じゃあ入りますね?
「ギャー!怪獣」
そう叫びジョンにしがみついたのはシンシア。
『ボクだよ!ルイ』
「えっ?」
『もう、みんなちっちゃくなるたびに、ボクのこと怪獣って言うのやめてほしいよな!』
「だってどう見ても怪獣なんですもん!」
『うっ・・』
「シンシアさん、怪獣はひどいですよ。ルイは虫なんだから!」とわけのわからないフォローをする進。
怪獣より虫の方がまだいいよ!
「ひぇー!みんなちっちゃくなっちゃって」とラルフ。
「ん?・・ギャー!巨人」
いい加減にしなさいシンシア。
「私だよシンシア」
「ん?・・ラルフ」
「私が巨人なんじゃなくて、みんなが小人になったんだよ。周りを眺めてごらん」
「本当だ!何もかも巨大化してる」とジョン。
「不思議な光景だ」ポツリとボス。
「ほおー、長生きはしてみるものじゃな!」
『ラルフ、君の体を借りるよ』
「ああ、本当にいたずらしないでくれよ」
「なんだかワクワクするわー!」とシンシア。
『ラルフ、口を開けてくれ!』
「ん?・・ああん・・こうか」
『よし、みんな跳びうつるぞ!』
「おおー!」
みんなは一斉にラルフの口に跳びこんだ!
『準備OK だ!ラルフ頼む・・』
「よし、飛び立つぞ!」
こうして初めての宇宙旅行が始まった。
『ラルフの体のつくりは、地球人と同じなんだな!』
「でも、空が飛べるよ」と進。
「魔法で飛んでるんだよ!」
「魔法かあ・・」
「そうだ進くん・・」
「ジャン、もうくんはいらないよ」
「じゃあ進、魔法の方は腕を上げたの?」
「前よりはね!」
「すごいね!何かやって見せてよ」
「うん、そうだなあ、何がいいかなあ・・」
『進、あれなんかどうだ!』
「そうだね、ジャン見ててよ!」
進は人差し指を前につきだし怪しい呪文を唱えた。
「プリプリ・パラパラ・エイ!」
その瞬間、進の指差す先の喉ちんこが激しく波打った!
「うわー、すごいパワーだね!」
「ねー君たち、そんなことして大丈夫なの?ラルフがもしバランスでも崩したら大変よ」とシンシア。
「そっか」
ん?なんだか喉がおかしいぞ・・喉の奥で何かが激しく動いてるようだ!あいつら、いたずらでも始めたか・・。
「こら!私の体で遊ぶな」
「ほらね」
「ごめんなさーい!」
「やれやれ、進、もう少し頑張れば空を飛べるようになるかもね!」
「うん、今度練習してみよー・・」
そして進たちは喉ちんこを越えて奥へと進んだ。
気づくとボスが何かをやっている。
「ボス、何をしてるの?」とシンシア。
「宇宙人の体の中なんてめったに来れないからね、組織を少しいただこうと思って!」
「えっ!ラルフに悪いわよ」
「ほんの少しだけだよ」
「もう」
「ボスよ、またそれでひと稼ぎかい!」
「平じいさん、まだ根に持ってるのか?」
「どうせ私は実験台のモルモットだよ」
「じいさん・・」
やれやれ。
「おーい、もう口の方に出て来てもいいぞ!あと少しでカエリコに着陸だ!」
『よし、這い上がるか』
「もうカエリコの空気がある」そう言うとラルフは口を開けた。
「わあー、あれがカエリコだね」
「うん、約束通り進をカエリコに招待さ!」
「うん!」
「着陸の前に少し空から探索してみよう!ほら、私の手の中に出ておいで」
「んん、空気がおいしいわ!」
「シンシア、わかるのかい?」
「ええ!」
「確かに地球よりは大気がきれいなんだ!」とラルフ。
「空気にも味があるのかい?シンシアさん」
「地球は大気汚染が深刻だから!平じいの子供の頃と同じ味がしない?」
「ん?・・そんなのとうに忘れたよ」
「そろそろ肉眼で地表が確認できる。ジャック星人の姿もあるはずだ」
「いよいよだね」
「進、ジャック星人は怖くないのか?」
「えっ?ジャンは怖いの・・」
「ちょっとだけね」
「じゃあ僕が守ってあげるよ!」
「うん・・おっ!いたよ、ジャック星人だ」
何やら黒っぽい物体がこっちをにらんでいる。そして『うおー!』と雄叫びをあげた。
「うっ・・怖っ」進は一気にびびってしまった。
「なんかゴリラに似てるわね!」とシンシア。
「そうですね!猿の惑星から来たのかもしれませんよ」
「ジョン、その例え古すぎない?」
「そうですか・・」
「あいつらの体の中に忍び込むのか?」
「ボス、怖いの?」とシンシア。
「いや、ゴリラなら地球にもいるから、何もあの体の中に入らなくても・・」
「ボス、やっぱり怖いんだ!」
「違う!」
「じゃあ入りますね?」
「はい」
「それにしても凶暴そうだね!」と進。
「ジャック星人は自力で空を飛ぶことはできないから安心しろ」とラルフ。
「それはちょっと意外だね」
「よし、着陸するとしよう」
「うん」
「みんなは小さいままでいた方が安全だ!」
そしてラルフはゆっくりと地面に着地した。