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通報屋5

かなり長く空いてしまいました。申しわけありません。あと数話で、この話は終了予定です。でも、思ったより長くなりますね。まあ、なんとか続けていきたいと思います。更新は未定です。

前回のあらすじ・デニス。


 さーて、帰ってきましたよー我が家に。


 えー、俺んちは目の前にある此処、でっかいマンションの一室だ。防犯の都合上、部屋番は教えられないのでオナシャス。


 あ?結構金持ってるなって?


 あー。まあな。一応通報で稼いでたからなー。家賃や電気水道ガス代とかふつーに払えるぐらいには。


 それが異常だっていうのを今日初めて知ったけどな。


 うん。まあ、なんだ。


 別にいいんじゃねーの?俺は俺。他人は他人で。俺はただ突き進むのさ。この長く険しい、通報道をよ!!


 ってーか、アイツラどうしようかね?


 …一応、脅迫罪にはなる…のか?まあ、なるか。銃で脅されたし。


 名前もわかってるしな。偽名の可能性高いけど。


 通報やるか?今なら無抵抗で捕まえられそうだけど…。


 俺自身はまあ、アレだしな。ただ、極道モンの居場所教えただけだし。それに調べるためのケータイは腐れバナナのだし。俺が関与した物的証拠は今のところないな。うん。


 まあ、大丈夫じゃね?通報やっちゃって。


 …あ、腐れ花のケータイ、有料の奴に加入させたままだった。


 めっちゃ使ったし、説明でも何度か利用したから、使用料凄いだろうな。中でもあそこは特別クソ高けぇし。請求額すごいだろ。



 ま、俺には関係ねーしいーか。



「それより、さっさと家はいるか。おー寒。流石12月だわ。冬将軍キレッキレだわ」


 入ったら、まずは通報しよう。んで風呂溜めて通報しよう。それから通報しよう…あーいや、明日も早いし通報しよう、さっさと寝て通報しようか。うん。通報しよう。そうしよう。



 お、着いた着いた。鍵を開けて…っと。



「あー寒かったー。ただいまー。ってか、外にいすぎなんだよな。強盗ども通報して帰る予定が…どうしてこうなった。マジで」


 くっそ!これもあいつらが悪いんや!即座に通報や!!



 と、その時。


「おー結構いい部屋住んでんなー。家賃いくら?やっぱ高い?」


 …。


 今、すごく聞きたくない声が聞こえた様な…。


 もっと言うと。


 俺の背後から、あのクッソリーダーの声がしたような…。


 ま、まさかな。人体急所のうちの一つ、人中を全力でついて昏倒させたんだぜ?それがほんの数分で意識は戻っても、行動するのはさすがに無理無理。


 そんなんもはや人間じゃねーw「おー。内装もいいなー。洋風テイストって奴?こういうのにこってんの?いいねー。俺も見習おうかなー」って人間じゃなかったー!!!



 「何しとんじゃー!!己はーーー!!!」



 深夜のマンションの玄関で、叫んだ俺は悪くないと思う。



* * *


 ふはははは!


 人中を突かれて軽く死にかけたが、そこは皆のリーダー!!!何とか生き返って、お前を尾行していたのさ!!おかげでまだ頭がクラクラするし、キャラが狂った気がするが気にするな!!問題ない!!


「本気で、何してんだてめえ!?もう終わったろうが!!家に来んなよ!!ってかどうやってきた!!」


 はははは。


 お前こそ何を言っているんだ?「我々が見つけられなかったターゲットを見つけ出したその手腕、扱き使おうと思うのは当然の事だろう!ここにはそのための弱みを探しに来たに決まっているだろうが!!さあ、レッツ家探し!!!」


 「あ、もしもし、警察ですか?実は家に強盗が…」


 っておいー!!!


 「ちょ、ちょっとちょっと!!な、何通報してんの!?ここは、 『く、し、仕方ない!家に上げてやるが、何も触るなよ』って所だろ!?それをガチ通報とかなんなんだ!?お前は!!」


 そんな事されてみろ!!自身満々にやってきた私が馬鹿みたいじゃないか!!


