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絶滅記  作者: banbe
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人間の国、強襲1

 西の都、外門の前では壮絶な戦いが繰り広げられていた。


「人間の国はすぐそこだ!俺達が進攻すれば皆が動く!全力で押せええぇ!」

「おおおおおおおお!」


 軍師が前線で味方を鼓舞する。

 ワドファー軍はここまで幾つもの人間の軍の中継基地を乗り越え、ついに西の都の戦いに挑んでいた。

 元々兵の数は少なく、ここまで来るのに戦力を消耗し、多くの兵が既にボロボロになっており、中には体が欠損している者まで前線に出ていた。

 数では圧倒的に勝っているのは自分達にも関わらず、執拗に追撃してくるワドファー軍に、撤退してきた人間達の戦意は折れかかっていた。


「クソクソ!なんなんだあいつら!」

「頼む!王都の軍で奴等を追い払ってくれ!」


 ワドファー軍の進攻を知った人間達は、まず西の都の外門を閉めた。

 そうなれば当然、ワドファーから逃げて来た兵は入れなくなる。戦意が無くなった人間の兵達は自らの国の門を叩いていた。

 西の都の中に居た人間の兵士たちは、仲間を見捨てる形で、門の前に向かって矢の雨を降らせた。


「盾構えー!やはり門は簡単には破れないか……ならば兵器用意!」


 軍師の合図で後方から、鉄製の三角屋根が付いた破城槌や投石器などが運ばれてくる。

 次々と運ばれ並んで行く兵器を見た人間達は、本気で自分達に立ち向かおうとするワドファー軍に驚く。


「馬鹿な……本当にこの国を落とすつもりなのか?確かに今ここの戦況はこちらが劣っているが、ここを落としてもまだ三つの都と王都があるんだぞ?」


 人間のそんな問いに誰も答えるはずはなく、ワドファー軍の攻撃は始まった。


「クソ!都の中では迎撃の準備は出来てるんだろ!?こんな所で犬死してたまるか!」


 この時点でワドファーや中継基地から逃げて来た兵達は、戦意がかなり削がれており、続々と戦線から逃げ出し始める。

 門の前の人間達の抵抗が少なくなっていく中、攻城兵器は瞬く間に戦果を挙げた。

 そして門前での戦闘開始から数時間後、ついに破城槌の一撃が門を破る。


「行けぇ!」


 投石器でボロボロになった門に、破城槌の先端が突き刺さる。そこからメキメキという音を立てついに、門は後に続くワドファー軍に押し倒された。

 軍師は盾を構え一番最初に西の都に足を踏み入れる。

 しかし目の前に現れたのは、門を囲うように馬防柵が築かれ、防衛の準備が万全の人間の兵だった。

 人間達は弓を構えていたが、本当に亜人達が門を破った事に驚き攻撃の手が一瞬遅れてしまう。

 その隙を軍師は見逃さず盾部隊を前面に置き、一気に流れ込んだ。

 門を破った時と違い、なだれ込んだワドファー軍は陣形を一転、今度は人間達に対し防御の形をとり門を守るような布陣となった。

 前線で盾を構えながら軍師は魔鉱石と魔力通信機を取り出し、ワドファー本国に居る自らの師に作戦の成功を報告する。


「こちら追撃部隊、西の都に入った!作戦開始だ!」



「オノ、よくやった……各部隊作戦開始だ!」


 ワドファー本国――。魔力通信機で指揮を任されていたエルフは、各都で待機していた協力者達に一斉に作戦開始を伝えた。



「はぁ……こっちはついさっき全員の合流が済んだ所なのに……」


 南の魔女は亜人街と森の亜人達をまとめ、南の亜人街から南の門を通って都へ入る。


「やっとか、これで勇者に会えるといいんだが」


 鬼人の居る東の都は既に戦うような相手はおらず、順当に王都への門を目指す。


「リーグ様の命令だ!行くぞ!」


 北では、エルフの教え子である森の亜人達が、北の門に攻撃を仕掛けた。


 各地で協力者を連れた魔女、鬼人、エルフの部隊がそれぞれ同じタイミングで各都に攻め入る。

 大多数の人間の兵はワドファーへの対策の為、西側に集められており、魔女達各部隊は多少の抵抗はあったものの、順調に進攻して行った。

 特に鬼人達は東の都はほぼ放棄されているに等しく、障害という障害が無いまま王都付近に到着する。



 王都の王宮では、他の都からも亜人が進攻しているとの報告が入り、軍上層部は混乱した。


「ワドファー軍は囮だったとでもいうのか!?」

「王都の軍も西側に配置してしまって移動には時間がかかるぞ……しかも他の三方向からも同時なんて……」


 人間の兵を指揮していた軍上層部は、皆突然の出来事に頭を抱えた。


「とにかく王都の軍を急がせなければ、他に手はない」


 思わぬ伏兵になすすべもなく、軍の移動を待つことしかできない上層部は、切羽詰まっていた。


「どうやらお困りの様ですな」


 重苦しい空気の会議室に一人の男が現れた。


「お前は……元大臣」


 元大臣は全ての資産を没収され、身なりの貧しい姿で会議室入口に立っていた。


「何をしている、ここはお前の様な落ちぶれた者が来るところではないぞ」

「いや、軍の偉い方々がお困りだという情報を掴んでね。何かお手伝いできればと思って来たんだよ」

「前の戦いで失敗した者が、今更何を」

「だがあなた方も今は策が無く困ってる状態なのだろ?」

「むぅ……」


 大臣の言葉に会議室の面々は閉口する。


「なに、指揮を任せろなんて事言わない。ただ私が持っている策を幾つか試してはいかがかなと」

「策だと?」

「そう、先ずは奴等の攻撃を防ぐ為、捕らえてる亜人を盾にして時間を稼ぐというのはどうかな?それなら伝令だけを走らせるだけで済む」

「確かにそれなら手早く時間稼ぎは出来るな……各都には捕らえた亜人など幾らでもいる。特に西は前の暴動で大量に亜人を捕らえた」

「また私が得た情報だと、東の都から来ている勢力は多くが魔獣だとか。これは勇者にやらせればいい」

「そうか、彼は戦争だと動かないが魔獣退治なら話は別だ」

「よし、その策を採用しよう」

「なら私は勇者に声を掛けてくるとしよう」


 元大臣が部屋から去ろうとすると、軍の上層部である一人が質問する。


「随分と潔いな、以前のお前なら代わりに何かしら要求があっただろうに」

「今はあの魔王を倒すのが先決だろう?」


 会議室から去る際、元大臣は復讐心を丸出しにし、周囲を威圧していた。


「……奴は魔王のせいで全てを失った様な物だからな」

「我々も亜人の盾の準備だな」

「なるべく女子供が良い、そうすれば亜人共も進攻を止めるだろう」

「北と南は王都に入られる前に止めなければ」


 会議が終わり軍上層部は動き出す。



 王宮のある場所で大臣は勇者に話しかける。


「またこんな場所で引きこもってたのか……」

「戦争は俺の出る幕じゃないからな」

「そうも言ってられないかもしれないぞ、東の敵は魔獣を使う部隊らしい。幾ら戦争に加担しないとは言えこの国を脅かす魔獣は放っておけないだろう?」


 勇者は無言で立ち上がった。

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