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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第三章 狂いし戦の虜、闘神の流儀
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129話 招かれざる客人

 ◆◆◆




「あ、ご主人。何やってるんですか?」

「何って…冒険者なんだからギルドに来てもおかしくなんてないだろ」


 武器屋からすぐ向かいのギルドへと入ると、さっき分かれたポポとナナがマッチさんと一緒にいた。

 感覚で近くにいるのは分かってはいたが、何故ここにいるのかは分からない。


「こんにちは。ツカサさん、アンリさん」

「「こんにちは」」


 マッチさんに2人で挨拶を交わす。


「お二人の組み合わせは珍しいですね」

「…そういえば、2人でいるのは初めてかもしれないですね」

「そうですね」


 アンリさんは周りの目を引くような容姿をしているから…やはり目立つ。

 向こうで何やら負のオーラがこっちに向かって飛んできてる気がするが…気のせいじゃないなこりゃ。


 他の冒険者の人達(男)が、ギルドに入って来た俺達を見ては恨みがましい目で見ているのが確認できた。


「それで今日はどうされたんですか? ツカサさん休むって言ってませんでしたっけ?」


 チクチクと何か刺さるような視線を感じつつ、マッチさんとの会話に俺は意識を向ける。


「はい。昨日まで皆で長期の依頼やってましたからね…。だから今日は休みだったんですけど…」

「ごめんなさい…」


 言い方がまずかったようで、アンリさんが落ち込んだ顔をしてしまった。

 なのですぐに弁明する。


「別に責めてるとかじゃないよ!? 暇だったのはホントだし……な!」

「え? まぁそうですね」

「…暇すぎて可哀想なくらいにはねー」


 2匹にも助力を求めるが、ポポは良いとしてナナは中々刺のあるような助力だった。


 まだ機嫌直ってないのか…。いつもだったらすぐに忘れてるのに。


「ま、まぁそういうわけで、簡単な討伐系の依頼って出てたりします?」

「簡単なものですか? 少々お待ちを…」


 この場の流れを変えるべく、話を進める。

 マッチさんが俺の言ったことを確認するために、書類を確認しては該当する内容の依頼を探してくれる。


 そして…


「…数体のコボルトの討伐依頼か、ラグナ付近でのゴブリン退治くらいですかね」


 見つけたらしく、そう告げられる。


 まぁ…妥当な難易度の依頼かな。悪くないと思う。


「どうする? やる?」

「はい。それでお願いします」


 どうやら問題ないようで、快く返事を返してくれた。


「ツカサさんも一緒に行くんですか?」

「はい」

「なら万が一にも心配は要らないですね」

「ハハハ…」


 まぁ確かに、俺がいるから危険なんてものはないだろう。


 怪我をさせるとかご法度だし、てかさせるつもりなんてない。

 心配ご無用だ。俺は神であるアンリさんを絶対守る。神の神兵…騎士(ヴァーチェ)としての責務を全うしようじゃないか。


「じゃあ装備の確認してから行こうか。基本だし…」

「はい!」

「「………」」


 依頼に出る前に装備の確認をしようと切り出すが…アンリさんとは対照的に、2匹はジト目でこちらを見てくる。


「ご主人が確認してるところ…ほとんど見たことない」

「同じく」


 2匹から…痛い所を突かれた。

 俺は始めの頃は装備の確認は怠ったりしていなかったが、『アイテムボックス』の容量が非常に大きくなった頃から、取りあえず適当に色んなものを入れておけばよくね? の精神に変わってしまっていたので、2匹の疑問はごもっともだった。