「るっせーわハゲ!!そう言うセリフは押しかけ女房的彼女に言うセリフであって、野郎、しかも脅迫してきた奴相手に言うかバカ!!もう捕まっちまえよ!!Whenに捕まるの!?Nowでしょ!!」


 いや、そんな〇ー語と森先生みたいなこと言われてもつかまらないからな!?


 ええい!!こうなったら実力行使だ!!コイツの強さはちょっと強い一般人と大して変わらん!!なら、この場で叩き伏せ、いう事を聞かせ「あ、新人様!おかえりなさいませ」る…?


 何だ?今の声は?新人様?


 え?女の声?


 !よっしゃ!!人質や!!


 ふふふ。家に住まわせている女なぞ、彼女以外におるまい!人質にとれば、コイツは俺達の有ことを聞かずにはおれまいさ!!なんという天才!!自分で自分が恐ろしい!!


 さあ!栄光の未来の為に、人質になれ!!まだ見ぬ女ぁ!!


 そうして声のした方を見た…。


 次の瞬間!!


「おー。八重ちゃん。ただいまーって、まだ起きてたのか!?もう寝てても良かったのに」


「何をおっしゃるんですか!ご主人様がおかえりになるのをお出迎えしてこそのメイドですよ!ご主人様より先にお休みになるなんて!そんな事はできません!」


 さっきと打って変わり和やかな雰囲気で、にこやかに話す飛籠新人。


 そして、その言葉に返答するのは…。


 ・どう見ても、ヨーロッパとかの名家に出てくるようなメイド服を着た女。


 ・髪は金髪。眼は茶色。胸は大きめ。おっとりしていて、優しそうな雰囲気がすごくいい。


 だが。


 ・人間であれば、耳のある部分。そこに。



 ヘッドフォンのような、メカメカしい無機質な物体が二つ付いていた。



 間違いない。


 「アンド…ロイド…?」 


 そう、巷で人気…特に男に…のアンドロイドだ。間違いない。


 いや、存在自体は知っているというか有名だ。日本の会社、『KISOカンパニー』が作ったものだ。


 見た目の美しさや、かわいらしさからお値段が『新車十数台分』でも爆発的に売れているわけだが、俺が驚いているのは何もそんなことにではない。


 このアンドロイド、売買するさい、何として売られているかご存じだろうか?



 実は、『警備ロボット』の名称で売られているのである。


 

 うん。そう。警備…なんですよね。はは。


 何と、華奢なお姫様みたいな体で、全種類の格闘術、捕縛術、射撃術等々をトップレベルで習得しているのだ。


 しかも、アンドロイドであるため、その威力は人間のそれ以上の威力を誇る。有名な話では、トラックを投げたり、武装した屈強な男たちを10人全員戦闘不能にしたり、飛んできた弾丸を弾いたりなど、もはやシークレットサービスが廃業するほどの高性能さを誇ると言われている。


 その、容姿から実力まですべてがパーフェクトなアンドロイドであるが、問題はそこじゃない。まあ、脅威ではあるがそこじゃないんだ。問題は。



 アンドロイドには、24時間眠らない、警備サービスが付いている。



 このサービスは、人を超える力を持つアンドロイドが、基本は防衛の身に使うのだが、それを攻撃目的で使うことのない様に、また、購入した人間にもそう言う風には使わせない監視の意味でついているサービスである。



 つまり、アンドロイドの暴走を『させない』為のサービスである。



 言い換えると、『アンドロイドを守る』サービスなのである。



 その為、もし、アンドロイドに何かあったら…例えば、危害を加えたり、拉致されそうになったりしたら…



 本人も抵抗するだろうが、警備サービスから情報が、瞬時にアンドロイド救出部隊や、『警察』関係にも送られるのだ。アンドロイドに起きた危機を円滑に解決するためにである。大いなる力を悪用させないために必要なサービスだな。

 

 結論を言おう。


 手出し、できません!!ここで手を出したら!!終わる!!そこで終わる!!


 絶対に手を出すことはできない!!むしろ、ここは帰るべき!!


