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通報屋・参

前回のあらすじ・ツインゴールデンボールズ



 さて。


 チキンを冒とくした愚かすぎる強盗は成敗したわけだが、これからどうしようか?


 あ、ちなみにあの後どうなったかと言うと、


 ・お兄さん、警察を呼ぶ。


 ・警察来て、強盗タイーホ。でも、正当防衛でもやり過ぎになる場合があるからとちょっと怒られた。


 ・後日、強盗の立件関係で証言なんかの調書が必要という事で警察署に行くことを約束。


 ・お兄さんから、「あ、ありがとうございました!!仇を打ってもらえて…本当にあざっした!!」という、熱烈な感謝の言葉と共に金一封とコーラ、そしてビッグチキンをタダでもらえた。←今ここ。



 うん。そうなんだ。


 ビッグチキン!!再度GET!!


 繰り返す!!ビッグチキン!!GET!!


 一度は失われたチキンを手に、俺の気分はアゲアゲだ!!最近は全く聞かなくなってきたけど、アゲアゲだ!!


 あそこの店員の兄ちゃんは良い奴だ。客が何を求めているかよーくわかってらっしゃる。


 そう言う気配りできる奴、正直、尊敬するね。


 警察官に「見事につぶれてたからもう使い物にならないだろうってさ。流石にちょっとやりすぎんよー」と怒られた俺に対しても、「あれはしょうがない。むしろ、あれくらいやってないとやばかった。それに、本人も殺す気はなかった」って、一番かばってくれたのは彼だったからな。



 実際は殺す気だったんだけどな。はは。



 うん。本当に兄ちゃんには感謝の言葉しかないわ。


 で、だ。


 感謝のしるしに頂いた、このアッツアツのチキンにキンキンのコーラ。


 ふむ。


 「…どこで食べるか、だな」


 それが問題だ。


 強盗事件は解決してても、後処理やらなんやらで結局、露〇孫は利用不可。


 深夜だから他に場所はないし、開いてても持ち込みは人としてどうかと思う。


 しかし、このまま寒空の中で過ごしても、チキンは冷めて、コーラの冷たさが凶器レベルになり台無しだ。


 なら。


 「まあ、たまには歩きながらもいいか」


 帰り道の道中での、ながら食い。


 学生の頃は良く注意されたが、25歳のおっさんなら、まあ許してくれんだろ。ちゃんとゴミはゴミ箱に捨てるし、チキンの食べかす落としなんてもったいないマネする気もなし。


 ちゃんと、味わう。迷惑、かけない。


 なら、特に問題はない…はず。


 …ええい!時間がもったいない!さっさと食おう!!俺の腹はもう限界だ!!



 「あちち、やっぱ揚げたてはあっついな」


 まずは、本命のチキン。


 まだ紙袋に包まれた状態だというのに、それでも熱さが伝わる。


 さすが揚げたて。戦闘力が違う。


 包まれていても、カリッカリに揚げられた、ホットで香辛料の香りと、油のいい匂いが鼻を刺激する。


 紙袋から透かして見える黄金色の衣の色がまたいい。揚げたてでなければ、こうはならない。


 まさに至宝。現代の庶民の宝。


 思わず、涎が出ちまうほどの感覚的暴力。


 深夜に食べると明日が怖いが、それでもやめられない止まれない魔力を持ったスゴイ奴。


 勝てる奴がいるのだろうか?少なくとも、俺は勝てない。いや、そもそも勝つ気がないが。


 負けたっていいじゃないか。そこから得るものはある。例えば…。



 この上ない、至福とか。



『ゴクリ…』



 ああ。もう限界だ。さっさと食っちまおう。


 まずは、チキンを包んでる紙袋からの解放だ。


 ここでの、チキンダイブは死を意味する。もちろん、俺の死だ。心が死ねる。


 失敗は許されない。慎重に。正確に。繊細に。


『ピリッ…ピピピッ…』


 よし。上手く行った。


 そして、お宝の御開帳。


 瞬間。



 「ッッッ!!」


 思わず、反射的に。


 鼻が、空気、香辛料、油、それらすべて。


 一気に吸う。


 体の、奥底まで!!


 「…いい匂いだ」


 この上ない、贅沢。


 食べる前に、匂いで食す。


 香食い。


 モノホンを前にして、香りで達する。


 一見、失礼に見える行為。本番の前に果てる、愚かしい愚行。


 しかし!!



