羽根
「ここだよ平じい!」
「わー広いね!」とジャン。
「砂はどうだ?サラサラかい」
進とジャンとロックは、砂を手に取って確かめてみた。
「ほら平じい、こんなにサラサラだよ!」とロック。
「うん、これは上質の砂だな」
『どのくらいの穴を掘るつもりだい?』
「あの化け物の大きさが5メートルとしてだな・・直径100メートルは必要かな!」
『直径100メートル!?』
デビルアントの体に少しずつ変化があらわれていた。体温は上がり、鼓動も徐々に速まり、手足の動く領域も大きくなっていた。
定期的にグレンがのぞきに来ていたが、その時だけ体を冬眠状態に戻していたのだった。
「あと30時間よ!」とリンサ。
「グレン!」
「大丈夫だ!こっちも変化なしだ」
「あと1日と6時間、なんとかこのまま行けそうだ」とマック。
「だといいけどな!」とミラー。
「でもそれは、このジャック星の消滅のカウントダウンでもあるのよね・・」リンサは少し寂しそうだ。
『平じい、もっとスピードアップしないと間に合わないぞ!』
「まだ全然ダメだね」とジャン。
「掘っても掘っても崩れてきちゃうから、なかなか難しいよ!」進。
「でも頑張って掘らないと!」とロック。
「あっ!」
「うん・・」
その時シンジとラルフは、ほぼ同時にある気配を感じ取っていた!デビルアントの鼓動だ。
「じいさん、とうだい?落とし穴のほうは・・」とボス。
「無駄口を言う暇があったらお前も手伝え!」
「そうよボス!私もジョンも手伝ってるんだから」とシンシア。
「私はそういう力仕事は苦手だ!」
「つべこべ言ってないで手伝え!ほれ・・」
平吉はボスにスコップを手渡した。
「だから・・ちぇ!」
ボスは全然やる気がでない・・。
『こら!もっと腰をいれて掘らんか」
「じいさん、これじゃあ間に合わないって!まだ足首までしか掘れてないぞ・・じいさん、なんで魔法を使わないんだ?」
「ん?・・魔法・・その手があったか!」と平吉。
「えっ!気づかなかったのか・・」
シンジとラルフは、デビルアントの入ったカプセルに近づいて行った。
「兄さん、やつの鼓動が止まったぞ!」
「ああ、気づかれないようにコントロールしてるんだろう」
「そんなことまで出来るのか!?」
「それにやつの背中を見てみろ!」
「ん?・・あれは?」
「羽根だ!まだ小さくて使い物にはならないが、いずれ空を自由に飛び回るだろう」
「そんなことになったら、俺たちの唯一の逃げ場所がなくなってしまう!」
「今なお進化を続けている証拠だ・・」
「あと24時間を切ったわ!」とリンサ。
「ここまでくればひとまず安心だな!」とグレン。
「・・どうやらそうもいかないらしいぞ!」とシンジ。
「やつは動き始めている!」とラルフ。
「なんだと?!」
「今も聞こえる!やつの鼓動が・・」
「おそらく24時間はもたないだろう」
「なんですって!」
「平じい、魔法使ってよかったの?」
「ん?・・」
「だったら早く言ってくれればよかったのに!」とロック。
「平じいはなにも言わないから、てっきり魔法は使っちゃダメなんだと思ってたよ」と進。
「魔法はあくまでも最後の手段だからな!」
「忘れてたんだろう!魔法のこと」とジョン。
「うっ・・お前たちだってそうじゃろうが」
「まあ・・そんなところだけど」
「進、ジャン、ロック、直径100メートル、深さ100メートル。すりばち状に穴を掘ってくれ!」
「うん、わかったよ!」
「まかせておいて!」
「見ててよ。プリプリ・パラパラ・えい!」
「・・どう?平じい」と進。
「うん完璧だ!
見事!デカいアリ地獄の完成だ。
「あとは、あのデビルアントが動き出したらここにおびき寄せるだけだ!」と平吉。
「でも、ここまで来てくれるかな?」とジョン。
「大丈夫じゃ!策はある」
「どんな策?」とシンシア。
「おとり大作戦じゃ!」
その時グレンは、大きなくしゃみをひとつ!
「・・またアレルギーでも出たかあ?!」