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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第三章 狂いし戦の虜、闘神の流儀
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123話 集会②(別視点)

 ◇◇◇




 とある場所にて…。

 いつもの部屋で、8人がモニターを囲うように椅子に座っている。


「『虚』よ。それは本当か?」


『虚』が報告をすると、『絶』が『虚』の発言の虚偽を確認している。


「ホントホント。確かに言ってたよ。だから彼…異世界人と見ていいと思うんだよねー」


 どうやら東であった出来事を伝えているらしく、その時司がした発言を指摘しているようだ。


「オイオイ、このタイミングでかよぉ…勘弁してくれまったく」

「フ…フフフフフ。まさか彼が異世界人とは…、驚きですねぇ」


『銀』はゲンナリとし、『白面』は驚きと笑いが入り混じったような反応をしている。


「確かに、前回からかれこれ300年は時が経っているしのぅ。来てもおかしくはないな」

「ああ。情報がなかったのも頷けるな。…ここ最近で来たのではあるわけもない。この世界にはいなかった存在なのだから」


 司が異世界人であるということに異論はないらしく、過去の事例を加味してそう結論付けたようだ。

 そして情報がこれまで見つからなかったことに関しても、問題は解決したといった様子である。


「だけどよ…こんな短期間で強くなるものなのか? 流石に早すぎんだろ。過去の奴らもこんなスピードなのか?」


『銀』は司の成長速度が尋常ではないことに疑問を感じているようだが、それは無理もないことだろう。


「分からぬ。だが…異世界人は皆特異なスキルを保持しているからな。そ奴も何かしら特別なスキルを持っていると考えて良いだろう」

「…もしくは神に愛されているのかもしれんのぅ」

「面倒な…」


 司の持つ【成長速度 20倍】と【無限成長】。これらはこの世界の魂を持つ者には絶対に備わることのないスキルである。

 今『絶』の言った特異なスキルという言い方は正しい。

 そしてその1つが気に入られたことによって与えられたと考えると、愛されているという表現は正しいと言ってもいい。


「…で? 『虚』、アンタ直接会ってきたわけだけど…どうだったの?」

「それなんだけどね。見た目は本当にジャンパーだったよ? 結構目立つからすぐ分かったよ」

「フフフ、それは何よりです」

「やっぱ情報って大事だね~」

「ですよねぇ」

「アハハハハ」

「フフフフフ」


『虚』と『白面』が笑い合う。

 どちらも表情の掴めないような笑いをしており、非常に不気味である。


「というより『虚』。お主、そ奴に手を出すなと言われていたのに手を出したな?」

「あ…いやその…、ちょっと出来心で…テヘッ☆」

「…お主の担当を増やそう。『影』、1人…いや2人寄越してやれ」

「(コクリ)」

「うわわわわっ!? ゴメンって! 『影』もやめてよ!?」

「(フルフル…グッ!)」

「うわーん!!」


『影』が首を振って、親指を立てる。

 どうやら「嫌だ。任せた!」と、言っているようである。

『虚』はというと先ほどまで笑っていた顔をやめて、悲痛な表情をしていたが…。


 だがすぐさま…


「ちぇっ、ツイてないなーまったく…。ウォルちゃんは死んじゃうし自信のあった『虚構迷宮(ホロウミラージュ)』も突破されちゃうし『影』に仕事押し付けられるし…(ブツブツ)」

