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絶滅記  作者: banbe
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東の技術5

 その後、エルハイナの共生への熱意を聞きながら最後になるであろう食事会は終わり、人間が寝静まった深夜。ルイン達は動き出す。

 ルインはマントで、魔女と鬼人は香水で人間に変装し、宮殿を抜け出し研究所へとたどり着いた。

 三人がまとめた情報では、目的の建物はルインが検査を受けた建物の裏にある研究所。

 この研究所はかなり広く二階建てで、中では複数の研究が行われているという事まで判明した。職員ですら全てを把握してる者は少なく、内部構造が分からないまま魔獣の実験場を探さなければならなかった。


「こう広いと分かれて探した方が効率的ね」

「分かった、だったら俺は一階を探す」

「なら私達は二階を手分けして探しましょう。見つからなければ一階のルインと合流って事で」


 三人は建物に入ると階段で分かれ、それぞれの場所を探す。


「魔獣の研究なんだから、そんなに狭い場所じゃないと思うんだけどな……」


 薄暗い中、一階を探すルインは順々に部屋を確認していく。しかし、いつまで経ってもそれらしいものは発見できなかった。

 ついに廊下の突き当たりに辿り着いてしまい、上を探している二人と合流する為、引き返そうとする。しかし、突き当たりの壁に何かが挟まっているのを発見する。


「ん?壁に?」


 近づいてよく見てみると紙が挟まっており、廊下の突き当たりは隠し扉になっていた。

 隠し扉を開け紙を手に取って見る。

 その紙は昼に研究所でエルハイナに見せられた、グラフの書かれた紙だった。


「これは当たりかな?」


 ルインは隠し扉を開けた状態でそのまま奥に入って行く。

 隠し扉の中は灯りも無く下る階段になっており、下った先の出口からは淡い緑の光が漏れていた。

 ルインは壁を伝いながら慎重に降りて行き、ついに階段を下りきる。

 そこには広い空間が広がっており、左右両方の壁際には魔獣が入った透明な容器が壁いっぱいに並んでいた。


「見つけた……!」


 容器の中の魔獣はぐったりとしていて、単に意識が無いだけなのか死んでいるのか見ただけでは分からない状態だった。

 緑の光は魔獣と一緒に容器に入っている液体が反射した物で、光源は奥の扉から微かに漏れていた。

 その扉は窓など付いておらず、中の様子を探る為ルインは扉に耳を当てる。

 中からは雑多な魔獣達の鳴き声のほかに女性の声が聞こえてきた。


「もし失敗すればこの都が!……そうですが……」


 声の主はエルハイナと直ぐに分かる。

 エルハイナは誰かと話している様な喋り方だが、相手の声は魔獣達の鳴き声のせいかルインには全く聞こえなかった。

 相手の正体を確かめようと、ルインは集中してエルハイナの言葉を聴く。

 しかし、耳を澄ませて聞こえたのは魔獣達の鳴き声に紛れ、助けを求める小さな声だった。

 その声を聴いたルインは魔女達を待つ事も無く、扉を乱暴に開けて中に入る。


「魔王!?何故ここに!」


 部屋の中でルインが見た光景、それは先ほど通ってきた部屋と同程度の広さで幾つもの檻の中に閉じ込められた魔獣達、そして亜人だった。


「……見られましたか」

「これはどういうことか説明してもらえるかな?」


 ルインは檻に入った亜人に近づきながらエルハイナを問いただす。

 亜人は一人だけではなく数十人もおり、近づいてきたルインに助けを求める。


「……ここに居る全ての生き物は研究材料です」

「この亜人も?」


「勘違いなさってるようなので言っておきますが彼等は罪人です、死罪の罪だったのでここに運び込まれました」


 エルハイナの説明に亜人達は一斉に反論する。


「嘘だ!俺はいきなりここに連れ去られてきたんだ!あんたっ頼む助けてくれ!あの女はここで魔獣や亜人を使って実験してるんだ!」


 檻に入った亜人はルインに懇願する。


「彼は死罪になった身!助かる為に幾らでも嘘を吐きます。騙されてはいけません!」


 エルハイナも檻の中の亜人の言う事を真っ向から否定する。


「子供まで居るね、仮に彼等が死刑囚だとして何の罪を犯したの?」

「それは……国家反逆罪です」

「こんな子供まで?……それは本当なのかみんなの意見を聞かせて貰えないか!」


 ルインは途端に大きい声を出し誰かに問いかける。

 エルハイナはルインの行動に一瞬困惑するが、直ぐに自ら答えを導き出した。


「まさかあなた……魔獣と会話を……」


 言葉を終える前に、周囲の魔獣達はルインの呼びかけに答える様に雄たけびを上げた。


「くっ」


 魔獣達の声量にエルハイナは思わず耳を塞ぐ。


(その女は亜人を買っていたぞ)

(引き渡した人間に金を渡している所を見た!)

(子供は親が待っていると言って連れてきていた)


 魔獣達の様々な証言がルインの頭の中に入ってくる。


「へぇ亜人を買い、子供は騙して攫ったらしいじゃないか」


 エルハイナにも魔獣の声は聞こえていた様で反論を諦める。


「……これまでの様ですね、そうです私達は魔獣や亜人の実験を続けていました。ですがこれは科学を発展させる為に必要な犠牲です!」

「必要な犠牲か……だったら俺達も調べる為、人間を捕らえ実験しても良いんだね?」

「!……そ、それは……法が……」

「ワドファーには人間が守られるような法はないから安心してほしい」

「それは……人間が保護されると定められた盟約への違反行為です!」

「この国の法の立場をひっくり返しただけだよ?立場を逆転しただけで通らなくなる理屈があるなら、それは単なる差別だ!」

「……あなたはもしかしたら、世界のバランスを保つ為、暴走した人類に対する抗体なのかもしれませんね」


 エルハイナは静かにそう言うと白衣の懐から丸い物体を出す。

 ルインはそれに見覚えがあった。


「あれは……魔獣を使った爆弾!」


 エルハイナはルインに向かって丸い物体を投げた後、さらに奥にある扉から逃げて行く。

 丸い物体はルインの足元に叩きつけられ、爆発せずに割れてしまう。


「不発?」


 身構えていたルインは逃げたエルハイナに反応できず、すぐに後を追う事は出来なかった。

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