キイーン
△△歯科医院
「痛い痛い・・」
夏子は腫れ上がった頬っぺを氷で冷やしながら、歯医者に向かった。
「ありゃー、これはまた見事に腫れ上がりましたね!」
「先生、冗談を言ってる場合じゃないんです。はやく、はやく・・」
「じゃあ口を開けてください」
「あーん・・」」
『ん?進ヤバイぞ、ここは歯医者だ!』
「えっ!」
『歯の陰に隠れるぞ』
先生は鏡のついた器具を口の中に入れてきた。
「ルイ、何か来たぞ?」
「あっ!進、それに映ったらダメだ、見つかるぞ』
時すでに遅し。進のVサインは、しっかりと鏡に映っていた。
「何だ今のは・・?」先生はしばらく手を止め、考え込んでしまった。
「あら?先生、先生・・」
気を取り直して再び鏡をのぞく先生。
「やはり気のせいか・・」先生は、無理やり自分を納得させた。
「何が気のせいなんですか?」夏子はそんな先生のつぶやきに不安が募っていった!
「あーあ、奥歯に穴が開いて、何か堅いものでも食べましたか?歯が一部砕けてますよ!」
「砕けてる!?」
「これでは痛いはずです。抜歯した方がいいかなあ!?」
「歯を抜くんですか?それだけは勘弁してください!」
懇願する夏子。
「そうですか!じゃあ削ってなんとか治しましょう」
キイーン!!
歯医者に特有のあの嫌な音が、部屋中に響き渡った。
「はい大きく口を開けて!」
キイーン、キンキンキンキイーン!
「うわー、何が始まったんだ?!」
『歯を治療するんだよ!』
「それになんなのこの嫌な音は!?」
『あれ?進は経験ないのか?』
「ない!」
『虫歯無いの?』
「知らない」
『歯が痛くなったことは?』
「ある」
『その時はどうしたのさ?歯医者に行かなかったのか』
「うん、我慢した!」
『ダメだよちゃんと治さないと・・進、口開けてごらん』
「あーん」
『あっ!ママと同じ所が虫歯だぞ』
「・・ショック・・」
『そんなことを言ってる場合じゃなかった!早く逃げないとまた水が攻めてくるよ』
「どこに逃げるのさ?」
『仕方ない、奥に行くぞ!』
「奥って?」
『奥は奥だ!』