お手柄よ平じい
「夏子、進は今日も泊まりなのか?」
「そうなのよ!相当気が合うみたいなのよねジャンと」
「あなたはジャンと会ったことなかったっけ?」
「ああ」
「またそのお父さんがカッコいいのよ!」
「なんだそれ?!浮気を宣言してるのか」
「そんなんじゃないわよ」
「幾つぐらいなんだ?」
「あなたと同じぐらいか、少し若いって感じかな」
「ふーん」
「名前もカッコいいのよ。ラルフだって!」
「何!!」
「えっ?あなたどうかした」
「いや、何でもないよ」
ラルフ・・何年か前に私を探していたようだが、今またラルフがこの地球に来ている。カエリコで何かあったのだろうか!?
私はカエリコを捨てた身、何が起こっていようともう私には関係のないことなのだ。
「あなたどうしたの?さっきから黙っちゃって」
「ちょっと疲れててね」
「いけないわね。早めにお風呂沸かしましょうか」
「ああ頼むよ」
「そういえばあなたとラルフって、どこか似ているような気がするな・・」
「ラルフさん、どうやらこの星の運命は、シンジと進親子にかかってくるのかもしれんぞ」
「・・・そうなってしまうのか?!」
「その前に我々でやらなければいけないことがある」
「怪物たちの始末か!」
「ああ、そこで提案なんだが、さっきジャンが言ってたろう、たくさんの小人がいればそれだけ多くのジャック星人をやっつけられるって。あんたは、それはできないと言った。しかし、今までジャック星人だと思ってた怪物はただのゴリラだった。それにあのマイクロチップとやらを取ってしまえば、元の優しいゴリラに戻るんだ。戦うと言っても相手を殺してしまうわけではないんだ。逆にゴリラたちを助けてやる。これならカエリコの人たちも協力してくれるんじゃないか?!」
「平じいの言う通りかもしれんな!早速みんなを説得してみることにしよう。この星を自分達の手で守るために・・」
そして、カエリコの人々はラルフの言葉に耳を傾け、自分達の手でこの星を守るんだと、強い決意を示してくれたのだった。
「パパ、これでなんとかなりそうだね」
「ああ、みんなが力を合わせれば、どんな困難もきっと越えられる」
『しかし、よくみんなわかってくれたな!?戦うのは苦手なはずなのに・・』
「平じいのおかげだ!」
『平じいの?』
「これは相手を殺してしまうような戦いではなく、相手を助けるための戦いなんだと教えてくれた。それがみんなの心に響いたんだ」
「やったね!平じい」と進。
「お手柄よ平じい」とシンシア。
「じいさんもたまには良いこと言うんだな」とボス。
「だてに100年も生きておらんわ!」
「ありがとう平じい」とジャン。
「成功したら、今度は俺がタバコをおごるよ」とジョン。
ラルフの合図で、カエリコの人々は自然の大地に終結した。
「ルイ、頼んだぞ」
『よし、ラルフ上空へ連れてってくれ』
ルイはラルフの手のひらに跳び乗った。
「いいか上昇するぞ」
そして、人々が見渡せる高さで停止した。
『ここからならみんなを見渡せる。よーし・・!』
ルイの魔法でカエリコの人々はみんな小人となり、あちこちで驚きや歓声が沸き起こっている。
『みんな武器は持ってるのか?』
「ああ、包丁やハサミを持つように言ってある。それで耳の奥のマイクロチップを切り取ることも伝えてある!」
「うわー!一瞬で人々が消えちゃったわ」
「ホント!これこそ奇跡ですね」
「奇跡かあ・・なんかいい響きね!」
「シンシアさんはどんな奇跡を夢みてるんですか?」
「そうね・・えっ?何でそんなことジョンに話さなきゃいけないのよ」
「よーし、僕たちも手伝おうか!」と進。
「サンキュー!進」
「私も行くぞ!」とかまを手に持つ平吉。
「平じい、そんなのいつの間に持ってきてたの?」
「いざというときのためにな・・」
「小人たちなら、あの怪物に近づくのはたやすいことだろう」とラルフ。
『うん、あとはみんなの連係プレーだね!』
「そういうことだ・・」
やがて、カエリコの人々の活躍で、すべての怪物からマイクロチップが回収された。怪物は元の優しいゴリラに戻り、黒い瞳を輝かせている。きっとゴリラたちはわかっているのだと思う、このカエリコ人たちの勇気と優しい心を・・。