 だが!!


 ここで帰っても、地獄!!仲間からの、あの冷たい目!!バカにした笑い!!というよりも何も掴めないわけだから、更に状況を悪くする!!即座に通報するくらいだから、帰ったら間違いなくまた通報される!!って。


 通報!?ヤバい!!通報もうし終わってる!!


 本気でヤベぇ!!ど、どうすればいい!?


 このまま進は地獄!帰っても地獄だぞ!?


 1・天才的なリーダーは何か名案を思い付く。


 2・そのとき不思議な事が起こった。


 3・現実は地獄である。



 3以外!3以外でおねシャス!!


「あ、新人様、お電話をお使いですか?」


「ん?ああ。うんちょっとな。緊急の用があって…」


「あら、そうでしたか。でも、それなら携帯電話をお使いください。なんせ、今、家の電話が全て調子が悪うございまして…」


 セーーーーーーーフ!!!!


 圧倒的セーーーーーーフ!!!


 生き延びた!!生き延びたよ!!俺ぇ!!!


 ぐはははは!!ついている!!やはり俺はついている!!


 いや!!もはや背負っていると言っても過言ではない!!

 

 圧倒的!圧倒的じゃないか!!俺の運は!!間違いなく!!勝利の女神は俺に惚れているぅぅぅぅ!!!


「あ、そうなん?まいったな…」


 ふあははは!困れ困れ!飛籠新人!!お前の苦悶で歪む顔で、メシが美味いわ!!!


「あ、そう言えば新人様。その…」



「そちらの方は、一体どなたですか?」



 …あ。


 そ、そうだ!!困り顔で満足してる場合じゃなかった!!

 

 今!俺がピンチだという事に変わりはなかったんだった!!


 ど、そうする!?俺ぇぇぇ!!!


 か、考えろオ!!何か!何かいい手はぁぁぁぁ!!


「あ、コイツはな。ただの犯ざ「判沢 輝幸と申します!!飛籠君の!!上司(予定)です!!」…は?」


 う、うん?何をそんな目で見てるのかね?あr…飛籠く~~~ん!!


 ぼ、僕は嘘は言ってないよ~?だってぇ~将来的にはぁ~僕らは同じ組織で働くじゃないか~。


 って言うかぁ。もう既に情報提供って形で働いてもらってるしィ。その時、僕が上司的立場だったから、まるっきり嘘じゃあないよねぇ~。



「まあ!新人様!ご就職されたのですか!?」


「え゛!?あ、あーえっと…」


 ほらほら、認めちゃいなよ~YOU~。


 嘘じゃないんだしさ~。あの子メッチャ顔、パアアアって明るくなったよぉ?そんなあの子の笑顔、曇らす真似、まさかYOUはしないよねぇ~~~。


「ま、まあな。うん、そう言う感じ…不本意だけど」


「!!まあ!そうなんですか!!」



 よし!!押し通した!!


 やったね!!今日の俺は冴えてる!!この危機的状況を打破した!!


 もう、何も怖くねぇ!!


 ここから、弱みでもなんでも見つけて、巻き返してやるぜぇ!!


「あらあらあらあら!!まあまあまあまあ!!それは大変!!おめでとうございます!!」


 うおお!?まぶい!!笑顔がまぶい!!


 な、なんていう純真の笑み!!どこまでも輝かしい笑顔!!


 な、何だ!?こ、心が!心が痛くなってきた!!


 殺し屋家業を始めて10数年!老人だろうが子供だろうが男だろうが女だろうが、構わず殺しつくしてきた俺の心が痛むだと!?


 ア、アンドロイド!!な、なんて恐ろしい!!


 これが、人を超えし者の力か!!


 っく、これは、危険だ!この世界にいていい物じゃない!!


 …いつか、アンドロイドを殺さねばならぬ時が来るかもしれんな。


「そうと決まればお祝いです!ささ、新人様!判沢様!どうぞ!中にお入りください!!盛大にお祝いしましょう!」


「あ、どうも、それじゃ「ちょーーーと待った判沢先輩」ん?何かグゲッ!!」


 がぁ!?れ、レバーに!!肝臓に!!ダイナミックエルボー!?


