ミクロフレンズ
「それにしても、さっきからカエリコの人たちに会わないな!家も見当たらないし」とボス。
「そう言えばそうね」とシンシア。
「カエリコではみんな地下に家を造ってるんだ!それに今は、ジャック星人たちが凶暴化してる。みんな家の中でひっそりとしてるんだ」
「そうなんですか」
「せっかく空気がうまいのに残念だな」と平じい。
「それで、どうやってジャック星人の体の中に潜り込むんですか?」とジョン。
「私が一体倒して連れてくる。1対1なら私の方が戦う力は上だ!」
「パパ大丈夫?ジャック星人は強くなってるよ」
「心配するな」
「カッコいい!ボス、麻酔銃とかないの?」
「そんなものはない。シンシア、ラルフに惚れてるのか?」
「ボス、恋愛は自由ですからね」
「それでは私の立場が・・・」
「何か言いましたか?」
「いや・・」
シンシア、お前の思考が時々理解できないよ・・。
「それにしても綺麗な星だな!カエリコは」
「そうだね!平じいも住んでみたいでしょ」
「私はもう先が短い。そんな夢は、進のような若者が見るものだよ」
「じいさん、夢を見るのに歳は関係ないと思うけどな」
「またあんたか」
「そう邪険にしないでくれよ。綺麗な星、これじゃあ他の星のものが奪いにきてもおかしくはないな!」
「奪うね・・どうしていっしょに住もうという発想がないんだ。地球人もそうだが、みんな争うことばかりに夢中になってる」
「そうだな!」
「珍しいな、私の意見に賛成とは!」
「私だって争い事は嫌いだ。しかし、近い未来に、地球を侵略する者が現れても不思議ではないのかもな」
「ところで、この間お前さんテレビに出てたろう!」
「うっ、見てたのか?」
「ああ。あの薬の売れ行きはどうなんだ?」
「おかげさまでね、バカ売れだよ」
「ほお・・」平吉は怪しい笑みを浮かべた。
「なんだいじいさん・・」
「私にも当然報酬はあるんだろうね!」
「まあ、少しは考えてるよ」
「ほお、少しね・・」
「地球に帰ったら考えるよ!」
「楽しみにしてるからな」
怖っ!
みんなの前ではあんなことを言ったが、ジャンの言うように、ジャック星人がどれほど力を増したか想像すらつかない。少なくとも二体以上に囲まれたらアウトだろう。
「みんなはここの地下で待っていてくれ」とラルフ。
「パパ、本当に気を付けてね」
「ああ、ジャンはみんなのことを頼むぞ!」
「うん」
『進、どう思う?』
「何が?」
『ラルフだよ!本当に大丈夫だろうか一人で』
「そうだね」
そして、駆け出し飛び立つラルフの頭に、小さい影が3つ跳び乗っていた!
しめしめ、あのジャック星人は単独で行動しているようだな。ラルフは空からそれを確認した。
『進、ジャン、隙を見つけてジャック星人の鼻の穴に飛び込むぞ!』
「わかった!」
『ボクはこの腕のノコギリで、進とジャンは魔法で内側から攻撃だ!』
「ルイ、ライトは持ってきた?」
『ああ、ちゃんと3つあるよ』
ラルフは気付かれないように、ジャック星人に最接近し、相手の側頭部に渾身の蹴りをお見舞いした!
よし、完璧なヒットだ!これでやつの動きは止まるはずだ。しかし、ジャック星人はラルフの予想とは正反対の行動をとったのだ。ラルフの一撃で目覚めたジャック星人は、右ストレートをラルフのみぞおちにぶつけてきた。ラルフは意識が遠退きもんぜつ寸前だ。
そんな馬鹿な!これほどまで強力な肉体を手に入れていたとは・・。
「あっ、パパが危ない!」
『このままだとラルフがやられる。一か八か跳びうつるぞ!』
「わかった!」
『ワン・ツー・スリー・・たあー』
3人とも相手の左の鼻の穴に辛うじて跳び移った。
「あー!」
「ジャン、ボクの手をつかんで!」
「ふう、助かった」
『もう何でも構わない。手当たり次第に痛め付けるぞ』
3人はスルスルーっと鼻の奥に滑り込み、ルイはノコギリで、進とジャンは魔法の合わせせ技で、攻撃を開始した!
脚を大きく振り上げ、ラルフに止めの一撃を加えようとするジャック星人。しかし、その動きが寸前のところでピタリと止まった。辛うじて意識のあるラルフは、体を回転させ敵から距離をおくことが出来た。
ジャック星人は盛んに鼻を気にしている!掻いてみたり叩いてみたり、顔を大きく左右に振ったり・・。
いったい何が起こったんだ!?
指を鼻の穴に入れようとするがうまくいかない。今度は細い棒を左手に握り、それを力任せに左の鼻の穴に突っ込んだ!進たちは鼻の右側に移動していて、勢いよく侵入してきた棒の攻撃を受けることはなかった。
ジャック星人は自らの強烈な攻撃で、その場に倒れこみ気を失ってしまった。
私は助かったのか?!ラルフは目の前の不思議な光景を見ながらそう思っていた。
「パパ!パパ・・」
どこからかジャンの声が聞こえる。空耳だろうか・・。
「パパ、大丈夫だった?!」
「ん?ジャン、いるのか」
「ここだよ、パパの足のところ」
ラルフは自分の足元をのぞいた!
「ジャン!それに進とルイも」
「へへぇ~」進はなんとも言えない笑みを浮かべた。
「お前たちがジャック星人を倒したのか?」
『まあーね!』
「ごめんよ、パパに内緒でついてきて!」
「いや、今回だけはいてくれて助かった!」
『かなり手強いみたいだな!あいつら』
「ああ、想像をはるかに超えていた!」
『一刻も早く対策を考えないと、大変なことに!・・』
「それにしても、お前たちどうやってあの強敵を?!」
「鼻の穴に潜り込んで、そこから攻撃したんだ」
「それで鼻を盛んに気にしていたのか・・」
「すごいでしょ!僕たち」と進。
「勇気があったね!」
「3人一緒だったから勇気が出たんだよ!パパ」
「ミクロフレンズか!・・」ラルフはそうつぶやいていた。