コロンのニオイ
『ニオイは鼻の一番奥の方の天井の部分で感じるんだ。
ほらここだ。そう言えば進、何か持ってくるって言ってたけど、何を持ってきたんだ?』
「ジャジャーン!これだよ」
僕は、ママが出掛けるときにいつもつけるコロンの瓶をルイに見せた。このコロンのニオイがママは大好き!僕はちょっと苦手なんだけど。
「それは何だ?」
「これをこうして・・」
進は瓶のキャップをとり、ためらうことなく一気にニオイの霧をあちこちに噴射した!
『進、やめろ・・ゲホゲホッ』
「うわー臭い!」
「ん?何だ・・鼻が臭い、いや痛い、いやワケわからな~い・・ギャー!」
夏子は当然パニクった。
しばらくして、ニオイも痛みも和らいだが、今度は他のもののニオイを何にも感じなくなってしまった!
「なんなのよ!もー・・」
今度は鼻を診てもらわなくちゃ!でもあの耳鼻科、最近お休みしてるって噂だけど、何かあったのかしらね?!
進とルイは、ママの鼻に充満した悪臭?から逃げ出すように口の中に滑り込んだ!
『やれやれ』
「しかしすごいニオイだったね・・」
『進!・・』
あれ、にらまれちゃったよ。
「なんか喉の方まで気持ち悪いわ!」
夏子はキッチンに行き、コップに水を注いだ。そして水をひとくち口にふくんで、うがいを始めたのだった。
そのとき夏子の口が開き、透明の液体が一気に口の中に流れ込んできた!
「わー・・!」
『うわー目が回る!』
二人の体は上に下に、右に左に、グルグル回転した!
「ガラガラガラ・・ぺっ!」
吐き出された液体の勢いにのって、二人の体はシンクに叩きつけられ、排水溝に姿を消した。
『うー、痛たたた!どこだここは?それにしても臭い』
「うえー・・?ルイ、ここはどこだろうね」
『ここは多分排水溝のかごの中だ』
「え!何でこんなところに?」
『進のママが水でうがいをして、その水に流されたんだよ』
ガサガサガサ
「ん?ルイなんの音だ」
『なんかあの辺が動いたような・・』
ザリザリザリザリ
「今度は寒気のするような音だよ!」
『何かいるぞ・・』
それは進たちの100倍以上大きさののゴキブリの怪獣だ!
鋭い目が進たちをにらんでいる。
「これじゃあ身動きがとれないよ」
『・・進、コロンはまだ持ってるか?』
「あるよ」
『それををゴキブリに噴射するんだ!そうしたらやつは一瞬ひるむはずだ。そのすきにジャンプして逃げよう』
「でも、ゴキブリも飛ぶよ!」
『え!飛ぶの?』
「飛ぶ!!」
『うっ・・じゃあ上からは無理か』
そうつぶやいてルイは下を見た。
「この中に逃げるの?!」
僕は黒い排水溝の奥を、かごの隙間からのぞいた。嫌だよこんな中に入っていくの・・。
「あら?左目のコンタクトが無いわ!さっきうがいしたときに落ちちゃったのかなあ?」
そう言って夏子はシンクの中を見渡した。
「無いか。この中に流れちゃったかな・・」
夏子は排水溝の蓋を外し、なかをのぞきこんだ。
「ん?・・ギャー!!」
ゴキブリと目が合う夏子。彼女はゴキブリが大の苦手だ!
夏子と同じく、ゴキブリも突然のことに驚き身を隠した。
『進、チャンス!』
「うん」
僕たちは排水溝を飛び出して、シンクのふちを乗り越えた。
夏子はは殺虫剤を握り、排水溝のゴキブリめがけ思いきり噴射した。
・・そしてゴキブリは動きを停止した。