 あ、新人くーん!!さ、刺さってる!!深々と刺さってるよ!!君のエルボーが、僕の肝臓にィィィィィィ!!!ぐ、グリグリらめええええええええ!!


 い、逝っちゃうううううう!!逝ちゃうのおおおおおおおおお!!!!


 そんな時、彼が耳元でそっと呟いた。


「なあ、おい。このまま帰れよ。何ふざけた事ぬかして和気あいあいに家ン中入ろうとしてんだよ。マジで帰れよ手前。今すぐ帰れよ。やっちゃうよ?帰らないと今すぐ、君の肝臓さん、深々と逝ちゃうよ?マジで」


 お、脅してきたあああ!!


 こ、コイツ!!殺し屋の俺を脅しにきやがったぁぁぁぁ!!!!



 「ま、待て!早まるな!早まるんじゃない!お、俺の肝臓さんは昔、事故に会って一個しかいないんだ!それをやらレると俺は「いや、人間、元々肝臓一個だから」ぐわあああああああああ!!!やめて止めてやめて助けて止めて!!!死ぬ!死んじゃうから!!」


 こええええええ!!コイツ、こええええええ!!!


 ガチで殺しにきてるうううううう!!!ふ、普通に俺の肝臓さんをつぶす気だ!これえええええ!!!!



「いいか?一度しか言わねえから良く聞け。お前はもう帰るんだ。これ以上、家を穢す前に。さっさと帰るんだ。そうしないと…分かるな?」


「は、はひいい!!わ、分かります!分かりますから!ちゃんと帰ります!!だ、だから肝臓さんを、肝臓さんを潰さないでぇ!!」


 マジでこええよ!!コイツ!!もういやだ!!リーダーお家帰る!!二度と来るもんか!!頼まれたって来るもんか!!


「いや、手前が勝手に来たんだろうが」


 シャラップ!!もういいYO!さっさとかえるNE!なんか俺のキャラが著しく死んだ気がするYO!!


 くそう!覚えてろよ!!コノ野郎!!


 と、逃げか…ゲフンゲフン!!戦略的撤退をとろうとした。


 その時。


「あら?おかえりになるんですか?」


 あの、メイドアンドロイドだ。あれが何か言ってきた。


「ああ。判沢先輩、会社に忘れ物したの思い出したってさ。取ってくるって」


 くそう!清々しい顔で嘘つきやがって!そんな嬉しそうな顔で言われるとすんげえ腹立つ!!


「え、ええ。そうなんですよ。いやー、お祝い参加したかったなー。超したかったなー。でも取りに行かないとなー。はは。では、さようなら。お邪魔しました」


 結局、何も手に入れる事は出来なかった。でもよかったんだ。これで。


 少なくとも、俺の肝臓さんは無事だったんだから。



「でも、もう夜中の2時ですよ?日付も変わって日曜日ですし。会社お休みなんじゃないですか?」



『ピシッ』


 今、俺は、人生で初めて感じた。


 リアルで、時が止まるという事を。


「い、いやあ!た、多分誰か残ってるでしょう!きっと!メイビー!!」


 い、いかん!!此処で残れば殺される!!なんとしても、帰る!最悪、外にでないと!!


「不確かなまま、真冬の深夜、外に出るのは体に障りますよ?家でゆっくり温まっていきませんか?もう夜も遅いですし、泊まって行ってもかまいませんよ?」


 やめてええええええええええええ!!!


 そう言う話はやめてえええええええええええ!!!

 

 あんたのご主人!すっごい目で見てるからぁぁ!! 


 視線だけで肝臓潰しそうな目で見てるからぁぁ!!


 やめてええええええええええええええ!!!


「いやいやいや、八重ちゃん、先輩にも先輩の事情があるだろうし、ここは送り出してあげよう「でも、それって今じゃないとダメなんですか?朝になってからでも十分間に合いません?それに、折角の会社の先輩を家にも上げないのは、後輩としてどうなんですか」…むぐぅ」


 ふ、封殺した!!


