あさはかな欲望
「明日の準備は終わってるの?進」
「うん!」
明日から夏休みだ。ボクは平じいの家に遊びにいく。もちろんルイとジャンも一緒にだ!
「ジャン君、新幹線は乗ったことあるかい?」
「ない」
「すごく速いんだよ!」
「ふーん、楽しみだね」
「そうだね」
「あのさ進、君の体にいる小さい虫はなんなの?」
「やっぱり知ってた?」
「うん」
「ルイ、出てきて!」
「進の耳のところに隠れてるよ!」
・・『よいしょっと!こんにちはジャン』
「こんにちはルイ」
『君はボクがどこに隠れているかわかるのかい?』
「うん、ちゃんと見えてるよ!」
『見えてる!?』
「見えてるというか・・わかるんだよ」
『気を感じるってやつだな!』
「行ってきまーす!」
「気を付けてね。駅で平じいが待っててくれるからね」
「うん、わかった」
「ジャン君も気を付けて!仲良くするのよ」
「はい」
さて、今日は進を駅まで迎えに行ってやらないとな。なんでも友達と一緒だとか言ってたな。
「ジャン、これが新幹線だよ!カッコいいでしょ」
「うん!」
「早く乗ろう!」
その時。
「亮介!亮介・・」
大きな声で誰かの名前を呼ぶ女の人がいた。
「亮介!亮介・・」
「おばちゃんどうしたの?」僕は聞いた。
「息子とはぐれてしまったのよ!4歳の・・」
「4歳かあ・・」
「そう、困ったわ。どこにいっちゃったのかしら」
「ジャンも見なかったよな・・?」
「・・ボクわかる!ちょっと待ってて」
そう言ってジャンは走り出した。
「おい、どこに行くんだ!ジャン・・」
『進、ジャンにはわかるのさ、子供の居場所が!』
「えっ」
しばらくするとジャンは戻ってきた!迷子になってた男の子を連れて。
「亮介!・・ボク、ありがとうね。探してきてくれて」
「お兄ちゃん、ありがとう」
「うん」
「ジャン、男の子の居場所、わかったのかい?」
「うん、ママを探してる姿が頭に浮かんだから」
「すごいなジャン!」
僕はいつの間にか君をつけずジャンを呼んでいた。
『進、早く新幹線に乗らないとヤバイぞ』
「あっそうだった!ジャン行くよ」
「うん」
そろそろ家を出た方がいいかな。
「美子さん、じゃあ行ってくるよ」
「はい。お願いします」
そして私はバスに乗り込んだ。
「シンシア、ジョン、あの老人の体を調べてみる必要がある」
「わかりました。なんとかしてここに連れてきます」
「頼む」
「ジョン、行きましょう」
そして二人も、平吉と同じバスに乗り込んでいた。
「よし着いたぞ!平じいはまだ来てないみたいだね。あそこに座って待ってよー・・」
しかし、いつまで待っても平じいは現れない。
『進、遅すぎないか?』
「そうだね。電話番号知ってるからかけてみるよ」
『それがいいな』
「もしもし、おばちゃん・・・」
「えっまだ来てないの?おかしいわね、家はとっくに出たんだけど」
「どうしようか?」
「とりあえずおばちゃんも駅に行くから、もし平じいと会ってもそこで待ってて!」
「うん、わかった!」
『何だって?』
「平じいはとっくに家を出たって!」
『何かあったのかな?』
おばちゃんも来てくれるって。だからそれまで待っててって・・」
「おじいちゃんがいなくなっちゃったの?」
「うん、駅に来る途中でね」
『そうだジャン、君ならわかるんんゃないか?』
「ジャン、どう?」
「いまのところ何も浮かんでこない」
「やっぱりか・・」
「セルキラーセンサーがちっとも反応しませんね」シンシアは言った。
「この老人のからだの中には、セルキラーは一匹もいないってことか!」
これでは体がどんどん老いていくのも無理はないい。元々は100歳の体なんだからな!やはり何だかの方法でセルキラーが駆除されてしまったのだ。
「ん?ここはどこじゃ・・」
「気がついたかい!?じいさん」
「あっお前は!」
「すまなかったね。どうしてもじいさんをここに呼ぶ必要があってね」
「ふん・・そんなことより今何時だね?」
「もうすぐ午後4時だ」
「まずい、進達はどうしただろうか?すまんが電話を貸してくれ」
「もしもし・・」
「平じい!どこにいるの?」
「うん、それより進達は、進達はどうした?!」
「無事よ。ここにいるわ」
「そうか、よかった!私もこれから戻るよ。心配かけたな」
「送るよ!じいさん」
「お前、以前どこかで・・」
「ああ、海岸でタバコをもらった」
「そうか、あのときの・・。だが吸わなかったよな。私の安いタバコは!」
「そうだったかな」
「そう、吸わなかった」
二人は車に乗った。
「実はもうひとつ謝らないといけないことがある」
「何だ?」
「大晦日の夜、信号を無視して走ってきた車があったろう」
「・・ああ」
「この車だ!」
「そうか」
「悪かったね。危ない目に遇わせちまって」
「これからは信号をちゃんと守れよ」
「ああ、そうするよ」
・・「じゃあここで」
「アリガトよ!送ってくれて」
「じいさんも長生きしてくれよな!」
ジョンは車を出した。
誰がどんな方法でセルキラーを駆除したのかはわからないが、若返りの効果は予想通りだった。人間の欲望のひとつである若返りの方法を私は確立したんだ!この成果を元にひと儲けしてやるさ。世界中の人間たちのあさはかな欲望によって、私は地位と名声を得るのだ!皮肉なものだ・・。