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絶滅記  作者: banbe
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森の魔女2

 夜、ルインは、村に残る最後の住民と村から逃げる準備をしていた。

 住民達が逃げる先は森の近くだと聞き、ルインも同行する為、馬に乗せていた荷を背負った。


 しばらくすると、村の向こうから鎧を着た兵が馬に乗って大きな荷台、そして兵に守られた立派な馬車が村に向かって来るのをルインは確認する。


「想定より早いね……」

「奴等の使ってる馬は俺達が育てた馬だからな」


 住民の殆どは既に荷物をまとめて村を脱出し逃亡を始めていた。

 幸いにも、人間の国から離れるほど人間の影響力は弱まり、捜索は困難になる。

 村の長は、この場をやり過ごして遠くに離れられれば、強力な馬を持つノバ族なら十分逃げられるだろうと言った。

 最後の荷を馬車の荷台に積んでいたルインと住民のおじさんは、鎧の兵に見つかってしまった。


「さあ、お前達はこれに乗って亜人街へ行くんだ」


 兵は荷台を指し、住民に乗るよう命じた。


「他の住民はどこだ?」


 他の兵達も、行方の分からない住民を探してルインと住民のもとに集まってきた。

 ついには立派な馬車に乗っていた豪勢な身なりの男が降りてきて、ルインと住民の前に立つ。


「移動する準備をしていたのか?だが、お前達に必要な物は全てこちらで用意する。だから、荷物なんて必要ない」


 男は逃亡の準備を見て、亜人街へ向かう準備と勘違いしたようだ。


「悪いけど、ここの住民はあんたが持ってきた荷台には乗らないよ」


 ルインが男の前に立ちはだかる。


「なんだお前は?この村の者じゃなさそうだが……」

「おじさん!行って!」


 ルインが合図を送ると、荷物を準備していた最後の住民が馬にまたがり走り出した。


「逃げる気か!追うぞ!」


 一人の兵が他の兵と追おうと号令をかけるが、ルインが道から退かず詰まってしまう。


「何をしている!両側から回り込んで奴らを追うんだ!」


 豪勢な身なりの男は兵達に命令し、言われた通りに道を左右に逸れ四人の兵が住民の荷馬車を追って行った。


「しまった!」

「さて亜人、何者だか知らないがこの私の邪魔をしてタダで済むと思うなよ……」


 男は数人の兵と共にルインに、にじり寄る。


「今は相手にしてる場合じゃ……いやこいつらの馬なら……?」


 ルインはわざと隙だらけのまま一人の馬に乗る鎧の兵に向かう。当然、兵は持っている槍でルインを突くが――。


「ぐあぁぁ!」


 その場を見ていた誰もが困惑する。

 槍の先は折れ、兵の鎧の顔面に刺さっていた。


「な、なにをした!」

「よし、こいつ借りて行くぞ」


 兵が馬から転げ落ちた後、ルインはその馬に乗り走り出す。


「ええい!兵よ奴を止めろ!」


 男の声で兵達は走り始めたルインの前に出て槍を突き立てる。

 ルインはスピードを落とさずそのまま槍に突っ込む、だが、なぜ槍はルインを空振り、そればかりか兵達はルインの乗る馬に邪魔され、同士討ちをして倒れた。

 その光景を見た兵は攻撃するのを一瞬躊躇い、道を開けてしまった。その隙にルインは住民を追った。


「何をやっている!さっさと奴を追わんか!」


 男に叱咤された兵達は走り去ってしまったルインを追いかけ、男もまた、乗ってきた馬車ではなく倒れた兵の馬に乗りルインの後を追う。



「確かにこの馬、俺が乗ってきたのとは比べ物にならないくらい速くて扱いやすい」


 ルインは先に行った住民達を追いながら馬で走る。


「何人か行かせちゃった、おじさん無事だといいけど……」


 しかしルインの願いとは裏腹に前方に馬に乗った兵四人に囲まれながら走っている荷馬車を見つける。


「まずい!」


 荷馬車を操っていた住民は傷付けられてはいなかったが、進行が妨げられるのは時間の問題だった。


「仕方ない!」


 ルインは荷馬車に近づこうとするが兵の一人が気づき、近づくのを阻止しようと横に並びルインを槍で突く、しかしまたも先が折れて兵自身に当たる。

 一人減り隙が出来た荷台にルインは飛び乗ると、他の三人の兵もルインに向け槍を振るう。

