ラルフ
シンシアの言うことが本当なら、対策を急がなくてはならない。いったいどこの誰なんだ?このセルキラーの存在に気づき、それをやっつける薬をつくり出したというのは。もしかしたらあの男か・・?
私の知る限り、セルキラーの存在を知っているものは、私を含めシンシアとジョンの3人。そして以前ここを訪ねてきたラルフという男だけだ!
どこでかぎつけたのか、私がセルキラーの研究をしていることを知っていた。そして男は、人々に害をもたらすセルキラーを撲滅するのだとも言っていた・・。
カエリコ・・。
ジャック星人たちは、以前にもまして勢力を強めていた。このままでは、この美しい星カエリコがやつらの手に堕ちるのも時間の問題か・・。
カエリコの男たちは魔法が使える。だがそれは身を守るためのもので、敵を攻撃するような力はない。
私は最後まで戦うつもりだ!しかし、他のものたちは近い将来、どこかに移住しなければならないだろう。その第一候補が地球だ!
だがそれも、うまくいくかどうかは疑問が残る。地球人に対して、今度は私たちがジャック星人の立場となり、争いが起きたりはしないかと。だが私は地球が大好きだ。何よりそこに暮らす人々の優しさが!
息子ジャンは、今その優しさに触れ、何かを感じ取ってくれているはずだ。思いやりの心こそが、共存の一番の近道なのだから!
海に山それに空気の組成まで、カエリコと地球はよく似ている。まるで双子星だ!
セルキラーは、私たちがこの星に生まれるはるか前から、この星で暮らしていた。そこに私たちの祖先が仲間入りをした形で共存してきた。そのセルキラーも、このままでは絶滅が危惧される。なんとかこの星を守りたいものだが・・。
私はジャンと別れた地球のその場所に来ていた。ある程度近づけばジャンの鼓動を感じることができる。
どうやらこの家にお世話になっているみたいだな!
「こんにちは」
「はーい、ただいま!」
「ママ、誰か来たの?」
「ん?!」ジャンはなんとなく落ち着かない自分を感じていた。
「はーい、どちら様ですか」
「ジャン、どうかしたの?」
「パパだ!」ジャンは玄関に駆け出した。
「パパ!?」進も後を追った。
「突然すみません。私、ジャンの父親でラルフといいます」
「あら!いい男」・・何言ってるの夏子さん。
「えっ?」
「あっ!パパー」
「ジャン」
「・・そうか、進君と友達に!それに進君の耳にも友達がいるみたいだね」
『やっぱりバレてたか』
「こいつはルイ、ボクたちはみんな友達なんだ!」ジャンは誇らしくそう言った。
「ジャン、どうだ地球は?」
「うん、とてもいいところ!お風呂もあるしね」
「お風呂?」
「そうなんです。ジャンはお風呂がすごく気に入って!」
「パパ、カエリコの方はどうだい?」
「相変わらずだ。最悪のことも考えないといけないかもしれないな」
『最悪ってどうするんですか?』とルイ。
「人々の他の星への移住だ!」
「あっ!パパ・・」
「ジャック星人の勢いはこのところ増すばかりでね。我々カエリコの住民はギリギリの所にいる。セルキラーも含めてね」
「パパ、そのセルキラーなんだけど・・」
「薬を?」
『それをもとに耐性のセルキラーをつくって、カエリコに大量に送り込むんです!』
「耐性のセルキラー・・」
「つくってくれそうな人がいるんだよ!」
「そうだったのか」
『手に入りますか?』
「うん、それは可能だ」
「よかったねジャン!」
耐性セルキラーか・・なかなか面白いことを考えたものだな。試してみる価値は大いにありそうだ。
ラルフは見当がついていた。耐性セルキラーをつくり、個体を大量に生み出せるのはあいつしかいない。
そこではボスとよばれ、性格はさておき、私がみるところ天才的科学者だ!早速カエリコに戻り、ストックしてある薬剤を持ってこよう。私も彼との再開が楽しみだ。
「じゃあ、パパお願いね!」
「ああ、薬を持ってすぐに戻るよ!」
「それにしてもイケメンジャンか!ジャンのパパ」
『そのようだね!あれ見てごらん・・」
「ん?ママ・・何やってるんだ」
ラルフの姿はもうとっくに見えないのに、まだボーッとたったままの夏子。恋心に火がついてしまったのか!?