

 取りあえず、この前のあのデカブツはそいつが使役していた従魔だったわけか。相当な手練れだなぁオイ。


「お前の従魔にすげぇ興味を示しててさぁ、自分のものにしたいとか言っててこの前お前にちょっかい出したみたいだぜ?」


 それであんなことしたってか? ふざけんなクソ野郎…!


 東のアネモネの被害、そして…俺達が疎まれるきっかけを作った奴が『虚』と呼ばれる奴だと知り、怒りが込み上げてきた。


「…私たちはご主人以外に仕えるつもりはないです」

「当然」


 が、奴の言葉を聞いていたポポとナナが心底嫌そうな顔で、俺にとって嬉しいことを言ってくれたことで、俺の怒りは一旦収まった。


 お前たちがそう思ってくれてて、ホント飼い主冥利に尽きるよ。


「だろうな…。良い従魔共だな?」

「まぁな。…コイツらを他の奴にくれてやる気なんて全くない」


 これは、曲がることのない俺の切実な気持ちだ。


 誰かに預ける? 奪われる? もしくはコイツらが自発的に離れる?

 HAHAHA………死んでもイヤ。

 コイツらは俺のもの。そして俺は、コイツらのものな関係なのさ。

 主従を越えた関係……それすなわち、愛あるがゆえの恩恵なり! ビバナウ!


「…で、『白面』って奴は……ラグナの災厄だっけ? それを起こした奴のことだ」

「『白面』…ね」

「あの人ですか…」


 アイツか…。学院でも色々してくれちゃった仮面野郎。


 ポポも思い出してか、俺と同じように呟く。

 俺と同じ考えを持っているのは簡単に想像できた。


「そういや一度会ってるんだっけな? 白いのに見つかったとか言ってた気がする」

「そうだな。ナナが隠れてる奴を見つけだしたんだ」

「ほぅ…やるじゃん」


 奴が感心したようにナナを見る。


 もっと褒めてもいいのよ? てか褒めろ。

 うちの子凄いって…うちの子超ぷりちーって言え。


「………」


 一方ナナはというと、しかめっ面で反応を返すそぶりもない。目は…鋭く奴へと向けたままだ。


「ありゃま、随分と嫌われてんなぁ。仕方ねぇけど…」


 それを見た奴も、ナナの態度に思い当たることがあったのか…というよりなくては困るが、困ったような反応をした。

 一応反省の意思? はあるようだ。


「それで…『白面』って奴の特徴はあるのか? 姿は見たことあるからいいんだが…」

「『白面』は俺も詳しく知らねぇんだよな。陰湿、企画役って感じはするが…。まぁ掴みどころのねぇ奴って言った方がいいか…」


 …つまり大して何も知らねぇということだな。


「…ちっ、使えねぇな」

「うっせ。…ただ、操眼の魔眼持ってるのは確かだ。なんだっけ…貴族のガキを良いように使ったとかなんとか…」

「ヴィンセントか…」


 そいつが魔眼使えるのはもう知ってる。

 収穫なし、やっぱり使えねぇな。


 まぁ使えねぇのは置いておいて、ヴィンセント…どうなったんだろ? 回復してればいいんだが…情報相変わらず来ないしなぁ。

 分からん。


 ヴィンセントのことを考えながら、情報が未だに来ないことを内心で愚痴る。




 奴との話は…まだ続きそうだ。

次回更新は木曜です。

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