ボクはジャン
そして・・。
あーあ、ひどいよな!ボクだけ残して行っちゃうなんてさ。
「ジャンよ、ここでしばらく修行を積むといい!」
「えっ?」
「この世界にはお前の知らないことがまだまだたくさんある。それをこの地で学ぶんだ!」
「でもボクには誰にも負けない力があるよ!」
「そんな力ではどうにもできないことがあるんだよ。また迎えに来る、それまで頑張れよ!」
「あっパパー・・」・・。
ん?誰か来るぞ。
「ねー、あの男の子カワイくない?!」
「あっ、ホント」
「でも、こっちをジロジロ見てるね」
「これが欲しいのかな?ボテトチップ」
「そうかもね・・」
「ボク!これ食べる?」
「・・・」ボクは首を横にふった。
「そう」
「ボクひとりなの?」
「・・・」今度は縦に首をふった。
「迷子かな?」
「ボク、お家はどこなの?」
「・・・」
もうめんどくさいから走って逃げることにした。
「あっ、ボクー!・・」
なんだあの同じ服を着た少女3人は?ボクのことを『ボク、ボク』だなんて。
ん?また誰か来るぞ・・。
ボクは立ち止まり、そのオヤジが行き過ぎるのを待つことにした。しかし・・。
『クンクン、クンクン』
なんだこの生き物は・・。ボクのにおいばかり嗅いで。
「こら!やめんか」
『クンクン、クンクン』
こいつ、オヤジの言うことなどちっとも聞かない!
「ごめんよボク、でも噛みついたりはしないからね」
『クンクン、クンクン』
しつこいやつめ。
『パチンッ!』ボクはこの生き物の鼻の頭を、指でちょこんと弾いてやった。
『キャンキャン・・』あっ、気絶しちゃった!
ボクは慌ててその場を逃げ出した。ちょっと力を入れすぎちゃったかな・・。
ポツリ・ポツリ・・。
あれ?何か空から降ってきたぞ。水だ!
ザー・・!
なんだか激しく降りだしてきたぞ。周りの人たちは、みんなまるいもの?を持って雨を避けている。あれはなかなか便利だね。でも、ボクの体は水に濡れても全然へっちゃらなんだけど・・。
その時、急に雨がやんだ!
いや、やんではいない。まだ降ってるよね。でも、ボクのところだけ雨がやんでる・・。
上を見ると、さっきのまるいものがボカの頭の上にあった!
「ボク、傘持ってないの?」
「ん?」
「ほら、これ持っていきなさい!それとハンカチも」
そう言って、オバサンがまるいもの?たぶん傘というやつとハンカチをボクの手に握らせてくれた。
「ボク、名前は?」
「ジャン」
「ジャン君」
「私は相川夏子よ。私の家はもうすぐそこだから傘がなくても大丈夫!だからそれをさして帰って。じゃあねジャン君」
オバサンは走って行っちゃった。
いくら家が近くても、これがないとオバサンがびしょ濡れだよな。それでもいいのかなあ・・。
ボクは何となくそのオバサンのあとを追いかけていた。家は近いって言ってたくせに、まだ着かないのか。10分は走り続けたな・・やっと家に着いたらしい。
「ただいまあー」
「うわ!ママ、びしょ濡れじゃないか」
「うん、ちょっと着替えてくるねー・・」
「確か傘を持っててたよな?!」
ここだなあのオバサンの家は!ボクは家のドアを少し開けて、中をのぞきこんだ。
「ふうっ、さっぱりした。シャワーまで浴びてきちゃったわ!」
夏子はそのまま冷蔵庫に直行していった。
「あっしまった!ジュース買うの忘れちゃったわ」
「えー!じゃあ僕のコーラも」
「進、すぐそこの自販機で買ってきてよ」
「僕が?雨降ってるよ・・」
「傘があるでしょ」
「えっ!」
「はいお金!私はアップルジュースね」
『じゃあボクは耳の中に隠れよーっと!』
「ルイまで・・」
仕方なく僕は自販機に向かうことにした。黄色い傘を持って。
そして玄関のドアを開けると、ひとりの男の子が立っていた。ママの赤い傘をさして・・。
「ママに用なの?」
「うん」
「ママ、ママ!」
「どうしたの?」
「お客さんだよ」
「えっ?・・あらボク」
「誰だい?」
「進、バスタオル持ってきて!早くね」
「えっ、ジュースは?」
「つべこべ言わない!」
「ボク、どうしたの?もしかして傘を届けてくれた・・」
「うん」
「いつでもよかったのに・・あっそうだ進、コーラもう一本追加ね!」
「ん?お金は・・?」
「えっ!」
「はい、買ってきたよ!」
「ひとつジャン君にあげて」
「ジャン君?・・はいどうぞ」
なんだこの赤い金属は?これで何をしろと・・。
「あれ、遠慮しないで飲んでね!」
飲む?この金属を・・。
『プシュ』
そうだ、ストローで飲もう!
「はい、ジャン君も使うでしょ!」
なんだこれ?何に使うんだ・・。
「あーおいしい!やっぱりジュースはアップルね」
「あーおいしい!やっぱりコーラが採光だね」
なるほど、この中に液体が入ってるんだな!
『プシュ』
そしてこれを差し込んで・・ぶくぶくぶく!
うわ!泡が吹き出てきた。
「あら、ジャン君・・そのバスタオルでいいわ、早くふいて!」
「ジャン君、もしかしてストローを吹いたの?」と進。
「うん」
「ダメだよ!ストローは吸うの」
「それでジャン君はお家はどこなのかな?」
「ん・・ない!」
「ない?」
『進、どうしたんだ?」
「ルイ、どこにいるの?」
『髪の毛のとこ。あれ?この男の子は誰』
「ジャン君」
ん?ちゃんと進の髪の毛に隠れているのに、この男の子はボクの存在に気づいている!何者なんだこいつ・・。
『進、気をつけろよ!この男の子ただ者ではないぞ』
「えっ?何が」
「進、何ブツブツいってるの?」
「うんん、なんでもない」
「家がないかあ・・困ったな」そういえば見かけない顔だもんな・・。
「ジャン君は何歳?」
「わからない」
「進より少し背が小さいから6歳ぐらいかな!」
「そうだね!」
「よし、家で預かろう!」
「はあ?!」
「仕方ないわよ、家がないんだから・・」
「こういうときのために警察ってあるんだよね!」
「それは最終手段でいいじゃない!」
「ルイ、ママの考え方って普通?」
『たぶん普通ではない!』
「だよね!パパだって何て言うか・・」
てなわけで、僕の家族がまたひとり増えました。