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絶滅記  作者: banbe
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人間の国、強襲2

「これは大変なことになったぞ……」


 警備兵に変装し潜入していたルインは、人間達の作戦を扉の前で聞いていた。

 ルインの頭には、人間に捕まった亜人達の末路の話が浮かぶ。

 人目につかない場所に移動し、ルインは聞いた内容を魔力通信機でワドファーのエルフに伝える。


『なるほど肉の壁か』

「既に人間達は動いてる、俺が多少混乱させても各地へ指示が届いてしまう」

『分かった、こちらでも各地に連絡しておく。可能なら各都で捕らえられている亜人を救いながら進攻させよう。東の方は……あの鬼人の事だ、勇者に会えると喜ぶだろう』


 エルフが各地に情報を伝えると北の部隊はエルフの部下ということもあり、すんなりと了承する。

 東の鬼人はチャンスが来たと喜んだ。

 しかし南と西で進攻している魔女とワドファー軍は難色を示した。



「こっちは協力者達の寄せ集めよ、やってはみるけどあまり目的を分けると結託出来なくなるわ」

「こちらは戦線維持で手いっぱいだ!ここから都の中に入るのはかなり難しい!」

『よりによって一番人質が多い西が動けないか……』

「俺達だって人質を助けてやりたいが人手が足りない……」

『そうだな……魔王よ、そちらで西の負担を軽くする事は出来ないか?』

「やってみる!」


 ルインは会議をしていた軍上層部の内の一人に姿を変え、直接伝令を出す。


「おい!西のワドファー軍にもはや、都に攻める力はない。だから、今進攻されている北、東、南に兵を増やせ!」

「ですがこれ以上西を減らすのは……」

「囮と分かってるのに、わざわざ構えてやる必要はない。特に東は既に王都に入られているんだぞ」

「わ、分かりました……伝令!」



「しかし、偽の伝令と人質の指示が西へ到着するのは同じくらいだろう……そちらでも何か対策しとかないと、いざ人質が前に出されたら軍の指揮が落ちる」

『分かってる……先生、軍師として何か策はありませんか?』

「西担当の軍師は君だろうに……そうだな、もう少し後に取っておきたかったが彼を使おう」

『何か策が?』

「これで手札は一枚減ってしまうが仕方ない、君はそこで全力で囮をこなすんだ」

「分かりました……いや、了解!」



 一方南側、魔女達の部隊は意見が分かれていた。


「王都に行くのに戦力は温存したい、わざわざ敵の多い監獄へ向かうのは反対だ」

「しかし人質を取られては攻撃できなくなる」

「俺達に亜人街の人質なんて関係ない!」


 南の部隊の編成は主に南の亜人街の住民と、前の戦争で魔女が住む森に逃れた獣人だった。

 言い争ってるのは亜人街組の大柄な亜人と、魔女の森で隊長と呼ばれていた獣人。

 人間達が使ってくるであろう人質はほぼ亜人街で捕まった亜人で、亜人街組と森の獣人で助けるか意見が分かれていた。


「あんたらには情ってものが無いのか!」

「戦争で人質なんて常套手段だ!相手の策にわざわざ嵌ってやる必要ない!俺達は似たようなことをされた事があるが、人質ごと攻撃したぞ」

「なんだって……」

「それに俺達は人間に攻撃できるって言うからこの戦いに参加したんだ!人質の為にその機会を潰されてたまるか!このまま行かせてもらうぞ」


 両者の意見を聞いていた魔女は結論を言う。


「仕方ないわね……時間が無いわ、二手に分けましょう。片方に無理強いは出来ない」

「戦力は半減か……」


 亜人街組の一人が俯きながら呟いた。


「協力関係というのはお互いにメリットがあってこそだ。どちらかが不利益を被った時点でもう協力じゃなくなる」


 隊長はそう言って王都への門へ向かう。部下の獣人達もそれに続き行ってしまった。


「魔女さんはどっちに着いて行くんだ?」

「あなた達亜人街の方々について行くわ、戦闘経験も森の獣人達より少ないだろうし」

「それは心強い」

「だけど私達は協力関係、人質を助けたら直ぐに前線に合流するわよ」

「ああ分かってるさ、俺達亜人街組も人間には仕返ししたいからな」


 それから南の部隊は亜人街組は兵舎近くにある監獄に、森の獣人は都と王都を遮る門を目指した。

 そして、亜人街組は牢の前に到着する。


「ここがこの都の監獄だ」

「おそらくこっちにも人間の増援が向かってるわ、迅速に救出しましょう」


 南の都はかつてルインが宮殿と大通り周辺、それと人間の軍の指揮系統を壊滅させただけで、相応の人数の人間が残っていた。

 殆どの民間人は軍により外出禁止命令が出され、道端で民間人と鉢合うなどという事は避けられた。