 「…これで、食える」


 

 万全な、状態で。


 香で、匂いで、コンディションを整える。


 体の隅々まで、行き渡して、作り上げる。


 最高の、状態。


 チキンを食う、その準備。


 舌を、チキンッッ!!とするために。


 大切な、儀式。


 必要不可欠な、礼儀。


 そして。


 整えば、自然。



「いただきます…」



 チキンを。いただく。



 いただきます、と。



 チキンの、肉、衣、皮、肉汁、辛さ、旨味、その全てを。



 俺の口に運ぶまで、全ての労力を惜しまず、発揮してくれたすべての人々。



 チキンに関係する、全ての人に。



 感謝をこめて。



 今日、チキンを食う、その喜びを込めて。




 『いただかせて、もらいます』



 

 そう思い、口を開け、



 金の衣、宝に口を付けた。





 その時ッッッッ!!!!

 




 


「そこのお兄さん、ちょっといいでしょうか?」








 灯りのない暗がりから、そう男の声が飛んできた。



 悪いわ貴様ッッッッ!!!!



 圧倒的無礼。



 絶対的邪魔。

 


 食事は、誰にも干渉されぬ神聖なる行為。



 そう習わなかったかッッッ!!!



 と、いつもの俺なら言っていただろう。


 ああ。言わなかったのさ。


 なぜなら。


「ちょっと、お話があるんですけど、いいでしょうか?」


 俺に話しかけてきた男。


 そいつは、俺の背中にあるものを押し当てていた。


 それは、ナニとは言わないが長い物だった。


 それは、ナンていうか、大きく、太い物だった。

 

 それは、男のブツとしては、あまりにも規格外だった。


 コイツ…。



 俺の尻を!!狙ってやがる!!



 …んなわけねーか。うん。 



「…町中でデザートイーグルなんか持ってる奴としゃべる気はねーわ。コンクリートジャングルでハンチングですか?ハンターなんですかー?しかも、サイレンサー付きとかガチじゃねーか。コノヤロー」



 大型の獣を相手にするために作られた、自動拳銃としては最強の威力を持つ銃。


 それが、俺の背中に押し当てられているものの正体である。


 これほど嬉しくない『当ててんのよ』は、ないだろう。


 ・男としては、声的に、年は20代後半、丁寧な言葉使いだが、性格的には粗野…というか苛烈っぽいな。押し当ててる銃の力がかなり強く、荒く感じる。後から必要に駆られて言葉使いを直した可能性があるな。軍隊出身か?


 ・また、デザートイーグルは強力だが、反動も強い。下手したら打った瞬間骨が外れる事もあるという、的にも味方にも強力な武器だ。それを扱うって事は、相当鍛えられているか訓練を積んでいる可能性がある。俺に気付かれずに背後盗るのもうなずける。やはり、何かの経験者だな。


 あ?何でここまでわかるかって?通報屋は伊達じゃねェって事さ。


「ほう。一回も振り向かずに当てますか…。それに、この状況でなお、ふざけられる余裕。いいですね。ムカつくほどに気に入りました」


 それ、気に入ってなくね?


 ムカつくって言っちゃてるよね?ねェ?


「…なんのようだ?命ねらわれる理由は多すぎるし、物騒な連中の知り合い多すぎるから名乗ってくれんと本気で分からんのだが」


 伊達に通報屋してねーからな。そりゃ各方面から狙われてるし、その関係上、どうしても火薬や鉄のにおいがキツい連中とは事構える事が多いんだよ。


 だから、本気で分からん。誰だ?お前。

  

「ふふふ。そうですね。言ってもいいですが、その前に条件があります」

 

 俺の言葉の何が気に入ったのかは分からんが、男は笑っていた。


 その笑い方ヤメロ。なんか、カマッぽいぞ。やめてくれよ!怯えてる俺の尻ホールだっているんだぞ!!本気でやめて。お願いします。


「条件?」


「ええ。話したい事があるんですが、ここではね。なので、場所を移しましょう。その際に、『大人しくついてくる事』、それが条件です。守っていただければ、我々が何者か、貴方に何をしてほしいか、ご説明しましょう」


 ふむ。こういう時はあれだよな。仲間がそこにいるパターンだよな。俺は詳しいんだ。(キリッ!)


