11話 ギルドでのお約束
「ご主人! 何があったのですか!?」
どうやらポポが帰ってきたようだ。
足に光る石を持っている。何だ?
それを集めると願いでも叶うのか?
気にはなったが、とりあえず俺は先程のあらましを説明する。
◆◆◆
先程あった出来事の説明が終わると…
「とんでもないですねそれ…。扱いには十分注意を」
「気を付けてねー?」
そう言われてしまった。
素直に頷く。
あ、ナナはポポに説明をしてる途中に帰ってきた。
途中から話を説明を聞いていたが、惨状をみて大体察したみたいだ。
頭の良いことで…。
「ああ、気を付けるよ。それとスライムは見つかったか?」
「それなんですが、ハイ。それっぽいのを見つけました。ただ…」
「どうした?」
「ちょっとどんなもんかとスライムを軽く突ついてみたんですよ。そしたらですね…1発で死にました」
…。
「あそこまで弱いとは思いませんでした。あ、コレはおそらくスライムから取れた魔核です」
「私も~、ハイ」
2匹は俺に同じ魔核を渡してきた。
2つの魔核は鈍くて暗い色をしており、あまり綺麗とは言えなかった。
「スライムで訓練をしようとか昨日言っていましたけど、恐らく訓練にすらならないかと…。もっと強いモンスターでないと話にならないと思いますよ」
どうやら本当に弱小みたいだ。一応コイツらより強い俺が倒せないわけない。
スライムなら多分走ってるだけで葬れるだろうな。
というより、さっきの自分をみたら大抵のモンスターは倒せるような気しかしてこない…。
はぁ…。何コレ。
もういいよ…、こうなりゃもうヤケだ。
「…作戦を変更する。各自薬草の採取とスライムの討伐を行おう。そのほうが効率良さそうだからな。そして戦利品は俺のとこに持ってくること。今日はもう金を荒稼ぎするぞ!」
「分かりました!」
「は~い」
「あ、どうせだから魔法も使いまくって練習しろよ? スキルレベルは上げれるときに上げよう!」
そして各自散開する。
その日俺たちは、草原の薬草とスライムを殲滅した。
あと、スライムはさっきの場所から離れた所に大量にいた。
どうやら生息域があるらしく、町の近くにはいないようだ。
あ、ベルクさんのとこで買ったショートソード、結局使わなかったな。
色々してくれたのに申し訳ない。
ベルクさんに心の中で俺は謝った。
◆◆◆
各自で行動をしばらくすると、夕方になった。
俺たちの前には今二つの山がある。
大きいものと小さいものが一つずつ。大きい山の方が薬草でできており、小さい山の方はスライムの魔石によって成り立っている。
やべっ、やりすぎたかも…。
「集めすぎたな…どれだけあるか分かんない」
「ですね」
「凄いね~」
ポポもそう感じたみたいだ、ナナは呑気なもんだけど。
俺はそう思いながら自分のステータスを確認する。
◆
【神代 司(人間)】
レベル・・・16
HP・・・・・175
攻撃力・・・・130
防御力・・・・170(+1000)
素早さ・・・・155(+1000)
魔力量・・・・234(+1000)
魔力強度・・・183
運・・・・・・40
【スキル・加護】
魔法・火 レベル5
魔法・水 レベル5
魔法・風 レベル5
魔法・土 レベル5
魔法・光 レベル5
魔法・闇 レベル5
魔法・無 レベル8
成長速度 20倍
無限成長
従魔師
神の加護
【付与スキル】
HP自動回復(特大)
衝撃耐性(特大)
忍耐力 レベルMax
◆
…もうあれこれ言うのはやめた。いちいちツッコんでたら疲れる。
スライムしか倒していないはずなのにレベルの上昇がすごく早い。【成長速度 20倍】のおかげでもう既に16レベルだ。
何が大器晩成のスキルだよ…むしろ逆だわ。
頭で悪態をつく。
まぁそれに伴い、ステータスももちろん上昇した。
ちょくちょくステータスを確認して分かったが、どうやらレベルアップで上がる能力値は固定っぽい。
どうやらHPと攻撃力と素早さは5ずつ、防御力は6といった感じでそれぞれが上昇した。
