やっぱり怒られた
「リンサ、ジャック星がキングブラックフォールにのみ込まれてしまうまで、あとどのくらいなんだ?」とシンジ。
「あと3日!正確には再計算が必要だけど」
「あと3日か・・」
「その3日間、あの化け物が冬眠状態でいてくれればいいが」とラルフ。
「望みはあるよな?!グレン」とボス。
「ああ、3日間なら大丈夫だ!」
「根拠はあるのか?」とラルフ。
「えっ!」
「仮にも科学者たるものが、根拠もない発言をしてはいけないよ」とボス。
「うっ・・」
ラルフはこの時、一抹の不安をおぼえていた。
「とりあえず、あの化け物をジャック星に運んでしまおう」とシンジ。
「そうだな」
そしてジャック星・・。
「リンサ、早速だが例の再計算を頼む!正確な日時が知りたい」
「わかったわ」
「グレン、化け物の様子はどうだ?変化はないか」
「ああ、体温も低めだし、まだ活動を始めることはない!」
ジャック星に運ばれたデビルアントは、無酸素状態の大型カプセルに閉じ込められている。
「うわあ!平じい見て。カッコいい飛行機があんなにいっぱい並んでるよ」と進。
「ほお!ちょっと操縦してみるか」
「えっ!平じい、飛行機乗れるの?」
「若い頃は大空を飛び回っておったよ!」
「へー、すごいなあ」
「ちょっとやってみるか・・」
「進、誰も見てないか?」
「うん、大丈夫!」
「乗り込むぞ!」
『こら!平じい、なにやってる』
進の耳からルイが顔を出した。
「ルイ!いたのか」と進。
「ちょいと腕試しだ!」
『シンジに怒られても知らないからな!』
「平気、平気」
『超楽観的!』
「よし、エンジン始動!」
「おー!」
「進、しっかりつかまってろよ!」
「うん!」
「発進!」
「兄さん!あれ」
「ステルス機が始動したぞ!」
「グレン、あれはいったい誰が操縦してるんだ?」
「ん?マックもミラーもここにいるぞ・・」
「誰かまだこの星に残っていたのかしら?」とリンサ。
「そんなはずはない!確認したんだからな」
「じゃあ誰が・・」
「シンジ、あんたのじいさんと息子の姿が見当たらないぞ!」とボス。
「ん?・・まさか平じい・・」
平吉の操縦するステルス機は見事大空に舞い上がり、アクロバットな飛行を展開していた。
「なかなかやるなあ!じいさん」
「カッコいいね!」とロック。
「平じいにあんな特技があったとはな!」とジョン。
「ホント、ひとはわからないものね!」とシンシア。
「そろそろ着陸しないとヤバイぞ」とグレン。
「どうしてヤバイんだ?」
「あのステルス機にはほとんど燃料が入っていない!」
「本当か!?」
「気持ちいいねー!」
「そうだろう!」
『平じい、そこのメーターは何だ?さっきから赤く点滅してるけど』
「ん?・・E・・げっ!燃料が空じゃあ!!」
「えっ!」
『平じい、エンジン音が止まったぞ!』
「ヤバイ、脱出だ!」
「でもどうやって・・」
「普通こういうものには脱出装置が着いてるもんだがな?!」
『平じい、急降下し始めたぞ!』
「わかってる!」
『ああーもうダメだ!』
「よーし、プリプリ・パラパラ・えい!」
進のおかげで命は助かった!
「進、ありがとう・・」
「へへぇ~」
「ふう、危ない危ない!」とジョン。
「ヒヤヒヤさせるぜあのじいさん!」
「平じい!」とシンジ。
「すまん」
『やっぱり怒られた・・』
「再計算が終わったわ。あと60時間ジャストよ!」
「よし、わかった!」
「こっちも異常なしだ!」とグレン。
そう言ってグレンが化け物に背中を向けたとき、その左右の触覚がかすかに動き、左右の後ろ足もわずかに振るえていた。グレンの予想を上回るスピードで、デビルアントは回復に向かっていたのだ!
「もしもの時のために、やはり対策を考えておいた方がいいな!」とシンジ。
「相手は化け物だ!60時間もじっとしている保証はないからな!」
『それじゃあ、グレンの顔が丸つぶれじゃんか!?』
「いいんだ。ラルフたちの言う通りだ。もう私の想像力では、デビルアントの生態を把握できない」
「しかし、対策のヒントぐらい思いつくじゃろう?」と平吉。
「・・皆無だ!」
「あれ?こりゃあ相当重症だな・・ラルフの一言がよほどこたえたらしい」
「じいさん、今回もなにかいいアイディアを出してくれよ!」とボス。
「たまにはあんたが出してみろ!科学の力とやらでな」
「ここには研究施設がないからなあ・・」
「あるじゃないか!グレンたちの立派なものが」
「他人のものを勝手には・・」
「構わないわよ!自由に使ってもらっても・・」とリンサ。
「ほらみろ!」
「うっ」
「・・ところで、アリの天敵って何だ?」と平吉。
「なんだ・・?」
「アリ地獄だよね!平じい」と進。
「うん、大正解だ!進の方が天才だな・・」
「しかし、あんな化け物を食べるアリ地獄なんているわけないだろうに!」
「砂地にデカい穴を掘るだけでも十分効果はあるぞ!」
「平じい、大きな穴を掘ればいいの?」
「ああそうとも。なるべくサラサラした砂の場所が理想だがな・・」
「僕たちも手伝うよ!」とジャンとロック。
「頼むぞ!」
「グレン、この辺りに大きな砂地はないかね?」
「それだったら、この1キロ先にデカい砂丘があるぞ!」
「そうか、ありがとうよ」
「いったいそこで何をするんだい?」
「落とし穴じゃ!」
「・・・?」