 しかし突如馬が暴れ出し三人の兵は落馬する。


「ふう、これで何とか振り切ったか……?」


 安堵したのも束の間ルインを追ってきた男と兵が徐々に近づき始める。


「まだ来る、しつこいなぁ。おじさん、このまま先に行った住民と合流するのは危険だ」

「じゃあどうすれば」

「馬の速度を落として、わざと彼等に攻撃させるんだ」

「えぇ、危険だろ」

「大丈夫。ノバ族を連れて行きたいんだからおじさんは狙われない、狙われるのは俺だけさ」

「分かった……じゃあ速度落とすぞ」


 住民のおじさんは先程のルインの攻防を見ていたせいか、すぐにルインの言いたい事を理解し、馬の速度を緩める。

 すると、ルインが乗る荷馬車の速度は追ってきた兵や男の馬と並走するまでに落ちた。


「私の私兵を随分減らしてくれたな、だが逃げても無駄だ」

「あんた達を倒せばこのまま逃げられそうだけど?」

「それをやったらノバ族は永久に札付きになるぞ?」

「な、なんだって!」

「今ならまだ間に合う大人しく私の元へ来い」

「耳を貸しちゃダメだ。連れていかれても扱いは変わらない」

「しかし……」

「関係ない奴が口を挟むな!お前達あいつを殺せ!」


 男の合図で兵達はルインに槍を振るうがやはり槍はルインには届かず、馬が暴れ兵は次々と落馬していった。


「何なんだ貴様は!こうなれば!よこせ!」


 男は並走する兵から槍を奪うと荷台の車輪を突く、すると車輪は槍に絡まり荷台ごと大きく吹き飛ばした。


「うわぁ!」


 荷台が飛んでいったことでノバ族の住民は落馬し、荷台に乗っていたルインも宙に舞うが一緒に落ちた積み荷クッションとなり、怪我一つなかった。

 飛んだ荷台は男と兵達に落ち、追ってきた者を全て巻き込み荷台に潰されてしまう。


「おじさん!大丈夫!?」

「痛てて……私は何とか」


 男の一突きで被害を受けたのは男と兵達だけだった。

 残った兵も荷台に潰され死亡。男は脚と胸に車輪の破片が刺さり、おびただしい量の血が流れていた。


「く、くそぅ……何もかもが裏目に出る!お前はいったい何なんだ!」

「それをこれから調べに行く所なんだよ」

「わ……私が帰らなければ国の兵がこの辺を探しに来るぞ。そうなればお前も終わりだ……」


 血を流しすぎたせいか、男はどんどん覇気が無くなっていく。


「お前達は……逃げられ……」


 男はそのまま事切れた。


「……おじさん、荷物バラしちゃってすいません」

「こうなってしまったら仕方ない、後は馬に積めるだけ積んで行く」

「手伝います、合流地点へ急ぎましょう」


 二人は落ちた荷物を馬に乗せ直し、先に行ったノバ族が待つ場所へ急いだ。



 ルイン達がノバ族と示し合わせた合流場所は、魔女が居るという森を大きく迂回した森の反対側だった。


「この辺りの大草原は我々の同胞たちが多く住んでいます、商売する為国の近くに行きましたが人間にはもう関わりたくないですね。森を挟んでここまで来ると人間もそう簡単に来れないでしょう。ここまでありがとう」


 合流した長はルインにそう言って頭を下げた。


「時間を稼いだだけですよ、でもこれで安全なんですよね?」

「はい、人間もこの森以上は来ないでしょう、我々の問題に巻き込んですいませんでした。これはほんのお礼です……」


 長の後ろに居たノバ族が、他の馬より大きく黒い馬を連れて来た。


「私達が育てた馬です、貰ってください」

「良いんですか?」

「あなたは何やら訳ありの様子、乗って来た馬じゃこの先大変でしょう」

「……ありがたく貰っておきます」


 ルインが手綱を受け取ると、馬はルインの手を舐める。


「ははっ人懐っこい、あと良ければ森の魔女の居場所について教えて貰えませんか?」

「魔女はこの森の真ん中、大きな沼の傍に居を構えています。ですが最近森に盗賊が現れるので気を付けて下さい。亜人は襲わないみたいなのですが……」

「俺なら多分大丈夫です、馬ありがとうございました」

「魔女に会ったら今回起こった事を伝えてくれると助かります。どうか気を付けて」


 ルインは貰った馬に荷を乗せた後、自身も乗りノバ族と別れた。

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