 このアンドロイド!主人を封殺しちゃったよ!!


 とんでもねぇ!!やはり、アンドロイドは危険だ!!




「それに、コレは奥様のご意見でもありますよ」




 全く、なんて恐ろし…え?


 今、なんて言ったの?


「!?え!?かみさん、まだ起きてんの!?」


「はい、ご主人様のお帰りを待っておられますよ。早く会いに行ってあげてください」


「…しゃあねぇな。全く」


 えー。もう僕、良くわかんなーい。


 あれれれー。本気で分かんないぞー?何しに来たんだっけー?


「ささ。判沢様も、どうぞ」


 あ、どうも。


 …じゃあ、お邪魔しま「言っとくけど、何かしたらガチで潰すぞ」サーイエッサー!!


 了解であります!!あr、飛籠軍曹!!


 …もう、帰りたい。


* * *


 …そんな訳で、当初の予定とは全く違った形で上がってしまったのだが…。


「お初にお目にかかります。判沢様。この度は、我が家にようこそ。妻のヴァール・キールです。夫がお世話になります。この人の事ですから、ご迷惑をおかけして大変でしょう。ささ、手狭で恥ずかしい部屋ですが、どうぞごゆるりとしていってください」


「あ、いえ、こちらこそすいません。こんな夜中にお邪魔して」


 部屋のつくりは一般的なマンションのそれだ。特に変わった様子はない。


 寒い冬だから、部屋の真ん中に炬燵。エアコンで暖房を効かせて温かくした極楽空間である。


 部屋に置かれている小物なども、これといって特に、目を引く者はない。


 本当に普通の部屋だ。そして、その部屋の炬燵に入りつつ挨拶をしてきたのが、飛籠軍曹の妻である。


 とても美しい容姿で、褐色の肌の美人だ。


 胸も豊満だが、あんまり見過ぎると俺の肝臓さんがマッハなので自粛。


 ちょっとつり目で厳しそうな印象だが、とてもよさそうな人だ。


 耳に無機質な部品を付けて無ければな。


 どっからどう見てもアンドロイドです。本当にありがとうございました。


 ってかまあ、飛籠君が人間と結婚できるわけないよねー。あービックリした。いや、まさかそんな訳ありえないと思って超ビビったよ。本当にお騒がせなんだからもー…痛ててててて!い、痛い!!肝臓!!肝臓が痛い!!へ、ヘルプ!!ヘルプミー!!!お、俺の肝臓がアアァァァァ!!!あ、今気づいたら、飛籠軍曹超見てる!超俺の事見てる!!もっと言えば肝臓のあたり見てる!!やっべあの人視線で俺の肝臓さん潰す気だ!!目がマジだよ!!本気で怖いよ!!


 すいませんでしたー!!ナマイってすいませんしたー!!許して下さいー!!あ、アンドロイドも、素敵ですよねっていったああああああああああ!?何で!?何で!?痛みが増すのおおおおおおお!?何でええええええええええ!?


「俺の女に色目使ってんじゃねえ。潰すぞ」


 いや、色目使ってねーーーーよーーーー!!!


「気になさらないでください。それに、この時間はいつも、主人が起きている時間ですので。外は寒かったでしょう。ごゆるりとおくつろぎください」


「そうですか…では、その、ではお言葉に甘えて「あ、先輩はこっちで。俺はカミさんの隣がデフォなんでね。すいませんがお願いしますよ…お互いの為に」オーケー分かった。うん。是非そうして。主に俺の肝臓さんの為に」


 こええええ!!やっぱ怖いぞコイツ!!


 虎視眈々と俺の肝臓狙ってるよおおおお!!!脅しの道具に使ってきてるよォおおおお!!!


 あのさぁ!俺!殺し屋!!お前!ただの情報屋!立場分かってないだろ!!俺が本気になったらブッコロだからね!?即死亡!!縮めて即シボだからね!?即ハ〇並に!!調子乗ってんじゃねーぞ!!こらあああ!!


 絶対に!絶対に弱み握って扱き使ってやる!!覚悟しろよ!!


