2匹の虫
グレンとデビルアントは、ほぼ同時に落とし穴に吸い込まれてしまった!
『ヤバい!』
重量のあるデビルアントが勢いをつけ先に転がり落ち、そのあとをグレンが回転しながら落ちていく・・。
デビルアントは、あっという間に穴の底まで転がり落ち、仰向けに手足をバタバタさせている。
そのあとを転がるグレン・・グレンは辛うじて砂をつかみ、穴の途中で落下をまぬがれていた!
「グレン!」
しかし、グレンの体はずるずると穴のそこへと滑っていく。底には体制を取り戻したデビルアントが待ちかまえている。
「助けてー!」
グレンの体はどんどんと底の方へ・・。
デビルアントの目がギラリと光った!
そして、勢いをつけて跳びかかる態勢だ!
『進、魔法だ!』ルイは叫んだ。
「プリプリ・パラパラ・えい!」
デビルアントがジャンプ!
「ひぇ~」びびるグレン。
ガブッ!
デビルアントが、大きな牙で噛みついいているのは、脱げたグレンの靴だけだった・・。
魔法の力で地上に戻ったグレン。
穴をのぞくと、必死に這い上がろうとするデビルアントの姿があった。しかし、つかんでもつかんでも崩れてしまうサラサラの砂は、デビルアントの穴からの脱出を許さなかった!
そこにラルフたちもやって来た。
巨大な穴の底でもがくデビルアント。
「アリ地獄とはよく言ったものだな!」
「平じいが考えたんだよ!」と進。
「さすが平じいだな」とシンジ。
「年の功ってやつか!」とボス。
「おいコラ!誰かのことを忘れてないか?」
「ん?」
「ん?じゃない!俺のことは・・」
グレンの必死の訴え。
グラグラグラ~!
「おっ、そろそろここを脱出しないと危ないな!」とシンジ。
「そうだな」
「急ぎましょう!」
「あれ?・・俺の活躍は誰も誉めてくれないのかあ~」ポツリとグレン。
「危険のないところまで移動だ!」
「よし、飛び立つぞ!」
ジャンの体の中ですっかり落ち込んでいるグレン。
「グレン、どうしたんだ?」とボス。
「元気がないみたいだが」と平吉。
「さすがに1000メートル走は疲れたでしょう!」とジョン。
「ゆっくり休んでください」とシンシア。
「・・それだけか?」
「えっ?」
「ジャック星がキングブラックフォールにのみ込まれていくぞ!」
ラルフの言葉がジャンの体の中まで響いてきた。
「いよいよね」とリンサ。
「ああ」
「グレン、ジャック星の最期だ・・ん?グレン・・」マックの呼び掛けに反応しないグレン。
『どうやらそれどころではないみたいだぞ!』
「どういうこと?」
「すねてるんだ!」とボス。
「うるさい!」
そしてジャック星は、ゆっくりとゆっくりと、いや一瞬にしてキングブラックフォールにのみ込まれていった!
「ひとつの星の一生がこうも簡単に終わってしまうのかと思うと、人間の一生なんてたかが知れてるんじゃなあ」としみじみ言う平吉。
「だから美しいんだ!」とボス。
「あんたには似合わない言葉だね・・」
「でも、本当にそうだと思う」とシンシア。
「うん、シンシアが言うとさまになる!」
「さあ、いったんカエリコに戻り、地球にみんなを迎えに行くぞ!」
そして・・。
カエリコに二つの星の人々による共存が始まった。カエリコ人とジャック星人の・・!
お互いを認め合い、許し合い、助け合う!そんな精神でいつまでも美しい星であってほしい。
しかし、人とは愚かな生き物だ!みにくい争いが起こらないとも限らない。でも、そんなことをひとつひとつ乗り越えて成長していくのかもしれないね・・。
「ん?・・ハクショ~ン」
「あなた大丈夫?」と夏子。
「なんだか急に鼻がむずむずして・・」
「パパ、アレルギーじゃない?」と進。
その時、シンジの口から2匹の虫が吐き出されていた!
姿かたちはルイにそっくり。その2匹の虫は、ずーとシンジの体の中から、ルイの活躍を見守っていたのだった・・。
そんな2匹の存在を今はまだ誰も知らない・・。