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神鳥使いと呼ばれた男  作者: TUN
第三章 狂いし戦の虜、闘神の流儀
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113話 見た目は筋肉、頭脳は豆腐、その名は…

「ツカサさん! お久しぶりですね」


 ギルドへ来ると、相変わらずの声…。


 ギルドのある意味看板、元筋肉さんのマッチさんである。

 その筋骨隆々とした体は素晴らしく、どこか光るものがあるお方だ。


 ヒューヒュー! 今日も活かしてるぜマッチさん!


「どうも。マッチさんもお変わりないようで…」

「ええ、あれ以来は特に大きな問題もなく…。ギルドは至って通常通りですよ。そちらはどうでしたか?」

「まぁ…ボチボチってとこですかね」


 いつも通りのやり取り、社交辞令とも言うべきか…。

 会うたびにこんなことをしているが、面倒臭いと思うことはない。


「アイツだ…戻って来たらしいな」

「従魔がいねぇな…どこいったんだ?」

「その辺にいるだろ。いつも一緒だし…」


 ヒソヒソと声が聞こえてくる。

 Sランクになってからというもの、冒険者の間では何かとこうして注目を浴びるようになってしまった。


「マッチさん。ギルドマスターっていますかね?」

「えっと…今日は非番なのですが…」


 あ、そうなん?


「そうでしたか…。じゃあ、明日っていますかね?」

「ええ、明日はいるはずですよ。何か御用があるのでしたら…私の方でご用件を事前に伝えておきますけど…」

「…じゃあ、学院の件で話したいことがある…って伝えて貰えますか? 多分それ言えば分かると思うんで。もし伝えることはないって言われたら、別に会う必要ないんで…」

「? はい…。じゃあ、そう伝えておきますね」

「よろしくお願いします」


 仕方ないが…明日出直すか。休みを邪魔するようなことはしたくないし…。


「それで……帰って来たばかりのところ申し訳ないんですけど…」


 マッチさんが今度はまた別のいつもの表情で話してくる。


 …あ。


「…もしかして結構溜まってます?」

「はい。相変わらず溜まってしまってます…手伝いが…」


 ですよねー。そうじゃないかと思ってましたよ。

 この依頼はいつもそうですもんねぇ。


 もしここで『溜まってる』って言葉に別の意味で反応した人がいたら、それはやらしい人確定だ。

 …それはなんでかって? フッ…それは自分が一番お分かりだろう? いやだなぁ~。


 アハハ…誰に向かって話してんでしょうかね私は。

 恥ずかちぃ。


「ツカサさん以外、本当にやる人少ないんですよねぇ…」


 いや、だって金にならないしなぁ…。現実問題、生活が懸かっている人が大半だから仕方のないことだと思うぞ。

 強制力があるわけでもないし、俺は一度やり始めた手前引き返せないだけですから。


「…取りあえず、リスト見せて貰えますか? 急なのがあれば今日頑張りますけど…明日にパパッとやっときますんで…」

「…ありがとうございますぅ!」


 ガシッ! と手を掴まれる。

 マッチさんを見れば、泣きそうな顔でこちらを見つめていた。


 泣かないでくださいよ。どんだけ溜め込んでたんですか。

 溜め込むのは筋肉だけにしてくださいよ…。


 住人の依頼は、別に受理して達成してもしなくても…職員の評価には関係しない。緊急性のないものばかりであるし、重要度が低いものが多いからだ。

 しかし…人間関係はそう簡単に上手くはいかないというか…。評価に関係しないから依頼をずっと達成しないで放置し、見なかったことにしてしまうと、住民の不満は募り…最終的には爆発してしまう。

 ギルドの運営は町に住む住人らの税金から払われているものであり、金を払っていてなお自分たちの問題が解消されないということに、納得がいかないのは当然だからだ。

 その怒りの矛先は…まずギルドにいる職員に向かう。それから冒険者達、ギルドマスターといった具合になるため、最初の窓口である職員はその時の対応で精神的にやられてしまう人も少なくない。

 そんなものを気にしない胆力を持った人であれば特に気にすることでもないのかもしれないが、実際にそんな人物が都合よく職員になる可能性などは一握りだ。全員がそうではない。

 そのため、住人の依頼を滞りなく処理することは、自らを守ることにも繋がるのである。


 今俺の目の前にいる人も、見た目だけでメンタルはそこまで強くはない。


 俺=自分を守る存在。みたいな図式がきっとできているんだろう。

 …まぁそれも別にいいかなとは思ってる。この人とは最初からの付き合いだし、それ以外もきっとあると思っているからな。


「マッチさん大げさですって…あの、リストは?」

「ああっ!? すみません! 嬉しさのあまりつい…」


 そう言うと手を放し、リストを俺に手渡してくる。


 どんだけ嬉しいんだよ…。


 見た目は筋肉、頭脳(心)は豆腐、その名も…って言う風に名前叫ばれますよそれじゃ…。


 まぁ別にいいんですけどねー。良い人なのは変わらんから。


「…ふむふむ」


 そんなことはさておき、渡されたリストを見てみると…どうやら結構な量が依頼として出ているようである。

 中には俺が指名されているものもあり、それは普通の依頼として出してほしい。

 まぁ…リピーターがついてしまったのは確かだ。


「…ふぅ。分かりました。これ…お預かりしても?」

「どうぞどうぞ」


 渡されたリストを懐にしまう。


 もうこれでギルドの用事は済んだ…。疲れたし俺ももう休もう。




 俺はギルドを後にした。

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