ただいま冬眠中
「あっ!目を開けた」とジャン。
「ジャン、ロック、用心しろよ!」とラルフ。
しかし、デビルアントの目は、あの獲物を前にしたときのそれとは明らかに違っていた。
「なんだか様子がおかしいな」とシンジ。
「凶暴な素振りが全くない」
「グレン、聞こえるか!?」
ラルフは腹の中のグレンに呼び掛けた。
「ん?・・どうした」
「デビルアントが目覚めたんだが様子が変だ」
「どんなふうに変なんだ?」
「目だけは開いてるんだがまるで仮死状態だ!」
「外は当然大気は無いんだよな。普通なら生き延びることなど不可能だ。しかし、デビルアントは生命を維持してる!これも自己成長の産物かもしれん 」
「大気がなくても生きられる体に進化したというのか?」
「ああ、しかしさすがに地上のような生活は不可能。つまり、体の代謝を極限まで抑えて、生命だけを維持している。いわば冬眠状態なのかもしれない!」
「冬眠状態・・」
「だがそれも今だけの話だ!」
「どういうことだ?」
「私の仕組んだ自己破壊のプログラムでさえあっさりと書き換えるほど賢いやつだ!そのうちこの大気のない世界でも対応する体を造り出してしまうさ」
「このままだと危険だと言いたいのか?」
「そうだ!自分の命を守るすべを知っている・・」
「何をガタガタ騒いでるんだ?」と平吉。
「デビルアントがまた生き返っちゃうんだって!」と進。
「大気が無くても大丈夫だなんて、まるでサイボーグだな!」とボス。
「平じい、何かいい案ない?」
「そうだよじいさん!100年も生きてるんだろう」
「100歳、100歳って、あんたはそれしか言わん」
「だって事実だろうが・・」
「間違ってる!私は101歳だ」
「ならなおさらだ!何かいい知恵はないのか?」
「・・グレンたちのなんとか星は、なぜなくなってしまうんじゃ?」
「えっ?・・それはブラックフォールにのみ込まれてしまうからだろう」
「ブラックフォールとは、星さえものみ込んでしまうのか!」
「ああ、重力が半端じゃないからな!」
「あっ!わかったよ平じい」と突然進は言った。
「何がわかったんだ?」とボス。
「あのデビルアントもブラックフォールにのみ込ませちゃえばいいんだよ!」
「おっ進、よくわかったな!」
「まーね」
「なるほどね!そりゃあいい」
「ジャン、今の話聞こえたかい?」
「聞こえた!今パパたちに話したところ・・」
「いい考えだが、我々がそのキングブラックフォールに近づきすぎるのは危険だな」とシンジ。
「ああ、のみ込まれたら最期だ!」とラルフ。
「ジャック星に奴をつれて行き、そこから逃げ出せないようにできればいいんだが・・」
「そうなると、ジャック星の人々の避難も考えないといけない」
「カエリコしかないな」
「仕方あるまい。ただし武器の持ち込みはお断りだ!」
「グレン、この化け物が動き出せるようになるのはいつ頃だ?」とラルフ。
「かいもく見当もつかんが、1~2日ってことはないだろう!もっとかかるはずだ」
「じゃあ、その間にジャック星の人々をカエリコに避難させるぞ!一時的にな」
「そればありがたい」
「ただしわかってるな!」
「体ひとつってことだろう!」
「そうだ!」
そしてジャック星へ・・。
グレンの呼び掛けで、ジャック星の人々は広場に集められた。持ち出せるのは生活に最低限必要なものだけだ!
「グレン、この星で行われた研究成果も、武器もステルス機もすべて諦めてもらう」
「うっ・・住民の命には代えられん!」
「よく言ってくれた」
「あんたは真のリーダーだよ!命さえあれば、また何でも始められる」と平吉。
「ルイ!」
ルイはラルフと共に上空へ上がった。
『いくよ!・・えい!』
そして、一瞬にして人々の姿は・・消えた?!
「よし、カエリコに向けて出発だ!」
「おー!」