魔力量と魔力強度だが、これはレベルアップをしなくても上昇していた。…というよりレベルアップでは上がらなかった。
魔法は使えば使うほど熟練度が上がるシステムっぽい。
ポポとナナのも確認してみよう。
◆
【ポポ(インコ)】
レベル・・・4
HP・・・・・62(+20)
攻撃力・・・52(+20)
防御力・・・42(+20)
素早さ・・・115(+20)
魔力量・・・50(+20)
魔力強度・・・44(+20)
運・・・・・・50
※変化時ステータス2倍
【スキル・加護】
魔法・火 レベル2
魔法・風 レベル1
神の加護
◆
◆
【ナナ(インコ)】
レベル・・・3
HP・・・・・36(+20)
攻撃力・・・26(+20)
防御力・・・26(+20)
素早さ・・・115(+20)
魔力量・・・83(+20)
魔力強度・・・89(+20)
運・・・・・・50(+20)
※変化時ステータス2倍
【スキル・加護】
魔法・水 レベル3
魔法・土 レベル2
神の加護
◆
レベルは2匹とも似たり寄ったりだ。
これが普通なのかは分からないが、数えられないほどスライム倒してるし、これでも結構すごいんだろう。スキルレベルも少し上がっている。
ステータスの伸びについては、素早さの上昇率が優秀だな。…鳥だからかな。
他のステータスについては、予想はしていたがポポは前衛寄りでナナは後衛寄りだ。
やっぱりそれぞれで上がりやすい能力はあるっぽい。
性格とかで決まるのかな? 今はまだ分からない。
「レベルも少し上がってるしステータスもちょっと上昇してるな」
「ご主人のに比べたら見劣りしますけどね」
「俺と比べるのはどうかと思うぞ…」
「人外に向かって一歩前進~?」
「ナナやめて、一番わかってるつもりだからさ…」
やっぱりナナはちょっと毒舌だ。
俺のハートは脆いのよ…。もっと労わってくれ。
「とりあえずさ、ギルドに行って報告しよう」
「そうですね」
「あいあいさ~」
薬草と魔石の山を【アイテムボックス】にしまい、俺たちはグランドルに戻ったのだった。
◆◆◆
グランドルまで戻って門をくぐった俺たちは現在、ギルドの前に立っていた。
扉の前で仁王立ちしている状態の為、通行人がチラチラとこちらをみているが、今はそんなことは気にしない。
「やっぱり注目は避けられないよな?」
「ええ、恐らくは。変な輩が絡んでくる可能性は高いかと…」
「やっぱりそう思うか」
「注目されるのは避けられませんね、絡まれたら撃退するしかないでしょう。幸いそれだけの力が恐らく私たちにはありますし」
「…そうすっか」
できればそうなって欲しくはないんだけどなぁ。
そんなやり取りをしてギルドの中に入る。
中は昨日とは違い多くの人で溢れかえっていた。
雑談をしている者。酒を飲んでいる者。騒いでいる者などとさまざまだ。
それぞれが鎧やローブ等の装備を着用しており、中は喧騒で包まれている。
これが冒険者ギルドの本当の光景なんだろうな。
数名、俺たちに気づいた者もいたがすぐに視線をそらされた。
興味がないといった感じだ。まぁそれが普通の反応だろう。
俺は筋肉さんのいる受付へと向かう。
「昨日ぶりですね」
「あ、ツカサさんこんばんわ。あの後武器は購入したんですか?」
「ええ、おかげさまで。無難にショートソードを買いましたよ」
「そうですか。ですが見当たりませんけど…」
「ああそれなr「おいおい、ここはガキの来るところじゃあねぇぞ?」
答えようとしたところで言葉を遮られる。
俺が振り返ると、そこには背中に大剣を背負った無精髭の強面のオッサンがいて、ニヤニヤとこっちを見ていた。
うわぁ、でっかいなー。俺の首2つ分くらい差のある身長をしてるよ。
後ろには取り巻きらしき人もいて、こちらの方もニヤニヤしている。
どうやらオッサンはコイツらのリーダー格っぽい。
それにしても気持ち悪い。そのデカさ、咥えて剛毛な髭が気持ち悪さに拍車を掛けているね。