 じゃあ、まずは情報収集だ!!今の俺の立場は仕事の上司!!奥さん使えば、旦那の事なぞ丸分かりよ!!アンドロイド風情に欲情してっからこうなるのさ!!せいぜい利用させてもらうぜ!!


「いやー。しかし、飛籠君がこんに美人な奥さんがいたとは思わなかった!二人はもう結婚して長いのかい?」


 結婚と言っていいかどうかは微妙だが…妻と旦那ならこれで合ってるだろう。さあ、キリキリしゃべってもらおうか?のろけ話を人に聞かせるのは機械でも出来るだろ?さっさと言えよ。


「ええ。主人とは、もう5年の付き合いですね。初めての出会いで、一目ぼれをしまして、そのまま」


「まあ、俺が最初に告白したんだけどな。いやー、あの時のカミさんは美人だった!今は女神だけどな!!美しさ的に!!」


 よしよし、乗ってきたな。どうでも良い情報が多いが仕方ない、もっと情報を出せ!!使える情報をピックアップして、弱みを握ってやる!!


「へえ!そうなのか!いやあ羨ましい!俺にもそう言う出会いが欲しいなあ。で、結婚式はしたのかい?最近ではそう言う人も多いって聞くし」


 昨今では、普通にアンドロイドとの挙式が一般化してきたからな。


 アンドロイドを買っていない奴も多く、人間同士のカップリングが普通の世の中ではあるが、そういうのに否定的なのは少ない。むしろ、受け入れる奴の方が多かったのが原因だ。


 理由は、結婚する人間の減少だな。若者は結婚自体に興味を持てない者が多くなり、年老いての結婚では、財産目当ての殺人が急増したから、結婚に対する意欲が下がったんだ。


 まあ、普通に結婚してる男女もいるにはいるが、昔と比べるとだいぶ下がったらしい。この事態を受けて、少子化に更なる拍車がかかると政府は懸念し、結婚業界も衰退気味、消費者が年々減るから経済も下降ぎみという最悪な状況になりつつあった。


 それを改善するための一環として、アンドロイドとの結婚は認可された。


 これは、アンドロイドと結婚して結婚業界を盛り上げる効果があるという事と、アンドロイドは普通に食事もとれるので、消費者としての能力を備えているから、経済にもプラスに働くからすんなり世間に受け入れられた。


 また、アンドロイドとの『夜の運動会』では、アンドロイドが『オタマジャクソン遺伝子』を搾取し、それを人工授精の為に国に提供するという事で、人口増加に協力できるというメリットもあるのだ。実際その効果で、人工が少しづつではあるが回復し、子供の数も増えてきて、消費も上がり経済も上昇を見せているらしい。


 これは、本気で人口減少がヤバいと思った国と、結婚は嫌がるが子供が欲しいというやつらの利害が一致した結果だ。


 人口を増やしておかないと、わりとマジでヤバイらしいんだな。詳しくは知らんが、かなり前からテレビとか新聞とかで毎日のように言って、今でも言ってるんだから確かだろう。故に、人工授精の提供遺伝子に関する条件を一部下げて、遺伝的疾患や、犯罪歴などの最低限の問題がなく、健康な遺伝子であれば人工受精できるようにしたんだ。


 そして、結婚するのは嫌だが子供は欲しいというやつは意外と多い。


 なぜなら、子どもがいれば国が色々優先して優遇してくれるし、将来を考えれば色々と特になるのである。


 国にすれば、国民が増えるわけだからな。その為なら力入れるのは当たり前だ。国家の存亡の危機。ひいては、世界人口の減少を食い止め、人間社会の存続を守るためだからな。そりゃあ必死になるわ。


 まあ、でも国はそう言う考えでも、実際の奴らは『パートナーはいらんが、将来の担い手は欲しい』。そんな所なんだよな。その為に、国の政策利用しようとしてる奴らがはるかに多い。故に、色々齟齬が生じて、問題も多いのさ。ここら辺は。


 …殺し屋の俺が言うのもなんだが、間違ってるような気もするがね。色々と。


 でも、そんな所まで来ちまってるのも事実なんだよな。実際。


 って、その話は此処までで良い。


 重要なのは、飛籠の情報だ。結婚はおそらくしただろう。そこの棚に飾ってある写真に、タキシード姿の飛籠と、ウェディングドレス姿のアンドロイドが並ぶ、それっぽい写真が写ってるしな。


 なら、その家族!!多くの奴らの弱点となる家族!!そいつらも呼んだよな!!絶対!!!


