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絶滅記  作者: banbe
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人間の国、強襲3

 南の都・王都への門前では、獣人の隊長が指揮を取っており、魔女は隊長に戦況を聞いた。


「状況は?」

「やっと来たか……奴等も数が少ない、互角……と言いたい所だが、こちらには奴等を突破出来る程の力はなくジリ貧だ」


 隊長の言う通り互いの軍は、建物に隠れながら弓を放つという消極的な戦いをしていた。


「だがあんた達が来てくれたなら優位になる。人数は増えたか?」

「それなりにね、でも監獄以外にも亜人が捕らわれているらしいの。それにあなた達の国から来た亜人もいたわ」

「何だって……いやだが、もう捕虜を助けに行かせる時間なんて無いぞ、増援が来るんだろ?」

「分かってるわ、場所も分からないし。一番早い方法は人間達を王都まで追い込む事!」


 魔女はそう言いながら杖を人間達に向ける。


「ライトニングストライク!」


 掛け声とともに建物の陰に隠れていた人間に上から雷が落ちる。


「さあ!進むわよ!」

「おおおお!」


 魔女の一撃をきっかけに、森の獣人達は剣を抜き人間達に向かっていく。


「うおおおお!」


 獣人達の勢いに驚き一瞬遅れたが、亜人街組も獣人達に続いた。

 魔女の魔法での援護もあり、南の亜人達は順調に王都の門へと進む。しかしいよいよ門が目と鼻の先まで来た矢先、王都の門が開き、中には王都の軍が陣を構えていた。

 王都の軍の部隊は数が少ないものの、全員がマスケット銃を構えており、見るからに亜人達を迎え撃つ準備が完了していた。


「あれは王都軍!」

「ここまで来たなら行ける!突っ込めェ!」

「ダメだ!お前達止まれ!魔女も亜人達を下がらせろ!」


 数人の獣人は隊長の制止も聞かず、勢い任せに門前の王都軍に突撃していく。


「来たな、撃て!」


 王都軍は向かってきた獣人に、マスケット銃を斉射しながら部隊を展開する。そしてすかさず後方で停止した魔女達にも弓を放たれる。


「放て!」

「っく、結界!」


 魔女は咄嗟に広範囲の結界を張る。


「全員後退!結界の中へ!可能なら物陰へ隠れるんだ!」


 獣人の隊長が後続の亜人達を止めたおかげで、被害は最小に抑えられた。


「銃か……厄介だな」


 建物の陰に隠れながら魔女と獣人は話す。


「流石、王都の軍ね。装備も人員も優秀だわ」

「だが作戦では奴等は分散させられてるんだよな、パッと見だが奴等よりこっちの方が数は多い。この結界さえあれば一気に奴等の懐に飛び込めるんじゃないか?」

「あの数の銃と弓を撃たれたら結界が持たないわ。それにこっちは寄せ集め、そこまで素早く動けるとは思えない」


 魔女と隊長が話していると、王都軍を指揮していた人間が他より大きく長い銃を構えて魔女に狙いを定めていた。


「亜人の中には高度な魔法を使うやつがいると聞いたからな……」

「しまっ……!」


 魔女は引き金を引かれる直前、自身が狙われていると気付く。だが、回避が間に合わず人間の撃った弾に当たり倒れてしまう。


「うぅ!」

「魔女さん!?結界が破られたのか!」


 魔女が撃たれたと同時に結界が消えていく。


「これはまずい!誰か手を貸せ!」


 結界が完全に消える前、魔女は亜人達に運ばれ建物の裏へ運ばれた。


「魔女さん!生きてるか!?何が起こった!」


 魔女は撃たれた脇腹を抑えながら上体を起こし説明した。


「撃たれたのは対魔法用の弾……結界は貫通するし、これが体内にある限り魔法は使えないわ」

「だったらすぐに取り出そう!衛生兵か医療の心得がある者は?」


 亜人街の亜人数名が手を上げ魔女に近づこうとする。


「放て!」


 しかし人間は手を緩めず、合図と共に矢を放って来た。

 亜人達は建物の裏に隠れていた。しかし矢は曲射で放たれ、建物を超え亜人達の元へ降り注ぐ。


「ダメだ!建物の中へ!」


 魔女を守る亜人達と隊長は建物のドアを破り中へ入る、だが建物の中には民間人が隠れていた。


「ひっ!」

「民間人か!」


 隊長は民間人に気を取られていた瞬間、入口の反対側の窓から剣を持った人間の兵が二人、建物に入ってくる。

 混乱しながらも隊長と獣人達は何とか武器を持ち応戦する。

 隠れていた民間人と魔女、魔女を治療しようとした亜人は部屋の隅に追いやられる。


「流石精鋭部隊ね……一息つく暇もくれる気はないみたい」

「っく!あんたは南側の攻撃の要だ、いったん引いて魔法を使えるようにしてくれ」


 怪我をした魔女のすぐ近くでは人間との近接戦闘が始まった。

 隊長と獣人は何とか人間達を魔女に近づけさせないよう、狭い室内で戦闘する。


「こんな状況で引くのだってそう簡単な事じゃないわ」

「ならどうするんだ!」

「大丈夫万が一の準備はしといたの」


 魔女はそう言うと懐から薬を取り出して飲む。


「これで傷は大丈夫、ある程度動けるわ。そして……」


 今度は杖を手にし逆さまにすると剣が出て来た。


「仕込み杖?しかしあんた剣の心得はあるのか?」

「そこそこって所ね、でもこの剣には……」


 剣には魔法石が取り付けられていた。


「魔法剣か」


「そう、私自身魔力が使えなくなっても外部の魔力なら使えるわ。かなり制限は付くけどね」


 話している内に更に二人の人間の兵が建物に入ってくる。


「フレイム!」


 魔女が叫ぶと持っていた剣の刀身が燃え出し、それを見た人間は驚く。


「な、魔女め魔法は使えなくなったはずじゃ……」

「幾らでも手はあるのよ!」


 魔女はすかさず入って来た二人を魔法剣で斬りつける。しかしやはり剣の腕は甘く、何とか鎧を貫通させた程度だった。


「ダメだ、魔女さん!浅い!ここは俺が」

「いえ大丈夫……」


 人間を切り倒した隊長が相手を蹴り飛ばし、魔女が斬った人間に追い打ちをかけようとする。しかし、魔女が斬った人間から炎が上がり人間にまとわりつくように広がった。


「ぎゃああああ!熱い!熱い!」

「これは……」

「この剣に込められている魔力は多くないわ、けれど簡単に消えない様にだけ魔力を使ったの」

「な、なるほど……」


 隊長の足元には人間がのたうち回る、炎はじわじわと広がり、相手の体を低温の炎が蝕んでいった。


「一瞬で燃やされるよりも辛いかもな……」


 燃やされた人間の兵を見た民間人は、建物の外へ逃げ出した。


「あっ!」

「放っておきましょう、それより早く体内の弾を取って欲しいの」


 もう一人の獣人も人間の兵を倒し、隊長はさらに追撃がないか窓を覗いた。


「もう向かってこないみたいだ、他の建物に入った奴等も無事だといいが……」


 魔女の体内の弾を取る為の準備を始めながら、隊長がふと窓の外を見ると建物から逃げたであろう民間人が複数おり、王都の兵が放った矢の雨に射られていた。


「人間め動くもの全てが標的かよ……この分だとまだこの辺に民間人はたくさんいるだろうに……」

「屋外に出れば矢の雨……仕方がないわ、見つからないよう建物を通りながら門に近づきましょう」

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