 ってか、我々って言ってるしな。複数は確定か。 


 …確実にヤバい方向いってね?このまま行ったら、完全に戻れなくね?まあ、今も戻れないけどさ。実際。


 つまり。


「…拒否権は「あるとお思いで?」デスヨネー」


 うん。知ってた。


 でもね。


 ただ、ただ一個だけお願いがあるんすよ。


「あの、一ついいか?」


「何です?逃がしてくれとかだったら無理ですよ?ふざけた事言ったら撃ち殺しますんで」


 おっかねえなオイ。って、イーグル持ってる時点でそうだわな。


「分かってるよ。そっち関係で言う気はねーし。ただ…」



「チキンは、別に食っても構わんのだろう?」



 今の俺の最優先事項を、言ってみた。



「…はあ?」



 拍子抜けしたような声を聴いて、勝ったと思った俺を小さいと思わないでほしい。




* * *



「…着きました。ここです」


 あれから歩いて十数分後。


 銃を押し当てられての移動という、ストレスマッハな状態での遠足、しかも人目を避けてか随分遠回りだった気もするが、手寝れてる感じもしたな。それでも、まあ、なんとか目的地に着いたようだ。これで少なくとも、歩くことは終わりだな。


それと、歩いてた時にコイツの事をある程度は観察できた。


 ・真っ白な髪。顔つきから見ても、日本人ではない。どうやら、東欧の方の人間のようだ。また、コイツの左目だが、なんか義眼っぽい。よーく見てみないと分からなかったが、暗い場所や明るい場所でも瞳孔に変化が一切ない。作り物の可能性がある。


 ・鍛えられた体つき。服の上からでも分かるくらいに鍛えられた体だ。まあ、デザートイーグル使ってんだから、そりゃ素人なわけないか。しかし、それでも結構鍛えているとみられる。白兵戦も得意かもな。軍関係者の可能性がやはり高い。


 ・左のズボンのポケット。何やら、オイルつーか燃料らしきモノが入った専用ボトルみたいなのが見えた。機械関係の物だろうが、コイツの指には、そういった形跡が見られない。何に使うんだ?判断保留。



 結論・敬語で銃と白兵戦につよい義眼男。謎の燃料持ち。



 といった具合だ。まあ、良く分からなかったって感じだな。これいじょうは、さすがに俺の命がマッハなんで、終了しとこう。


 で、肝心の場所は…。


「…神社か」


 おい。おもっクソ罰当たりじゃねーか。


 人気のない、寂れた神社って密会にはうってつけかもしれねーが、神様はちゃーんとみてっぞ?絶対罰当たるわ。コレ。


「ええ。さ、もう少し行きましょうか。先に言いますと、仲間がいますので」


 ああ。知ってるよ。ついさっき言ったからな。


 さて、じゃあ、できるだけ端を通って行きますか。真中は神様の通り道だからな。


「おや、ご存じでしたか。最近は知らない人も多いんですけどね」


 なんか、感心したように言われた。


 ってか、手前もマナー知ってるなら、こんな所場所に選ぶなよ。歩き方以前に間違ってるよ。


 それにしても、夜の神社って本気でこえーな。


 なんかこう、見られてる感じがするよね。まあ、実際、こいつの仲間に見られてるんだろうけど。


 特に、荒れ果ててる神社の境内にあるでっかい石灯篭、手つかずのままでボウボウになってる雑木林、かなり壊れかけてる社の裏とか、人が隠れるにはもってこいだはな。


 と、思っていると。


「遅かったな」


 突然、声がした。


 ・声的には男。年は、30代、声色から遅いとは言いつつも落ち着いている雰囲気がある。


 声の持ち主は、やっぱり石灯篭から現れた。やっぱ定番か。石灯篭は。


 暗いが夜目には自信あってな。いくつか見て取れた。


 ・体は結構大きい。けれども、筋肉モリモリのおっさんではない。どちらかと言うと、潜入作戦なんかで色々な厳しい環境の中でも生きて帰ってこれそうな、生命力と経験をもった歴戦の猛者のように見える。顔にある無数の傷跡も、それっぽい。傷のつき方から見ると、拷問経験者か?すると、やはり、潜入、工作部員関係者かな?暴力嫁のDVの可能性もあるが。指輪の跡があるが、してないし。


 ・髪は黒だが、日に焼けているみたいだな。そういう環境下に長くいたのかもしれん。無精髭、髭を一々それる程の暇はなかったか。それとも気にしないたちか。それでも、髭の伸びにバラつきがあるな。ある一部だけが綺麗に切れている。それに、手には独特の場所にタコ。ナイフ使いか?


 ・歩き方。やっぱり、足音を立てないようにしつつ、機敏に動けるようなものか。こりゃ、軍関係は確定かね?



