現時点での最強だ
カエリコの人々はラルフの帰りを心待ちにいていた。ジャック星人の横暴ぶりはエスカレートするばかりで、人々は気が休まることもなく、日々おびえ、疲れはてていた。しかしラルフが、ジャック星人をこの星から追い出すための秘密兵器をもってもうすぐ帰ってくる。それまでの辛抱だ!いつしかそれが、この星の合言葉となっていた。
「ジャン、カエリコに着いたらこの耐性セルキラーを手分けして散布するぞ!」
「うん、わかってる」
「みんなが待ってる!急ごう・・」
・・「平じい、それってどういうことなの?」
「進も私がある時から、どんどんと若返っていったのを知ってるだろう。それはセルキラーが私の体に忍び込んでわるさをしていたからだ。人の体を攻撃するのではなく、人の体を元気にするセルキラーだな」
「うん」
「ジャンたちが持ち帰ったセルキラーは、私の体に忍び込んでいたのと同じタイプのもの!」
『つまり、ジャック星人がそのセルキラーを体に取り込むと、さらに強力な体を持つことになってしまうんだ』ルイは平じいのあとにそう言い足した。
「えっ!そんなことになったら大変だよ」
「ああ、しかしもう、ジャンたちにその事を伝えるすべはないんだ。知るのが遅すぎたよ・・」
「ジャン・・」進はジャンのことが無性に心配になった。
「まずいことになったな」
「ボス、どうしてこんなことになっちゃったの?!」
「シンシア、私のところではもう元のセルキラーなど扱っていないよ。それに、人に害を及ぼす元のセルキラーなど、欲しがるものがいるとは思わなかったさ!」
「確かに・・私が最初からちゃんと説明しておけばよかった」
「シンシアさん・・」ジョンは心配そうに言った。
「ラルフ達を助ける方法はないかしら?」
「こちらから連絡をとるのは不可能だ」とボス。
「でも何とかしないと、セルキラーの力で、ジャック星人たちはどんどん協力になってしまう・・」そうジョンは不安を口にした。
そして、ラルフとジャンはカエリコに着いた。人々は喜びと安堵の表情を浮かべている。
「早速はじめよう。ジャンは東方面、私は西方面からいく。家々をとりかこむように散布するんだ。そうすればあとは、勝手にセルキラーがジャック星人を見つけて体に忍び込んでくれる」
「うん!」
と
それから数日後・・。
「そろそろセルキラーの効果が現れる頃だな!見回りに行ってみるか」
「僕も行くよ」
しばらくいくと数体のジャック星人と出くわした。
「パパ、ジャック星人だ!」
「ああ!」
「うっ」
ジャック星人たちがジャンを振り返りにらみつけてきた!ジャンは慌ててラルフの後ろに隠れた。
「まだ凶暴さはそのままのようだな」
「セルキラーは何してるんだ?」
「このグループには、まだ侵入してないのかもしれない」
「でもこの辺りは、僕がセルキラーをまいたよ!」
「とりあえず他のジャック星人も見てみよう」
そう言ってラルフはジャンとともに空に飛び上がった。
「僕に力があれば助けにいくんだけどな・・」
進はポツンとつぶやいた。
『ああ、ボクもだよ』
「ボス、耐性セルキラーをやっつけるセルキラーはつくれない!?」とシンシア。
「今のところそれは難しい。あのセルキラーは現時点での最強だ!」
「現時点?」
「今後研究を重ねていけば、いつかはそれを破れる可能性はあると思う。しかし、それがいつになるかは皆目見当もつかないよ」
「ラルフさんって宇宙人なんですよね!この広い宇宙のどこかには、セルキラーを倒す手がかりもあると思うけど。ラルフさんは、宇宙にそんな知り合いはいないのかな?」とジョン。
「いないからこの地球に助けを求めて来たんでしょ!地球人だって宇宙人よ、けど地球以外に知り合いなんていないんだから・・」
「そうですね・・」
「でもルイ、ジャック星人ってそんなに強いのかな!?」
『そりゃあ強いに決まってるさ!なにしろカエリコの人たちではどうにもならないんだから』
「でも弱いところってあるんじゃない?」
『弱点ってことか!?』
「うん」
『そうだなあ・・どんな強いものにも弱点はある!でも、それを探るのが大変だよ。だいたいボクたちは、ジャック星人を見たこともないんだからさ』
「ねー、今度見に行ってみない?」
『ジャック星人をかい?』
「ジャンのパパにお願いいて、連れていってもらうんだよ!いつかジャンも一緒に行こうって言ってたし」
『それで、行ってどうするのさ?』
「それは・・・そうだ!あのボスって人頭いいんでしょ。ボスがジャック星人を見れば、弱点とかがわかるんじゃないかな」
『ボスかあ・・それ可能性あるかもね!』
「でしょう!」
『でもボスが行くって言うかな?カエリコに』
「シンシアさんに頼んでもらうんだよ!」
『シンシアさんに?』
「だって二人はいい関係なんでしょ!」
『はあっ?』