ミクロ隊員
ラルフは気を失ったジャック星人を背中に担ぎ、シンシアたちの待つ地下へ戻っていった。
「とりあえず縄かなにかで体を縛った方がいいな」とボス。
「そうですね!早く縛りましょう」とジョン。
二人とも男のくせに・・。
「早速探検と行こうか!ルイ、私も小さくしてくれ」
『わかった』
こうして進、ジャン、シンシア、ジョン、平吉、ボス、ラルフそしてルイのミクロの隊員たちは、ジャック星人の体の中に入っていった。
「ボス、ここでは遠慮しないで細胞をたくさん採ってね!」とシンシア。
「わかってる!」
「私の報酬のこともわかってるな!」
「じいさん、ここは仕事に集中させてくれ!」
「悪かったな。なにしろ先が短いもんでな!」
「人間もゴリラも、やっぱり一番の急所は心臓よね!」
「そうですね、シンシアさんの言う通りです」
「この星には火縄銃とかはないのか?」
「平じい、今の世の中どこにもそんなものはありません」とあきれるシンシア。
『ラルフ、武器とかはないのか?』
「ああ、この星は平和主義だからな!そんな物騒なものはないんだ」
「日本刀は?」
「平じい!」シンシアは平じいをにらんだ。
「ごめんなさい・・」
『ボス、あんたの意見はどうだ?見た感じで』
「まだなにもわからないさ」
『世界一の科学者でも?』
「この細胞を色々と調べてそれから答えを出す!それが科学者ってもんなんだ」
『ふーん』
「ルイ、あそこを見て!ほら、いつか見たのと同じ歯形みたいなのがある」
『そうだな、平じいの体の中で見たやつと一緒だ!』
「セルキラーだな!」とラルフ。
『間違いない』
「パパ、僕考えてたんだけどさ」
「何をだ?ジャン」
「このジャック星人は僕たち3人でやっつけたんだよね」
「ああ、見事だったぞ!」
「じゃあ、もっとたくさんの小人がいれば、それだけ多くのジャック星人をやっつけられるってことでしょう」
「そうなるな」
「カエリコの人たちみんなが協力したら、ジャック星人たちをやっつけられないかなあ!?」
『なるほど!数で勝負ってわけか』
「ジャン、それいいかもね!」と進。
「でしょう・・」
「しかしジャン、お前も知ってるだろうが、ここの人々は戦いだの争いだのを経験したことがない。その者たちを危険な目にはあわせられない!」
「そっか・・」
「なんとしても我々の手で、ジャック星人をやっつけるんだ!」ラルフは強い口調でそう言った。
「弱点を探すって意外と難しいね」と進。
「私も長いこと生きてきたが、ゴリラに呑み込まれたことはないからな」
『一通り探検したけど、これといって変わったところはなかったか!あとは耳の穴を抜けて外に出るだけだ』
「ボスの方はどう?」
「ああ、ほとんどの組織を採ることが出来た。あとは持ち帰って調べるだけだ」
「そっちの方に期待するしかなさそうだな」
「ラルフ、なんか絶望的って感じに聞こえるぞ!?その言い方」
「そういう意味じゃないさ」
『さあ、あとはあの鼓膜を破って外に向かうよ』
「ルイ、僕に任せて」
「進、あの魔法だね!」
「うん」
進は目標に指先を向けた。
「プリプリ・パラパラ・エイ」
見事鼓膜の真ん中に小さな穴があいた!
「進、今のは・・」不思議そうに尋ねるラルフ。
「魔法だよ」
「パパ、進は魔法が使えるんだ!」
「地球人が魔法を・・」
『進はボクの魔法も真似して使えるよ!』とルイ。
「進が魔法使いだったとはな!私も鼻が高い」
「平じいの長い人生でも、魔法使いには会ったことなかったのかい?」とジョン。
「色々いたさ!予言者、奇術師、魔術師。中には手をかざすだけで傷を治すという者までいた。しかし、どれもこれも嘘八百じゃ」
「ほお・・」
『ん?これは何だ』
「どうかしたのルイ?」
「ほら、ここに変なものがくっついてる」
「どうした?・・これはマイクロチップだな」とボス。
「マイクロチップですって!?」
「何でこんなものがゴリラの耳に?」とジョン。
「何者かがこの怪物に、故意に仕込んだものだろうな!」
「ボス、これはどんな役目をするの?」
「個体識別のために動物にこれを埋め込むことはあるが、この怪物の場合は、他に何か意味があるんだろうな」
「これ持ち帰って調べてみましょうよ!」とシンシア。
「そうしましょう」とジョン。
「調べるって誰が調べるんだ?」
「それは決まってるでしょう!世界一の科学者ボスに」
『当たり前の話だね』
「おいおい、無理を言わないでくれ!私は分野が違う。こんなもの扱ったことなどない」
「今回は随分と逃げ腰じゃな!」
「じいさんまで・・」
『持ち帰るだけ持ち帰ってみよう』
そう言ってルイはノコギリでマイクロチップを切り取った。そしてミクロ隊員たちは耳の穴を抜けた。
「さあ、ここからはボスの仕事ね!」
「よろしくお願いします」とジャン。
「よーし、このカエリコの星を満喫するぞー!」
「おいシンシア、お前は私の助手だろう。解析を手伝ってくれ!」
「えー、せっかくこんな素敵な星に来れたのに研究だなんて・・」
「はあっ?」
その意味が理解できないぞ。
「まあ、よろしく頼むよ!ボス」とラルフ。
「世界一の腕のみせどころじゃな!」
『手を抜くなよ!』
「ボスはそんなことする人じゃないよルイ」
進、プレッシャーをありがとう・・。