ママが許さないわ
カエリコでは、人々は平地で、ゴリラたちは森林で、平穏な暮らしを見つけ始めていた。
ジャック星人たちが、このままおとなしく手を引くとは思えない。侵略のための次の手段をとってくるはずだ!誰でも二度続けての失敗は避けたいもの。今度は、情けなど無縁の攻撃を仕掛けてくる・・。
「グレン、早く手を打たないとキングブラックホールが膨張し始めてるわ!」
「ああ」
「じゃああれを・・?!」
「あれってまさか・・」
ミラーもマックも顔をこわばらせた。
「デビルアントだ!」
「デビルアント・・」リンサは小さく言った。
「いきなりあれをばらまくのか!」とミラー。
「それじゃあ皆殺しだ!」マックは叫んだ。
「グレン・・」リンサはグレンの言葉を待った。
「七日間、猶予をやろう。移住のためのな・・」
「ラルフ、こんなものが・・」
カエリコに戻っていたラルフのもとに、一通の手紙が届けられた。
「・・ついにきたか!」
「またあのゴリラたちが凶暴になっちゃうのか?」
「いや、もっと深刻なことが起こるだろう!」
「もっと深刻なって、まさか俺たちの命が危ないとでも言いたいのか!?」
「・・そうだ!今度は容赦なく攻めてくる」
「あと七日間、俺たちはどうしたらいいんだ・・」
「戦っても勝ち目はない」
「じゃあ・・」
「何よりも命が大切だ!残念だがカエリコを離れるしかないだろうな」
「俺たちの星をジャック星人に渡してしまうのか?」
「・・・」
「そんなの嫌だよ!僕は絶対にこの星を見捨てたりしない」
「ロック・・」
ロックはジャンの親友だ。
「僕はこの星が好きだ!ジャンだってそうさ」
「みんな好きさ!このカエリコが」
「じゃあなんで逃げるんだよ?!戦わないのかい」
「ロック、相手はとても強い。私達にかなう相手ではない」
「・・みんな弱虫だ!僕は一人でも戦うよ。大好きなカエリコを守るんだ」
ロックは目に涙を溜めながら叫び、走り去ってしまった。
「ロックの気持ちもわかるがな・・」
「しかし、大勢の犠牲者を出すわけにはいかない」ラルフはそう言葉をしぼり出した。
「ラルフ、七日間なんてあっというまだぞ。この星に住めないのなら、早く次の移住先を探さないと!」
「行くとしたら地球しかない!しかしそれは、地球人の理解が必要だ」
「そんなこと言ったって、もうそんな余裕はないんじゃないのか?」
「とりあえず地球に行ってくる。この星も七日間は安全なはずだからな」
「ああ頼むよ」
ジャック星人は、どんな手段で攻めてくるのか全く見当がつかない。大きな爆弾を落とすのか、デカいロボットが攻めてくるのか・・?せめてその手がかりでもあればいいのだが。
そしてラルフは再び地球に向かうこととなった。
「何!七日後に攻めてくるだと」とシンジ。
「ああ、今度は一気に攻めてくるだろう!」
「じゃあカエリコの人たちはどうなっちゃうの?」とジャン。
『戦っても到底勝ち目はない!どこかに逃げるしかないさ』
「そんなあ・・パパ?!」
「残念だがルイの言う通りだ」
「嫌だ!そんなの絶対に嫌だ」
「でも、強い相手なんでしょ!死んでしまっては何にもならないのよ」と夏子。
「でも・・僕はカエリコが好きなんだ!」
「ジャン・・パパ、僕とジャンは魔法が使えるんだよ。敵をやっつけられるんじゃない!?」
「進・・」
「進、そんなことはママが許さないわ!だいち危険すぎる」
「ママ・・」