 しかし、自主的に亜人を排しようとする人間達もおり、彼等は民兵となり人間の正規兵に協力していた。

 そして監獄前、人間の兵と民兵は協力して監獄の警護を行っていた。

 魔女達は民家の陰から監獄を観察する。


「この後の事を考えると真正面から挑むのは無謀ね、これの使い時かしら」


 魔女は手荷物からワドファーが作ったボマービーを使った爆弾を出し数人の亜人に渡す。


「この爆弾で兵をなるべくおびき寄せて、爆弾が爆発したらすぐ逃げるのよ?」


 魔女はさらに人員を割き大多数を囮にあてがう、最終的に監獄へ入る数は魔女を入れても十人満たない人数になった。

 その数人で監獄が見える形で民家の陰に隠れる。すると亜人の一人から心配そうに聞かれる


「こ、こんなに少なくて大丈夫なのか?」

「むしろ迅速に行動しなきゃいけないんだから、このくらいでいいのよ」


 怯える亜人達を魔女がなだめていると爆弾を渡した部隊の方向から爆発音が聞こえた。

 音の正体を確かめようと数人の兵が兵舎から出て行き、魔女達はその隙に監獄に入ろうとする。


「さあ行くわよ」

「あ、ああ。向こうの彼等は無事だろうか」

「皆自分の意思でこの戦いに参加したんでしょ?だったら信じなさい!」


 不安がる亜人にそう叱咤し一行は監獄に入った。

 しかし監獄にはまだ人間は残っており、魔女達は突入の勢いのまま、一気に制圧にかかった。


「フレイム!」


 いきなりの奇襲に人間は慌てふためく。その一瞬の動きで魔女は兵と民を見分け、厄介な兵を先に倒した。


「おお、実に鮮やか。これが魔法……」

「まあね、残った人間はあなた達で倒して。私は鍵を探す」


 監獄の見張りは数が少なく、魔女に着いてきた亜人達も簡単に人間を無力化する。

 魔女は倒した人間から鍵を見つけ出し、捕らわれていた亜人達を解放しようと牢の中を確認する。

 だが牢の中には魔女達が想定した数よりも多くの亜人が囚われていた。


「こんなに!?」

「想像よりずっと多いぞ……」


 中には、明らかに国外から連れて来られたと思しき亜人も混ざっており、魔女達は驚いた。

 魔女は連れてきた亜人達に鍵を渡し、次々と牢を開けていく。

 牢から出た亜人に魔女は事情を聴いた。


「あなたはこの国周辺の者じゃないわね、どこから?」

「私はここから南にある獣人達の国から来た商人だ」

「南にある獣人の国って言ったら前に人間達と戦争した所じゃないか、その為に俺達も駆り出されたんだ」


 亜人街の亜人は驚いた。


「何だって……戦争になったのか……」


 囚われていた亜人はその言葉を聞いて落胆した。


「戦争の事を知らないの?だったら一年以上は囚われている事になるわ。あなたは長命種よね、なぜ捕まっていたの?」

「最初は荷物に違法な物があると言われ拘留された、結局何が違法になるかは教えて貰えなかったがね……そしていつの間にか時間が経っていた」

「はぁ……長命種らしい呑気な理由ね。でも南から来て捕まったのはあなただけではないでしょ?」

「その通り、だが他の者は別の場所に移されどうなっているのか分からない」

「被害者は思ったより多いわね……ここ以外にもかなりの数が捕らえられてると考えられるわ」

「なんて事だ、人間達は亜人街どころか他所の国の亜人まで攫っていたのか?」


 そんな亜人の問いに亜人街に住んでおらず、情報統制をされていなかった魔女は答える。


「そもそも距離があるのにもかかわらず、南の国が攻めたのは、この地から帰ってこない国民が多発したからよ。人間の国に属していたあなた達には、情報は届かないようになってただろうけどね」

「初耳だ……いやしかし他にも囚われた亜人が居るとなるとどうすればいいんだ……このまま無視はできない」

「このまま前線に向かうまでにある監獄や留置所からは助けましょう。それ以外は広すぎて無理ね、今探すよりも人間を追い出してから探した方が安全よ」

「だが奴等は捕えた奴を人質に使うと……何とか助けてやらないと!」

「ダメよ!想定以上に数が多かった……本来の目的は王都への進攻よ、進攻経路上にある監獄や留置所のある場所へ寄るからそれで納得して」

「だが人質を使われたら……」

「その時は腹を括るしかないわね、あなた達がやらなくても森の彼らは止まらないもの」

「っく……分かった、これ以上戦力を分散させればこっちも危ないもんな」


 その後捕らわれていた亜人達から戦いに参加する者を募り、避難する者と分かれて移動する。

 それから同じ手口で、留置所や監獄がある施設を奇襲しながら、前線の王都の門前で森の獣人達と合流した。

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