ぬかりはないさ
「ルイ、平じいの顔みたか?!この間の誕生日の時と全然違っちゃってるよ」
『人間の100歳の顔ではないね』
「確かめてみようか!平じいの体の中を」
『そうだな、何か分かるかも知れないな。その前に進のママが先だ!セルキラー達がどうなったか確認しないと・・』
「うん」
「夏子たちはいつまでこっちにいるんだ?」と義男。
「3~4日お世話になろうかな!進も学校が休みだし」
「旦那はひとりで大丈夫なのか?」
「なんとかするでしょう」
「なんとかねえ・・」
僕たちはママの体の中に侵入した。
「ルイ、どうだい?セルキラーはまだいそう」
『今のところその気配はないな』
「これだけ探しても出会わないってことは、作戦はうまくいったってことじゃない!」
『うん』
「やったー!ママの身体はこれで安心だね」
『そういうことだ!』
「今度は平じいの番だね!」
『ああ』
ルイは進の髪の毛に隠れて、平じいの顔をじっと見ていた。本当にこのじいさん100歳なのかあ・・。
そして僕たちは平じいの体の中に・・。
『ここは肺の気管支というところだ』
「うわ~」
『気を付けろ進!ここはいつも嵐だ』
「嵐・・?」
『ん?・・進、そっちの嵐じゃないよ。風の嵐!人間は常に呼吸してるだろう。ここはその通り道だよ』
「わかった!風のトンネルだ」
『うん。平じいはタバコが好きだから、壁がもっと汚いと思ったけど意外とキレイだな』
「タバコを吸うと壁が汚れるの?」
『ああ、ニコチンでね!』
「ニコチンね」
『それと、さっきからドクンドクンって大きな音がしてるだろう!あれは、心臓が血液を送り出す音』
「なんか体が揺れてるみたいだね!」
「すごく元気な心臓の音だ!さっきの気管支の壁といい、こんなところまで若返ってるのか!?』
『進、何かいるぞ!』
「えっ!」
『・・あれはセルキラーだ』
「セルキラーって、ママの体にいたやつ?」
『うん』
「じゃあ、またセルキラー取り線香の出番だね!」
『そう言うことだな』
『よく見るとあちこちに、セルキラーにかじられた痕がある。でも変だなあ?』
「何が?」
『セルキラーにかじられたところの細胞は、どんどん死滅ししてしまうんだけど、平じい体の細胞はそれがないんだよ!』
「死んでないの?」
『うん、かえって元気になってるって感じさえする』
「ふーん、平じいは強いんだね!」
『それだけじゃないな・・!?』
「とにかく早くやっつけちゃおうよ!セルキラーを」
『そうするか!』
「ところでルイ、セルキラー取り線香は持ってきてるの?」
『ぬかりはないさ!』
「さすがだね!」
そして、平じいの耳と鼻にセルキラー取り線香をセット!翌日に点火だ・・。
『進、今火をつけてきたぞ!』
「うん」
「ん?平じいが燃えてる・・」
「えっ?何言ってるんだ夏子」
「あれ、あれ・・」
義男と美子は、夏子が指差す方に視線を向けた。
「げっ!」
「キャー!」
「ルイ、ちょっとやりすぎじゃないか!?」
『みたいだね・・』
「どうしたんだ?みんな」何も知らない平じい。
「親父、燃えてるんだよ!」
「はあ?」
「平じいが燃えてるの!」
そう言って、夏子は平じいに手鏡を渡した。
「ん?・・・ああ~」
「美子、洗面器に水を!早くー」義男は叫んだ。
「はい!」
「親父、待ってろよー、今助けるからなー!」
「はい水」
「そし、それー!」
『あちゃー・・』
「平じいがずぶ濡れだ!」
「平じい、大丈夫?」と夏子。
「・・・」何も言わない平じい。
「平じい、平じい」
「・・大丈夫だ、あ・り・が・と・う」
「大変なことになっちゃったね」
『まあしかし、これでセルキラーもおだぶつさ!なにしろ煙と水のダブル攻撃だからな!」
「なるほど」