 結論・戦場を駆け抜けてきたヤバいおっさん。または、DVの被害者。



「ええ。ちょっと色々ありまして。でも大丈夫です。人目には触れてませんから」



 返答する後ろの男。


 前はガチムチ。後ろは拳銃。はは。薄い本が熱くなりそうだな。そうなってくれた方がまだ対処の使用があるが。


 ほら、『合体』なら、組むじゃん?なら、噛み千切る、ひねりつぶす、突き破る、極めて折る、なんて事もしやすいからな。いざとなれば、肉の盾で人質もOKだ。まあ、撃たれたらデザートイーグルだからな。貫通して死ぬ可能性が高いのが難点か。


「へへへ、そいつが例の男かァ。よろしくなァ!俺はt」


「おい。まだ仲間になるって決まってないんだ。名乗るな馬鹿野郎」


 あ、なんか考え事してたら、雑木林っぽい所から二人組が出てきた。よし、2連勝。次は社だと思う。絶対。


 で、その二人だが、名乗りを上げようとした奴は、


 ・軽口。茶髪で化粧でギャル男を連想させる。軽い様に見えるが、うん。目がヤバいな。完全にこっちを監視兼観察しとる。ああいうのは、やるときはやるタイプだ。用心だな。


 ・しかし、体はそれほど大きくないし、恵まれているとは言いづらい。ってことは、飛び道具かな?ヒラヒラ俺に、手を振っているが、そんなことしていいのかい?俺は気にせず観察しちゃう男なんだぜ?で、冗談は置いといて、見てみると…ああ、タコ、あるな。あそことあそこ、そして、あっちにあるから…こう、物をつまむ、掴むタイプ。投げる時の指の位置と、力関係からすると…ダーツ…か?いや、風車の可能性も微レ存。服の胸ポケットの盛り上がり方からしたらダーツだけど、微レ存ったら微レ存。


 ・体や衣服についている油。インク…いや、機械のオイルか?何かモノづくりもしてる感じ?乾き具合からしてついさっきまで何かしてた感じか。まあ、保留で。指先にある火傷・裂傷の後。なにか、作業をしていた経験ありか。何度もしてるのか、手の皮が厚くなっている。詳細は不明。



 結論・ダーツや風車を投げる事が得意な作業員。作業の詳細は不明。



 次に、その男を止めた奴。


 ・細い体。だらりと下がった黒い前髪。ロンゲ。ついさっき見た様な黒一色に統一した服装。悪い顔色。なんかこう、柳の木の下にいたら、ガチで幽霊っぽく見える。しかし、ヘアスタイルや恰好とは裏腹に、体の芯はブレが無く、バランス感覚はよさそうかもしれん。でも、影は薄そう。


 ・発達した手。全体の幽鬼のようなイメージとは違って、アンバランスに手が太く、厚い。手に付いた跡を見るに、糸…ワイヤーか、それに準する何かを扱う事が多いようだ。罠専か?さすがに、糸で人を殺すことはないだろう…ないよね?

 

 ・警戒。どうも俺に対して警戒しているようだ。まあ、俺以外の奴らは全員そうなんだけどさ。その中でも特に、こいつは警戒意識が強いらしい。軽い男とは違って、なんかこう、質量のありそうな視線をむけられている。やめてください。そっちのけはありません。はい。



 結論・糸系の扱いに長ける幽霊っぽい男。ウホッの可能性高し。



 なんでだろう。違う意味で心配になってきたわ。


 俺、大丈夫だよね?


「おう、警戒してても始まらんだろ。そろそろ話し合いと行こうか」


 皆が俺を見つめていた時、そう、この場にいない奴が言った。


 さあ、来い!!社だろ!!お前、社にいるんだろ!!出て来いよ!!社から出て来いよォォォ!!


「初めましてだな。まあ、くつろげってのは無理だろうが、良い話をしようぜ。お互いにな」


 な…んだ…と?


 あ、ありえねェ!!こ、この男今!!


 今!!鳥居の方から!!俺らが通ってきた鳥居の方から来やがった!!つまり!!


