エピローグ
人間との戦争から半年後、ワドファーは周囲の亜人の助けを借り復興と発展を遂げつつあった。
「南の国がやっとまとまって来たそうだ」
「じゃあ国交が再開できそうなのかい?」
「いや、それが国交してたのは何年も前で伝手もルートも一から築き直し。形になるのは数年後だろうな」
「道は人間がかなり変えちゃったしな……それにしても君が残ってくれて非常に助かるよリーグ」
ワドファーの城、王の間で話すのは正式にワドファーの王を継いだワドフ4世と北の森のエルフの長だった。
「君がこの国をドワーフだけではなく他種族に開いた国にすると言ったからな。森の長としてしっかり見極めさせてもらうよ」
「君の仲間達も快適に迎え入れられる様頑張るよ、そういえばまた人間が出たんだって?」
「ああ、それも報告書にある。立ち入りを禁じてるのにな、高慢だったのはあの国の人間だけだと思いたいが……今はこの地の亜人は人間に対し良い心証はない」
「狩りも入国禁止もまだ続けなきゃだなぁ」
この地方の人間は兵も民も問わずほぼ黒い靄に飲まれていた。
残った人間も全て旅のついでと言う鬼人主導の元、遥か西の国に送られ。現ワドファー王はこの地に人間の立ち入りを禁じた。そしてこの地から人間は姿を消した。
二人はため息をつきながら会話を続ける。
「人間と言えばあの真っ黒い国はどうなったの?」
「元人間の国か……調査はしてるが……何せ未知の力だ、ほぼ魔女に丸投げだな」
「彼女には苦労をかけてるね……」
戦場になった元人間の国は、一度は晴れた黒い靄が再び充満し、何人たりとも侵入を拒む生きる者が居ない廃墟になっていた。
住民の居なくなった都市を何とか利用できないかとワドファーは画策していた。
「そういえば今日は魔女が王都の王宮に入ると報告があったな」
「もうそこまで行ったのか、あの場で何があったか分かるといいんだけどね」
人間が居なくなり戦争自体は終わったと皆が認識していたが、王都の王宮で何が起こったか知る者は誰一人居なかった。
ワドファーは何度か事態の確認しようとして兵を送ったが、黒い靄は生きる物全ての侵入者を拒んだ。
そこでいつまでも晴れない黒い靄はルインの力と主張する魔女に、靄の解析と人間の国の現状把握を頼んでいた。
元人間の国の王都、王宮の入り口。
魔女は魔力通信機で報告しながら王宮内に入ろうとしていた。
「もしもし、これから王宮に入るわ」
魔女は体の一部分も外気に晒さないような頑丈な布と、何種類もの結界を纏った服を着た姿で王宮の前で報告する。
『こちらオノだ、ばっちり聞こえている。そっちの様子はどうだ?』
「相変わらず人間の死体だらけね。王宮の中の靄がかなり濃いわ。白く美しかった城が漆黒に染まってるわね」
大きな階段のある広間で魔女はあたりを見回す。だが光の魔法で辺りを照らしてもやっとほんの周囲が見える程度だった。
すると階段の上から足音が響く。
「誰!」
魔女は階段の上に気配を感じて杖を構えながら声を上げる。
黒い靄の中階段の上に人型の影を見つけるが視界が悪く誰かは判別できなかった。
「……ここは生き物が来る場所ではない……」
魔女は距離があるはずなのにその声だけははっきり聴きとった。
「ルインなの!?」
声の主に聞き返すが返答はなく、次第に影は黒い靄に紛れ消えてしまった。
その場には深い静寂だけが残され、靄の濃さに耐えきれず、魔女はその場を離れるしかなかった。
遥か東に、亜人が自分らしく生きられる楽園がある。
あらゆる亜人が故郷と同等、いやそれ以上に亜人が亜人らしく居られる快適な国。
しかし、そこはかつて高慢な人間との激しい戦いがあり、人間は立ち入りが禁止されていた。
その爪痕は楽園よりも更に東にある黒の国と呼ばれる場所に見られる。
あらゆる生命を拒み、立ち入る者すべてを滅ぼす漆黒の土地。
そして、それに至る壮絶な戦いの物語は、この地では人間が絶滅した記録「絶滅記」と呼ばれている。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
この物語はこれで完結となります。
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