というよりコレは…
「何のようだぁ? あぁん?」
だよな。
予想通り絡まれた。面倒くせぇ。
ポポとナナもきっと同じ考えだろう。
「えっと、初めまして、昨日冒険者になりました。ツカサ・カミシロと申します」
丁寧に挨拶をしておく。すると…
「ぷっ! 聞いたかお前ら、コイツ冒険者だってよ!! ギャハハッ!! しかもこの格好でっ!」
そのオッサンの言葉に、取り巻きの奴等も下品な大声で笑い始める。
カチン…
…俺の今の返答はおかしくないよな? スゲー腹立つ。服装については一応納得できるが…。
苛立ちを覚えたがそれを胸にしまいつつ、俺は返答する。
「新人ですので分からないことも多いです。ですから先輩方には色々と教えて戴ければと思いますので、これからよろしくお願いします」
「へっへっへ、そうかそうか! 礼儀正しいのは嫌いじゃねぇぜ? じゃあ俺たちが色々と教えてやるからよぉ、その授業料として今持ってる金全部寄越せや」
あ、やっぱ無理。コイツらはぶっ飛ばしておきましょう。
てかこの流れからしてそれしか解決策が見当たらない。逃げた所で問題の解決にはならんだろうし…。どうせだったら二度と絡んでこないようにしてしまおう。
それと…絶対ギルドに迷惑かけてるパターンだろコレ。
お約束だな。
だから俺は本心をあらわにしようとしたのだが…
「結構。せっかくご主人が下手に出ているというのにその態度、あなた方のような人達に教えてもらうことなど1つもありません。…というよりさっさと失せてもらえますか?」
できませんでした。
俺が言うよりも速く、ポポが言葉を述べる。
いつものイケボではなくものすごく低い声で、普段とのギャップが凄かったので驚いた。
お前…そんな口調できるんだな。正直カッコイイ。
「っ!? 何だぁ? オメェ喋れたのかよ…。従魔か? それよりもオメェ、今なんて言った?」
オッサンはポポに驚いてはいたがすぐに落ち着き、聞き返してくる。
ニヤニヤした顔はもうしておらず、額に青筋が見える。
怒りで青筋出る人は初めて見たなぁ。ハッキリ言ってキモいです。
というより沸点低すぎませんかねぇ?
それと筋肉さんはというと、口に手を当ててアワアワとしている。
ムキムキマッチョだからすごいシュールな光景だ。
「その耳は飾りですか? それとも理解できないただのバカなんでしょうか? まぁ貴方はきっと後者でしょうけど」
「オメェ、死にてぇみたいだな」
オッサンはポポの言葉にどんどん顔が赤くなっていく。
うわぁトマトみたい。
そろそろ食べ頃ですよ! これ以上は熟れすぎちゃいます!
と変なことを考えていると、騒ぎを聞きつけた他の冒険者がどんどん集まってきていることに気づく。
デスヨネー、すんません、お騒がせして。
「従魔のしつけがなってねぇみたいだなぁ。従魔の責任は…主人の責任だよなぁ?」
俺が内心でギャラリーに謝っているとオッサンからそんなことを言われた。
あれ? 何か矛先変わってね? ミーですか?
ポポじゃねぇの? ワタシイマハカンケイナインデスケド…。
まぁ確かに従魔の責任は主人の責任ってルールありますけども…。
今回の場合は責任ってほどでもなくないか? ちょいと理不尽な気がしますよ?
ポポはというと、オッサンが突然俺に矛先を変えたことに困惑しているようだった。
だよなぁ。俺がポポの立場だったらその反応をすると思う。
でもまぁ、元々俺がぶっ飛ばす予定ではあったし問題はない。
オッサンが言うように、責任を取りましょうかね?
「そうで……いや、アンタらに敬語なんて必要ないか。そうだな、じゃあどうすれば良いんだ?」
「死んで償えやぁぁああっ!!」
そう言ってから背中の大剣に手をかけ、俺の首もと辺り目掛けて振りおろす。
目が完全にイッており、血が昇りすぎているのが十分に分かる。
その光景を見ていたであろう筋肉さんの悲鳴が、後ろから聞こえる。
女子かアンタは! 似合ってないぞ!
そんなことを考えながら俺は…




