いい関係
「ジョンさん、セルキラーが殺虫剤で死んじゃうとするでしょう。でも、死なないセルキラーってつくれるの?」進は聞いてみた。
「その殺虫剤の成分がわかれば可能さ。その殺虫剤に耐性を持たせたセルキラーをつくればいいだけのことだからね」
「耐性?」
「その殺虫剤が効かないセルキラーってこと!」
「ジャン、そのジャック星人がつくった薬って手にはいるのか?」
「パパに頼めばね!」
「ねー進君、今ジャック星人って言った?」
「うん!ジョンさん知ってるの?」
「前にボスから聞いたことがあったような・・でも星人だなんて、アニメでもあるまいし本気にしなかったんだけどね」
「ボス?」
「ああ、若返りのセルキラーを生み出した天才科学者だ」
「私の体を実験台にした張本人だな!」
「そのボスって人はどこでジャック星人のことを知ったのかな?」とジャン。
「さあ、それは聞いてなかったな」
「とにかく殺虫剤が手に入らないことにはダメなのか」
「うん」
「ところでジャン、君はどうやってこの地球に来たんだ?やっぱり宇宙船かなにかに乗ってきたのかい」と平じい。
「うんん、飛んできたんだよ!」
「えっ!ジャンって空飛べるの」
「ボクはまだひとりでは飛べない。パパと一緒じゃないとね」
「ジョンさん、もし殺虫剤が手に入ったら、耐性セルキラーをつくってもらえるかね?」
「さあ、それはわかりません。なにしろうちのボスは儲かることしか興味のない人ですから」
「ほお、一番難しいタイプの人間じゃな!」
「もしかしたら、シンシアさんが頼めばなんとかなるかもしれないな」
「シンシアさん?」
「ボスとはいい関係みたいですからね!」
「いい関係ってどういうこと?」
「えっ・・」
「進、その質問は大人になってからだ」
「そうなんだ」
「ではそのときはシンシアさんとやらに一肌脱いでもらうとするか!」
「今度、それとなく話してみますよ」・・。
「ルイはわかるかい?ジョンさんが言ってたいい関係って」
『たぶん進とジャンみたいなもんじゃないかな!』
「僕とジャン・・一緒にお風呂に入ったりとか!?」
「きっとそうだね」とジャン。
『うん、人間はお風呂が好きだからね!』
意味は違うけど、ハズレてもないね、その推理。
そして翌日、早速ジョンさんから連絡が入った。
「ふーん、今日シンシアさんに会うのか・・」
「進達も行くだろう?」
「ごめん平じい、今日は平じいだけで行ってきて」
「そうか、まあ大人の話だからな。進達が行ってもつまらないだろうからな・・」
「うん」
「わかった!私が話を聞いてくるよ」
「ありがとう平じい」
「じゃあ、まず僕から小さくなるよ・・えい!」
「うわ、進が消えちゃった!」
「ジャン、僕ならここだよ」
「ん?」
「ジャンの右肩」
「あっ!進・・」
『ジャン、今度は君の番だよ!いいかい」
「うん」
『いくよー・・えい!』
ルイはジャンの体を小さくする魔法をかけた。
・・「うわー!怪獣だあ」
『ジャン、ボクだよルイ』
『あっ、ホント、ルイだ』
「これでみんな同じ大きさだね」と進。
「うん」やや緊張気味のジャン。
『よし、平じいの頭に飛び乗るよ』
「わかった!」
「美子さん、ちょっと出掛けてくるよ」
進達のために引き受けてはみたが、やはり一人だと多少心細いもんだな。しかし、宇宙人だのセルキラーだの、なんとか星人だの、私が子供の頃にはちっとも想像してなかったことだ。これが100年の歩みってやつかね・・。
「やあ、ジョンさん、お待たせしてしまって」
「平じい・・こちらがこの間話したシンシアさんです」
「おお、これはべっぴんさんだな!」
「シンシアと申します・・ジョンからだいたいの話は聞きました」
「そうですか」
「ねールイ、べっぴんさんって何?」
『キレイな女のひとをそういうのさ!』
「キレイだもんねあのお姉さん!」
『ジャン、タイプなのか?』
「うんタイプ!」
相変わらず正直だね。
「その耐性のセルキラーをつくる話、早速ボスにしてみます」
「それはありがたい。よろしく頼みます」
「それから・・」
「どうかしましたか?」
「その宇宙人の子なんですけど、今度会わせていただけませんか」
「ああ、それは構いませんよ!」
「私一度宇宙人とお話がしてみたかったんです!」
「あれ?シンシアさんは宇宙人の友達はいないんですか。今の時代、それが当たり前なのかと思ってましたが」
「えっ?」
「違うんですか?」
「違う・・と思います?!」
『進、ジャン、シンシアさんの頭に跳び移るぞ!』
「うん!」
・・「ん?なんかいい匂いだね!」とジャン。
『これはコロンの匂いだね!』
「コロン?」
『女のひとのたしなみさ』
「じゃあ、また連絡します」
「はい」
ジョンは助手席にシンシアを乗せてボスのところに向かった。正確には進、ジャン、ルイも乗せてだ。