「全部『虚』さんのせいな気がしますけどねぇ」


 そこに、今まで黙っていた『闘神』が反応する。


「オイ『虚』。今の話…マジか?」

「へ?」

「お前の『虚構迷宮(ホロウミラージュ)』を突破したっていうのは本当か?」


 椅子を離れた『闘神』が『虚』の近くへと歩み寄り、問いただす。

 そして、『虚』は正直に話す。


「え…うん。真正面から力づくで壊されちゃったんだよね」

「…真正面から? それは俺の時と同じようにか?」

「そーそー。そんな感じ」

「…本当だろうな?」

「むぅー、嘘なんて言わないよー」

「……よっしゃ」


 すると、嘘ではないと分かったのか、『闘神』は『虚』から離れ、部屋の出口へと歩き始める。

 それを見た他の面々は…


「あら?」

「む? 何処へ行く…『闘神』よ」

「…決まってんだろ。そいつんとこだよ。『神鳥使い』だっけ? 興味が湧いた」

「いやいや! 流石の君でもキツすぎると思うよ? 相当ヤバいんだってあの人は! まだまだ何か隠し持ってるって絶対!」

「尚更だな。…虚ろなお前にそんな反応をさせる奴…か。面白れぇ。むしろヤバいくらいで丁度いい」

「あ~あ、始まっちゃったわよまた…」


『夜叉』が今この場の状態を見て、やれやれといった顔をして呟く。

 どうやら過去にも似たようなことがあったらしい。

 それを他の面々も分かっており、扱いには少々困っている様子だ。


「オイ『闘神』。勝手な真似はやめろ。危険なリスクは極力避けるべきだ」

「んなこと知るか。俺は俺の意思で動く。邪魔するってんなら…お前ら全員とここで戦ったっていいんだぜ?」

「「「「「「!?」」」」」」


『闘神』は辛抱強くないのか、それとも癪に障ったのかは分からないが、この場の全員に威圧を放ち始める。

 その強大な威圧を感じ取った他の7人はすぐに黙り込み、『闘神』を見つめて離さない。


 しかし、ここでクロスが口を開いた。


「この戦闘凶めが…!」


 どうやら『闘神』は戦闘凶のようである。

 以前司が未来の自分に対してバトルジャンキーと言っていたが、その類と同じらしい。


 クロスの声は憎しげなものだったが…


「それがどうした? …お前らの仲間になったつもりはねぇよ。俺は強ぇ奴と戦うためだけにここにいるだけで…お前らとはただの協力関係に過ぎねぇ」


 気にもしない口ぶりで、バッサリと切った。


「てめぇ…!」

「止せ『銀』。…ハァ、勝手にしろ。ここで全員お前にやられるわけにはいかないのでな」


『闘神』に食ってかかろうとした『銀』を制止したのは『絶』であった。

『銀』の行動は皆の総意ではあっただろうが、それが逆に不利益となることが分かっていた『絶』は、それを止めたようだ。


『闘神』も…


「ヘッ、良い判断だ。じゃあ俺は行くぜ。…言っとくが加勢しようとか考えるなよ? んなことした奴は…殺す」

「誰もせんわい。第一足手まといになるだけじゃ」

「ですねぇ」


『闘神』は威圧を抑えて、誰もついてくるなと念を押す。

 それに対して周りの反応は、了承とのことだった。


 その判断に満足した『闘神』は部屋から出ていき、足音は次第に遠ざかっていった。


 残された7人。そして静まり返る部屋。

 その空間を揺らしたのは、『虚』の声であった。


「ちょっとちょっと!? 行かせちゃっていいの!?」

「仕方あるまい…。どうせ言うことなんて聞きはしないだろうからな。放っておけ」

「…大丈夫かなぁ?」


『虚』は司に直接手を出したからこそ、相手がどんなに規格外の存在かが分かっていたため心配していた。


「アイツは例え死んでも本望って考えなんでしょ。ホンット狂ってるわよね」

「お主がそれを言うか」

「何か言った?」

「あ、いや…なんでもない」


『夜叉』の剣幕に慄いた『クロス』は、声を小さくさせながら即座に否定する。

 女は怒らせたら怖いといったことを証明する光景が、そこにはあった。




 ◇◇◇




 一方、部屋を出た『闘神』はというと、自分の部屋らしき場所で何やら出かける支度を整えている様子だ。

 部屋の中は武器…武器…武器で溢れかえっており、他にはちょっとした小道具があるだけでそれ以外には全くと言っていい程に何もない。

 それ以前にここは部屋なのか倉庫なのかさえ分からない。そんな状態の部屋であった。


「ここんとこ満足のいく奴がいなかったからな…今回は楽しめそうか? まぁネズミと同等以上なら最高だな」


 そう呟きながら、目に付いた武器に触れては消し、触れては消しを繰り返す。

 消えたというよりかは…『転移』のようにパッと消えていくため、何処かに飛ばしたというのが正しい表現かもしれない。


 やがて、部屋の武器をあらかた消したところで…


「久々の獲物だ。滾ってきたぜぇ…!」




 獰猛な笑みを浮かべた青年は、不敵に笑うのだった。

次回更新は水曜です。

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