 さあ!吐け!!


 家族構成!年齢!住所!!いや、最悪名前だけでいい!!!!吐け!!後はこっちで調べる!!!そうすりゃあそれを使って脅してやるぜ!!!

 

 嫁さんの話を止められないよなぁ?機械風情でもお前には嫁だもんなぁ?べらべらしゃべってくれるのを、止められないよなぁ?そのまま目の前で情報垂れ流しにする、馬鹿な機械を見てるがいいさ!!バーカ!!!


 さあ!!言え!!それですべて完了だ!!吐けよ!!人形!!!てめえの旦那を俺らに売りなああああああ!!!


 そう思っていた俺の耳に、人形は、笑顔で答えた。


「ええ。致しましたわ。私と主人の二人だけで。とても綺麗で楽しかったです。今でも鮮明に覚えています」



 その言葉に、俺は思わず混乱した。


 …へ?


 ふ、二人?


 え、あ、あの?ちょい待て?ううん?


 えーと。


「えっと、あー…その、二人だけで?」


 すると、俺の動揺を知ってか知らずか、アンドロイドは「ええ」と短く答え。


「はい。二人だけです。その時は八重もいなかったので、私の方は私だけですし、主人も親族の方はいらっしゃらなかったので」


「いや、来ないって言うか。俺元々孤児だからさ。親の顔見る前に孤児院で育ったし、その孤児院も、俺が年くって出た後は、少子化の影響で子供が居なくなったからな。孤児院の数を減らす政策で潰れて、今では駐車場かなんかになってるしな。働いてた人は、政府からの斡旋で他の職に就いたし、高齢の人はそのまま退職、孤児院にいた奴らもちゃんと就職してはいたけど、そんなに親しくなかったし、呼ばんかったからな。今じゃあ誰が何してるかも知らんわ。うん」


「…へ?」


 思わず、俺は声を漏らしてしまった。


 うん。


 つまり。


 

 まさかの孤児だったああああああああ!!!



 あかーーーーーーん!!!!



 弱みがないィィィィィ!!!



 脅せないよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!


 マジか!?マジなのか!?本当に!?マジで!?


 ど、どどどどどどどうしよう!?弱みの代表である家族、それが使えないだと!?い、一体どうすれば…。


 も、もちけつ!!まずは情報を整理するんだ!!


 ・家族は無し。


 ・孤児院も今はなし。


 ・関係者全員と疎遠。


 ・大切なモノ、実力が格段に上の警備システム付アンドロイド二体。



 うん。



 どないせいゆうんじゃあああああああああああああああああ!!!!



 無理無理無理無理!!!!


 

 弱みが本気でねええええええええええええええええええええええ!!!!



 あかん。本気でアカン。



 これはダメだ。うん。駄目だ。


 

 この件は、もうダメだ。諦めよう。直ぐ逃げた方がいい。長居は無用だ。


 通報の事も、逃げ切って顔変えるとか海外逃亡すればいいか。うん。


 とりあえず、ここから逃げる。それが先決だな。


 そうと決まれば…。


「あー。それは、うん、その、すまんな。きやすく聞いて良い事じゃあなかった。悪い」


「そうだよ。なに聞いてんだよ馬鹿野郎。早く帰れよ「あなた?」嘘です。全然気にしなくていいですよ。俺自身気にしてないし、それよりそろそろ料理が来るんで食べて行って下さいな」


「本当にすいません。うちの人、少し性格に難がありまして。ご迷惑をおかけします。それに、判沢様がお気になさる必要もありませんよ。主人が言ったように私たちは気にしてませんので。さ、料理もそろそろできますから、食べてください。温まりますよ」