「いやァ、何したり顔でいってんだァ?一番最後に着やがったくせにィ」


「ええ。遅いですよ?本当に。何してんですか。リーダーのくせに」


「はぁ…」


「…」


 うん。遅れてきたみてーだな。幽霊男以外、皆呆れて…あ、幽霊男は馬鹿にした眼で見てるわ。つまり全員呆れてる。もちろん、俺もね。


「いやいやいや!ちょ、ちょっと待てよ!!なんか冷たくない!?俺に対して!?」


「冷たいんじゃありません。当然の反応です。社会人として、一人の大人として遅れるってどういう事ですか。それなら最低限連絡しなさい」


「そうっすよォ。俺らには時間少しでも過ぎたら怒るくせにィ。こんなのがリーダーとかやってられねーっすわァ」


「…そろそろ、交代の時間かな」


「ひ、ひでェぞ!!お前ら!!」


 おーう。なんか、尊敬全然されてないな。


 いいぞ。もっとやれ。


「…遅れた事については、デニス。お前も人の事は…まあいいか。リーダーだし」


 いいのか。オイ。


 そして、銃のヤローはデニスね。情報サンクス。


「ええい!!静かにしろ!!本題に入るぞ!!」


 お。それでもやっぱりリーダーなんだな。言えば、皆すぐにだまったし。不満ありまくりな顔だけど。


 さて。この男は。


 ・髪は黒系。顔は普通。年は2~30。どこにでもいる奴ってのがしっくりくる。どっかに紛れ込むには適してるな。目立たないってのは、それだけで有利。立派な武器だ。煙草の匂いが無ければもっと良かった思う。

 

 ・手のタコ。あの手のタコの出来具合は、近接武器の使用によるものだ。手の皮がかなり厚い。昔から接近戦って所か?獲物は刀剣類、またはそれと同じくらいの長さの鈍器かな。重心や足の動きがそっち系に一番近いし。そして、手足が意図的に鍛えられている。傷の具合だと、瓦割や、瓶きりとかかな?打ち組み術の心得がありそうだ。


 ・用心深い。遅れたのは、どうも俺らをもっと後ろから尾行していたからだと思う。少なくともここに俺らが入ってからは鳥居よりも外でスタンバッてたのは間違いない。靴の裏にある煙草を踏み潰して消した跡が何度もあるのが証拠だ。火が完全に消えて無くて、ちょっと焦げてるぞ。携帯灰皿使え。もしくは禁煙しろ。まあ、俺がおかしな動きをしないか見てたんだろうな。おいそれとは表には出てこないか。用心深い。



 結論・刀剣類や格闘の心得のあるフツメン。威厳のないリーダー。タバコやめろ。


 うん。こんな所か。


 まとめると。


 ・射撃男…一番初めに会った奴。外国人。デザートイーグル。白兵戦強そう。謎燃料。電車であった女を助けられなかったことから、射撃の腕を磨き、敬語もマスターして再来日した隠れオタク。


 ・おっさん…二番目に会った男。石灯篭から登場。凄腕の傭兵的ナイフ使い。奥さんからの苛烈なDVに耐えきれず、最近離婚した。今は日本という新天地で頑張っている。


 ・チャラ男…三番目に会った男。雑木林っぽい所から来た。風車忍者的存在。手先も器用。忍者の里を追われてやってきた元忍者。〇っと〇くんがイ〇ドで再ブレイクしたのを知ってダーツの道へと入る。


 ・幽霊…四番目にあった幽霊。死してなお顔色は悪い。糸を使った呪縛殺が必殺技。最近の敵は、都市伝説で生まれてくる新しい妖怪。


 ・リーダー(笑)…残念なリーダー(笑)。


 と言う感じだな。うん。


 ちなみに、位置的には、俺の前にリーダー(笑)。


 左におっさん。右にチャラ男とへっちゃら幽霊。


 後に射撃男の順でお送りしまーす。


「さて、君に話があるんだよ。飛籠さん」


 って、考えてたらいつの間にか俺の目の前に来ていたっと、え。


 ちょっと待て。


「…なんで、俺の名前を?」


 うん。俺名乗ってないけど?後、引きこもりニートとか言ったら潰すぞ。潰すぞ!ナニを。


「ああ。そうだったな。何、簡単な話だ。元々、といっても1ヵ月ほど前からあんたの事を監視してた。ただそれだけの事さ」


 …はァ!?


 お、俺の事を監視していた!?


 ま、まさか!!


「あ、言っとくけどアッー!な意味はねーから。ただ単純に、どれほどの情報収集能力持ってるか見たかっただけだし」


 あそっすか。ってか、ネタ潰しやめーろーよー。全く、空気読めねーなー。


 だから、リーダー(笑)なんだよ。


「で、つまり、俺に何をしてほしいんだ?」


 ちょっといらっとしたから早く本題は入れやと暗に催促した。


「ああ。そうだな。時間ももったいないし、サクサクいこう。実はな…」



「俺達、執行人なんだ」


 


 …は?




「それでな、悪人に罰を、裁きを執行するために、情報が欲しい」



 …え、ちょっと待てよ。


 まさか、おい、まさか。




「だから、俺達に協力しろ。通報屋・飛籠 新人さんよ。無理なら、死んでもらうだけだ」




 わーお。



 とんでもなく、ヤバい案件だったぜ。コレ。



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