セルキラーホイホイ
『進、長いトンネルを抜けるぞ!』
「トンネルを?」
『そう、ゴーグルと鼻栓をもう一度確認して!』
ギュギュ
「よしOK !」
『出発!』
「・・で出口はどこなんだい?」
『肛門』
「コウモン?」
『おしりの穴さ!』
「えー!」
進はもう一度ゴーグルと鼻栓を確認した。
「なんか気になるなあー!あの先生の態度」
それから夏子は、結果が出る一週間が、すごく長く感じるのであった。
「ただいまあー、進・・」
遊びにでも行ってるのかしら・・?
『ふうっ』
「はあーはあーはあー・・やっと出られたね!」
「進、シャワーだ!』
「うん、そうだね」
「あっママ、帰ってたの!?」
「進、居たのね」
「うん、今友達も帰ったとこだよ」
「そう」
『進、ボクがなんで進の身体に住み着いてるかわかるかい?』
「えっ?」
「それは、進の身体に悪いムシがつかないように見張ってるんだよ!』
「そうだったの!」
『うん、それで進のママなんだけど、どうもその悪いムシがすみついてるみたいだ』
「えっ!ママ死んじゃうの・・?」
『そんなことないよ。ただ、このまま放っておくとろくなことにはならない。病気を引き起こすこともあるからな』
「じゃあどうすればいいの?」
『やっつけるんだよ!セルキラーを』
「セルキラー・・」
『手伝ってくれるか!?』
「うん!」
『んー?どうしたらいいか作戦を考えないとな』
『セルキラーをやっつける方法?」
『うん』
「強いの?」
『ああ、かなり手強い!それに数が相当いるはずだ』
「えっ、一匹じゃあないの!?」
『セルキラーは繁殖能力が半端じゃない。ほらゴキブリが一匹いると、ほかにまだ何十匹もいるって言うだろう!それと同じだ』
「じゃあ、ゴキブリホイホイを置いておけばいいんじゃない!?」
『なるほど!ゴキブリホイホイならぬセルキラーホイホイか・・進、それいいかもな』
「ヘヘェ~」
『早速やってみるか!』
セルキラー・・人間の身体に住み着き、集団でからだの組織を攻撃し、ついには細胞を死滅させてしまう。恐ろしいやつらだ!体はトカゲに似ていて目も鋭い。それにとてもすばしっこい。
「ルイ、色々持ってきてみたよ!」
『何をだ?』
「セルキラーをおびき寄せるエサだよ。ところでセルキラーの好物って何なの?」
『さあー・・セルキラーに聞いたことないからなあ』
「えっ!・・じゃあこれ全部置いてみるか、ホイホイのところに・・」
『そうだな』
進が用意したのは、リンゴ、みかん、せんべい、ポッキーそれと梅干しだ。
『進、これがセルキラーホイホイだ!勝手に触ったらダメだぞ、くっついちゃうからな』
「うん、わかった」
『じゃあエサを並べていこう・・』
・・「よし、完成だ!」
『うん、さてこれをどこに置くかだな』
「そうだね」
『まずは耳の奥にでも置いておくか!鼓膜のすぐそばに・・』
「あーあ」まだ眠そうな進。
「おはよう進、顔洗ってらっしゃい」
「うん・・ママ、身体のなかに調子どこか悪くない?」
「うん大丈夫よ!」
「そう、なら良かった」
「・・?」
「ママ、こっちの耳は掃除したらダメだよ!」
「はあっ?」
「耳かきを入れたらダメだってこと!」
「・・うん、わかったわ」
「じゃあ、行ってきまーす」
「気を付けてねー」
変わった子ね・・。
『進、ママは変わった様子なかったか?』
「うん、それと、こっちの耳は掃除したらダメだって言っておいたよ!」
『あっそう』
逆に怪しまれなかったか?それ・・。
「ん?」
なんかさっきから耳の中がカサカサいってるなあ!?夏子は耳かきで耳を掃除しようとしたが、進の言葉が妙に気になってやめた。進が何であんなことをわざわざいったのか不思議だったが、昼ドラが始まればそんなことはどうでもいい夏子だった・・。
『さあ、回収するぞ』
「うん、捕まってるかなあセルキラー」
二人はそっとセルキラーホイホイの仕掛に近寄り、それを回収した。
「あっ!」
『いたのか!?』