今頃頬っぺを叩いても遅いよ
進とルイは、ママの髪の毛でできたジャングルにいた。
「なんかいい匂いだなあ!」
『うん、リンスの匂いだね。さっきお風呂で髪洗ってたろう』
「リンスの匂いかあ・・」
進めど進めど、ジャングルは続く。
「ルイ、このいっぱいある白い岩は何なの?」あっちもこっちもゴロゴロしてるよ。
『それはフケ』
「うぇ!フケ・・」
髪をしっかり洗ってない証拠だな。よし僕がやっつけてやるか!
「うぉー!」進はフケの岩に跳び蹴りをおみまいした。
「あれ・・うわールイ助けてー!」
足がフケに突き刺さり抜けなくなってしまったのだ。
『何してるんだ進?』
「何って足がぬけなくなっちゃったの」
『世話が焼けるな』
ぶつぶつ言いながら、ルイは僕を助けてくれた。
「ふうっ」
「髪の毛って、いったい何本くらいあるんだ?」
『10万本』
「10万本!」
『そう、この前数えたから・・』
「そうなんだ・・え、数えたの!」
『進、たまに大きな穴があいてるから気を付けて!』
「大きな穴が?」
『髪が抜けたあとの毛穴』
・・「あーっ」進はその毛穴でコケた!
『ありゃー遅かったか・・』
「痛っ・・」
息つく間もなく、進を次の試練が襲ってきた。毛穴から溢れ出たその水は、洪水となって進に向かってきた!
「ギャー」
あっという間に進はびしょ濡れになった。
『それは汗だ!』
『ピカッ!』進のヘッドライトに何かが光った。
なんだろう?
近づくと、そこには光輝く白い木が・・。
あっ、あっちにもある。
『白髪だよ。進のママって何歳だっけ?』
「えーと、35才かな」
『じゃあ白髪も仕方ないか!』
これじゃあ、からだの中を探検する前に疲れちゃうよ!そんなことを思っていたら、今度は何やら山のようなものが見えてきたぞ。赤っぽいその山は今にも噴火しそうな雰囲気だ。
「ルイあれは何?」
『あれはいわゆる吹き出物ってやつだ』
「ふーん」
『あまり近づくな危険だ!』
「そうだね、なんかそんな感じ」
『そろそろ引き上げるか進』
「そうだね。色々あって疲れたゃったよ僕」
『じゃあこれを登って外に出るよ』
「えー、髪の毛を登るの・・」
やっとの思いで表に這い上がり一息ついていると、巨大な針がママの頬を突き刺している。
『蚊だよ!進』
僕とルイはママの耳の陰に隠れ、その様子をじっと見ていた。ママの血がどんどん吸われていく!何で気づかないんだ?
お腹の膨らんだ蚊は満足げに飛び立っていった。
『進あれ見て』
「何?・・うわっ」
蚊が血を吸ってたところがみるみる膨れ上がり、エベレストをはるかに超えてそびえ立った!
『・・パチン!』
ん?今頃頬っぺ叩いても遅いよママ。