グレンはボタンに手をかけた
「もう少しでジャック星だよ!」
「ジャン、キングブラックフォールも近くにあるはずだ。用心しろよ」
「うん」
「よし、離陸しよう!」とグレン。
「了解!」
「カエリコに向かって出発!」
「あれだよ。あの星がジャック星だ!」
「よし、スピードを上げるぞ!」
こうして、ジャンたちがジャック星に到着するのよりも早く、グレンたちの乗ったステルス機はジャック星を後にしたのだった。
『進、地下2階だ!急ごう』
「うん」
進たちは小人のまま隙間をぬい、地下2階に向かった。
「あっ!」
「おっ!ここには確か私の呪文で開いた扉があったはずじゃが・・」と平吉。
「あっ!奥の扉もないよ」
「うん、進と僕で開けたやつだよね」とジャン。
「兄さん、まさか・・」
「うん・・」
「ここにあったガラスの扉もないぞ」と平吉。
「何もない!空っぽだ」とボス。
「もうデビルアントを持ち出した後だっていうこと!?」とシンシア。
「ラルフ、シンジ、早くカエリコに向かわないとまずいことになるぞ!」
「くそっ!」
「ラルフ!急いでカエリコに飛ぼう」
「ああ。みんな私の体のなかに!」
「うん!」
そしてラルフとシンジは、マッハ20でカエリコに向かって飛んだ。
「間に合ってくれー・・」
「見えてきたぞー!カエリコだ」とマック。
「うん!いつみても美しい星だね」とミラー。
「グレン、カエリコの住民には知らせるの?これから起こることを」
「1日早めさせてもらったんだ。10分だけ猶予をやろう」
「10分は短すぎないかしら?」
「十分だ!」
「そう・・」
「カエリコの地下には強固な要塞がある。敵に気づけば、そこに逃げ込み、しばらくは持ちこたえられるはずだが!」とラルフ。
「しかし、デビルアントの威力がどれだけのものなのか我々には未知数だ!持ちこたえる時間が1時間なのか30分なのか、あるいはそれよりも短いのか・・」とシンジ。
「よし、この辺でいいだろう。デビルアントの容器を投下しよう!」
「はい、わかりました」
ミラーは投下口の扉を開けた。
「投下」
「投下します」
そして投下のボタンが押された。
地面に落ちた容器は、なん回転もしてようやく止まった。
「カエリコの諸君、なぜお前たちはここを離れなかったのだ!?そんなに命を無駄にするものではない。今、凶暴かつ猛毒を持ったデビルアントの容器を地面に投下した。あと10分だけ待ってやろう。その間にこの星を後にするんだ。10分後にはデビルアントは開放され、お前たちに攻撃を加える。わかったか!ではカウントを始めるぞ・・」
太いグレンの声がカエリコに響きわたった。
『進たち!魔法の調子はどうだい?』
「完璧さ!ね、進、ジャン」ロックは答えた。
『そうか、それは頼もしいな』
「油断は禁物だぞ!」と平吉。
「なにしろ未知の怪物だからな」とボス。
「私たちはデビルアントを見たことがないんですもの!ちょっと不安よね」とシンシア。
「できればこんな戦いは避けたかったけどな!」とジョン。
「本当ね・・」
「まもなくカエリコだ!みんな無事でいてくれればいいが」
「そうだな」
「5分経過しました!」とミラー。
「やはり動く者はいないか」とグレン。
「みんなカエリコが好きなのね・・」リンサがぽつりと言った。
「どうだ様子は?」とシンジ。
「変わった様子はないみたいだが」
「よし、降りて確かめるか!」
「・・ん?」
「どうした?ラルフ」
「ほらあそこ!見かけない容器が転がってる」
ラルフはそれを指差して言った。
「グレン、何者かが容器に近づいて行くわ」
「なに!」
「あいつは確かカエリコの・・ラルフとかいうやつだ!」とマック。
「ラルフ!?」
「あっ、覚えてるわ。最初にこのカエリコを偵察したときに、みんなからそう呼ばれてた!おそらくこのカエリコの英雄的存在なんだわ」とリンサ。
「うん、それともう一人いるな」
「こっちは初めて見る顔ね」
「注意深く見守ってくれ!」とグレン。
「わかりました」
「もしや・・ラルフ!簡単に近づくのは危険かもしれないぞ」
「そうだな!しかしこの容器、見たところ完全に密封されてるみたいだ」
「となると、まだこの中にデビルアントがいる可能性があるぞ!」
「空から放り投げたんだろうか・・」
そう言って、ラルフは頭上に目をやった。
しかし、そこには何も飛んでいなかった・・
「魔法で焼き払ってしまおうか!」とシンジ。
「跡形もなく焼いてしまえば、いくらデビルアントでも生きてはいられまい!」
「よーし、みてろよ!」
シンジは容器に向かって火炎放射をお見舞いした!
「なに!」
「兄さんの強力な魔法でもびくともしないぞ!」
「あの男、どうやら魔法を使うらしいな!」とミラー。
「ああ、でも傷ひとつ付きやしないさ!」とマック。
「あの容器は、あんな子供だましの魔法など効きはしないよ!」
「グレン、あと1分です」とリンサ。
「よし」グレンはボタンに手をかけた。