 俺も全く気にしてはいないが、一応謝って話を続ける。


 と、そこに、先ほどの八重と呼ばれたアンドロイドが鍋を持ってきた。


 鍋料理か。寒い日にはいいな。でも、食べてる暇はないんだよ。


「お待たせしました。寒いので鍋をご用意しました。どうぞ、お楽しみください」


「おお!いいね!やっぱ寒い日は鍋だわ」


「ええ。そうですね。では、分けましょうか」


 そう言って全員が鍋に気を取られている隙に。


 俺は!瞬時にケータイを取りだし、サササッと操作し、ある設定を完了させた!


 それは…。


『ブブブ…』


「あ、すいません。何か電話が来たみたいで…あれ?電波少ないな。ここ」


 そう!ザ!一人芝居!!


 正確には、電話が掛かってはいない!俺が唯ケータイを振動させて一人芝居してるだけだ!!


 合コン行って、居づらくなった時に使えば、自然に席を立てるあの技だ!!この技の前には、誰もが絶対に席を立つことを許さざるを得ないのである!!例外など存在しない!!まさに必殺技だ!!(錯乱)


「あ、そうなのですか?それでしたらベランダか、外の通路に出た方が良いでしょうけど、お寒いでしょうし…」


 いや、いいんだよ。むしろその方が好都合。


 さっさと逃げ出すぜ!しかも普通にな!! 


「いえ、どうしても出ないといけないので。じゃあ、ちょっと通路の方に。あ、鍋はどうぞ食べておいてください」


「いえいえ、お待ちしておりますわ。判沢様の為の料理「あーやっぱうめえな!八重ちゃんの鍋は!最高!!」…すいません。本当に。…あなた、少々お話が」


「ははは。では…」


 後ろから勝手に鍋食って、アンドロイドに説教くらっている飛籠をざまあと思いつつ、俺は自然に通路に出て、脱出に成功するのであった。



 ふ!このスムーズさ!!やはり俺は天才だな!自分の才能が怖くなるぜ!!


 そう思ってさっさとこのマンションから出るべく、少し歩いたところにあるエレベーターに乗り込もうと、歩きだした時だ。


『ピリリリリリ』


 俺のケータイが、本当に鳴ったのは。


「あ?」


 何だ?誰だ?と思いつつ、ケータイを開くと、そこには…。


「…デニス?何があったんだ?アイツ」


 配下であるデニスからの電話だった。


 緊急以外ではかけてこない奴からの電話に、何かを感じた俺は素早く電話に出る事にした。


「おい。一体なんだ?どうした?」


 俺が電話に出ると奴は、慌てた様子でしゃべりだした。


「!!つながったか!!良かった!!おい!今どこにいるんだ!!色々やばい事が分かったぞ!!」


 こういう時のデニスは、かなり切羽詰まった状況だ。


 無理して使ってる敬語がないって事は、よほどヤバい状況らしい。


 こういう時こそ、皆の頼れるリーダーが話を聞かないとな。


「落ち着け。一体何があった」


 そうそう。まずは落ち着けよ。で、一体何があったんだ?おい。


 そう聞くと、デニスは。


「コレが落ち着いていられるか!あの通報キ〇ガ〇の言った、例の場所を正確に調べたんだが。あの野郎、それを見越してか珍田のケータイにあるデータを入れてやがった」


「データ?」


 ?いったい何のデータだ?デニスがそれほど慌てる位のデータ?一体…?


 分からなかった俺だが、デニスの次の一言でようやく事態を把握できた。



「あの野郎!俺らが調べる前に、隠れ場所の構造から人員の数に配置、情報機器の種類や配線の数、ターゲットの行動の予測まで、全て予測してやがったんだよ!!そして、問題は…」




「それらが全て!!当たってたって事だ!!!奴はヤバイ!!やばすぎる!!このままじゃあ、俺らも危ないぞ!!」




「このまま生かしておくのは、危険だ!!!」




 飛籠 新人が、予想以上の情報通であり。



 危険すぎる男だという事が。




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