 だが、ここは空気読んで恰好つけさせてくれや君たち…。


「い、いや…俺は『アイテムボックス』あるじゃん? しこたまぶっ込んであるから特に気にしなくて平気だから…」

「それで教えが務まるとでも?」


 俺の言い訳に即座に反論してくるポポ。


 せ、正論すぎる…。なんも言えねぇ…。


「…あい。気をつけます」

「よろしい」

「あの…」

「…あぁ何でもないから、向こうのテーブルで確認しよう」


 自分の日頃の行いを反省しつつ、奥のテーブルへと移動した。




 ◆◆◆




「こんな感じでいいでしょうか?」

「うん。いいんじゃないかな」


 一通り装備と持ち物を確認し、椅子から立ち上がって、じゃあ行こうというところで…


「なぁ、『神鳥使い』ってここにいるか?」

「はい? …あちらにいらっしゃいますよ。何か御用なんですか?」

「そうか…あいよ」


 何やら受付でマッチさんが若者と話をしているのが聞こえてきた。


 その若者の肌はやや浅黒く、紺色の髪をボサボサにしているのが目立つ。耳にはピアスをつけ、模様までは分からないが首筋にはチラリとタトゥーのようなものが見える。


 アレク君も不良みたいだったが、この人はまんま不良だ。服装なんて腹がむき出しの服を着用しているし…あらま、腹筋バッキバキですね。しゅごい。…じゃなくて! 

 取りあえず冒険者ではないと分かるくらいには普通ではなかった。悪く言えば厨二病患者です。


 その若者はどうやら俺に用があるらしく、マッチさんに俺の所在について尋ねて確かめると、マッチさんの質問には答えずにこちらに向かって歩いてきた。


 そして…


「よぉ、お前が『神鳥使い』か?」


 その男は、俺とアンリさんが並んで座っていた席の真正面…向かい側の椅子にドスッと、乱暴に座り込んできた。


「えっと…何でしょうか?」


 う~む。近くで見るとますます不良だなぁ…。

 それに筋肉に無駄がないし…素晴らしい細マッチョ体型だ。うむ!


 近くまできて分かったが、この人アレク君と同じくらいに背が高い。

 構図的には私が舎弟みたいな感じになってますねぇ。

 兄貴って呼んだ方がいい?


「……ふ~ん?」

「な~に?」


 俺とナナの呼びかけに答えるでもなく、俺を上から下までジーッと見てくる。

 それが終わると…


「特徴は一致するな。従魔が2匹、黒髪、ちっさい。それに…まさか本当にジャンパーだとはな」


 俺の特徴を口に出しては、鼻で笑っている。

 わざわざ口に出すのはどうかと思うが、別に言われた通りなので特に反論する気はない。


 で・す・が…


 ちっさいって言った? この人…。

 言ったよね? 言ってたよね? 言ったよ絶対…。


 ………はぁ!? いきなり人のコンプレックスを指摘してくるとかないんですけど~。

 スープレックスしちゃうぞ、この野郎。


 小さいという一点。そこだけは言われるのは嫌だ。


「…あの」


 非常にカチンとくる奴のようだったが、話を進めたいので先ほどの質問の答えを促す。


「ん? ああ悪ぃな。ちとお前に用があってさ…」

「用ですか?」


 受付の時点で分かってはいたが、やはり俺に用があるらしい。


「な~に、そんな難しいことじゃないさ…」


 すると…男はようやく本題を口にした。


「俺と戦え」


 …とのことらしい。


「は?」

「だ~か~ら! 戦えつってんだよ。聞こえなかったのか?」


 いや、聞こえてますけども…。急な物言いにビックリしただけですから…。

 てか本当に横暴で物騒な人だな…。


 もう一度言っとこうか。…は?


「いや、聞こえてますけど…何で急に?」

「『虚』と『白面』からお前のこと聞いてよぉ、楽しめそうだなと思ったんだよ。まさか『虚』の『虚構迷宮(ホロウミラージュ)』を力づくで突破するたぁ…恐れ入ったぜ」

「……『虚』…? 『虚構迷宮(ホロウミラージュ)』…? 一体何を…」


 目の前の男が、しみじみとした顔で話してくる。

 戦えということにキョトンとしていたが、そこに知らないワードが次々と出てきて頭が追い付かない。


 …何を言ってるんだこの人は。


「…まだ分かんねぇか? ラグナのは『白面』。この前の東のは『虚』って奴がやったんだよ」

「……え?」

「ご主人っ!!」


 俺が情報の整理をして答えを弾きだす前に、俺よりも早く答えを出し、男の言っている意味を理解したポポが…叫んだ。

 そこで俺もようやく理解した。


「俺ぁ…そいつらと一緒にいる奴ってわけだ。ここまで言えば分かるか?」

「っ…!!?」


 コイツは…連中の1人だ!


 咄嗟にアンリさんの前に手を出して、守備態勢を取る。




「お前と本気の戦いがしてぇ。異世界人の力…見せてくれよ」

今日はあと2話投稿します。

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