嬉しそうだったからな
その時デビルアントの巨大な牙が鋭く光った。
「あーっ」グレンはあまりの恐怖に目をつぶった。
「グレン!・・ん?」ミラーは不思議な光景を目にしている。
「あっ?!」
「うそ?・・デビルアントが・・踊ってる!」とマック。
「グレン、早く逃げてー!」とリンサ。
リンサの声で、恐怖の中グレンはゆっくりと目を開けたた。
「えっ?」
事態がのみ込めないまま、グレンは慌ててその場を離れた。
「だいぶ効いてるみたいだぞ!」とラルフ。
デビルアントの腹の中では、小人の戦士たちが大暴れだ!
やがてデビルアントは踊るのをやめ、爆睡に入った。
「やった!成功だ」とグレン。
「ラルフたちがやってくれたのね!」とリンサ。
『動きが止まった!眠りに入ったんだ』
「早くこんなところ抜け出して、とっととこいつを宇宙空間に放り出しちゃおうぜ!」とボス。
「よし、脱出するぞ」
「あっ、ラルフたちが戻ってきたわ」
「うまくいったな!」とラルフ。
「グレンが大活躍してくれたんだ!」とマック。
「勇気ある行動に感謝するよ!」
「ちぇ・・」
「私とラルフでこの化け物を担ぎ上げる。ジャンとロックは魔法で援護してくれ」とシンジ。
「僕は宇宙空間だと役立たずだな・・」とつまらなそうに言う進。
「そんなことないよ。僕の体にはいって、そこから援護して!」とジャン。
「わかったよ!」
「制限時間は5時間だ。その間にできるだけ遠くにこいつを運ぶんだ!・・グレン、お前たちも一緒に来てくれ」
「えっ!私たちもか」
「嫌なのか!?」
「・・お供します」
「とりゃー!」ラルフとシンジの怪力で、巨大アントが持ち上げられた。
「ジャン、ロック、進、頼むぞ」とラルフ。
「進、いつものやつを頼む!」とジャン。
「あれがないと調子でないもんな!」とロック。
「よーし、プリプリ・パラパラ・えい!」
進の呪文を合図に、ラルフとシンジは空に飛び上がった。
進はジャンのお腹の中で必死にジャンの魔法の後押しをしている。その隣では、進の男としての成長に目を細める平吉がいた。
こうして進の顔をあらためて見てみると、たくましささえ伝わってくる。いつの間にこんなに成長したんだろう。夏子もここにいたら、自分の息子を誇らしく思うことだろう・・。
「じいさん、何考えてるんだ?」とボス。
「あんた科学者だろう!そんなこともわからんのか」
「科学者、科学者って、じいさん、科学者にだっていっぱいわからないこともあるんだよ」
「じゃあ、科学者失格だな!」
「何でそうなるんだ?!」
「昔から決まってる!科学者とは天才だとな」
「その天才だって、他人の心の中まではわからないだろう!」
「・・・」
「じいさん、何も言わないのか?」
「時間の無駄だ!」
「ちぇ!・・あのかわいいひ孫のことを考えてたんだろう!」
「なぜだ?」
「表情が嬉しそうだったからな・・」
「ボス、やはりあんたは天才科学者だ!」
「そりゃどうも・・」
あのじいさんの顔を見れば、誰だって想像つくんだけどな。
「リンサさん!」
「さんなんて要らないわよ!」
「ジャック星にはどのくらいの人がいるの?」とシンシア。
「10万人ほどの小さな星よ」
「このままだと住むところを失ってしまうんでしょ」
「ええ」
「カエリコ以外に移住できそうな星はなかったの?」
「あったとしたら地球かな・・」
「えっ!地球」
「やっぱり驚くよね!そんなこと言ったら」
「・・・」
「地球は美しい星だわ。でも、もし私たちのような者が攻めてきたら、地球人だって戦うでしょう。人口が多い分犠牲者も増えるわ。それに地球人には地球外に逃げるすべはないでしょう。その点カエリコの人たちにはその能力があった」
「それでカエリコ選んだってこと!?」
「うん!それにカエリコも美しい星だから・・」
「そうね」
「グレン、あなたたちジャック星人は、高い科学力を持ってるみたいだね!あのIC チップといい、この化け物といい」とジョン。
「しかし、ブラックフォールの威力にはかなわんよ!」
「なぜジャック星がブラックフォールの重力圏内に?」
「キングブラックフォールが急激に膨張を始め、ジャック星の軌道にまでその影響が及ぶようになってしまったんだ。理由は謎だ」
「宇宙の力は絶大だからな・・」
「兄さん、そろそろだ!」
「うん」
「もうとっくに大気圏外だがまだ生きてるな」
「とりあえずここで解放して様子を見よう」