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絶滅記  作者: banbe
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東の技術3

 一行はエルハイナの案内で、この都に宿泊する場所に向かうべく、来た時と同じ馬車で移動する。

 馬車が止まったのは都の中心、領主の宮殿だった。


「なるべく急ぎますが二、三日はここで結果を待ってもらいます。ここなら広いし皆さまも人の目に触れなくとも過ごせます」

「そう言えば全部の都の宮殿に入ったけど、泊まるのは初めてだなぁ」

「外には出歩かないようにお願いします、代わりに用事があれば使用人を付けるので何なりとお申し付けください。私はまだ少し仕事がありますのでこれで」


 宮殿の前で下ろされたルイン達は、事情を知っている兵達に促され宮殿の中へ入って行く。宮殿の中では先程エルハイナが言っていたであろう使用人と思われる人物が挨拶する。


「ようこそお客様、私が皆さまの身の回りをお世話させていただく執事でございます。まずはお三方の部屋にご案内いたします」


 使用人は丁寧に頭を下げさっそくルイン達を部屋まで案内する。


「へぇ三人別の部屋を用意してくれるんだ」


 それぞれ一室ずつ使える事にルインは驚く。


「賓客ですので当然です、ご夕食はエルハイナ様の希望で皆さまと一緒に取りたいとおっしゃってましたので、エルハイナ様のご帰宅をお待ちください。それまではどうぞご自由にお過ごしください」


 使用人はそれだけ言うと下がって行った。

 三人は自分達の部屋を決めた後ルインの部屋に集合する。


「なんとか潜入には成功したね」

「二人の時に話したんだけど、これからはキドウも私達と行動してくれるそうよ」

「ああ、俺はこれから勇者を追う」


 早速の報告でルインは喜んだ。


「さて、妨害の件だけど、馬車の中から少し外を見たけど研究所っぽい建物はあそこに固まってたわね」

「どうやら研究機関と住宅街は分かれている様だな。おそらく建物の区画が決まっているのだろう」

「いつの間にそんなの見てたの?でもそれなら行った所がハズレでも調べるのは楽そうね」


 魔女は鬼人の洞察力に感心する。


「検査結果が出るまでに魔獣を研究してる所の特定しなきゃね。でっち上げた理由とはいえそれ以上滞在するのは不自然だし」


 東の都は亜人が全く居ないので、ルイン達がそのまま出歩けば非常に目立つ。その為、都の中の研究所を探すのは困難に思われた。

 なのでそれぞれは行動を決める。

 魔女は日中は魔術で、深夜には空から目立たないように目的の施設を探し、ルインと鬼人は日中は使用人から話を聞き夜にはマントや香水で変装し探す事にした。


「研究所捜索の方法は決まった。後は潜入方法だけど、強行突破は最後の手段として……」

「よく知らない研究所を無理やり突破するのはリスクがありすぎるのもね……まあ夜に忍び込むのが王道かしら?ある程度魔法でカバーできるし」

「なんにしてもまず魔獣を研究している場所だね」


 話の途中で部屋の扉がノックされる。


「誰?」

「執事でございます。エルハイナ様が戻られ、お食事の準備が出来ましたのでお呼びしに来ました」

「そうか、今行く」


 その後、使用人に付いて行き豪勢な食卓へと入る。


「ほう、これは豪勢な。単に付いて来た俺もこんな良い目に合えるとは、王でなくなってもルイン様様だな」

「はは……」


 鬼人の言葉にルインは苦笑いする。


「ではどうぞ」


 使用人達は既に座っていたエルハイナの対面の椅子を引き、三人は座る。


「私の都合でお待たせしてすいません。どうぞ好きなだけ召し上がってください」


 エルハイナは勧めるが、魔女と鬼人はすぐに手を出さず、ルインが率先して料理に口を付ける。

 ルインの無事を確認した二人はようやく料理に手を付けた。


「元王とは言え魔王の方が率先して毒見を。ふふ……やはりあなたの力はそういう風に使われるのですね」


 一連の行動を見ていたエルハイナは静かに笑う。


「使える物は使わないとね」

「さて私から報告があります。北の都の死者の件ですが……」

「北の都の?」

「はい、ディムワズから聞いています。北の都で出た犠牲者の検死を頼むと」

「ちょっと待って、あの竜巻の後ディムワズは死んだのよ?そんな頼みなんてできないでしょう、まさか生きているの?」

「いいえ彼の遺言です、もし自身が魔王に敗れたらその犠牲になった者全て検死してくれと。結果、北の都の死者の大多数が溺死でした。水祭りの最中大雨を伴う竜巻で雨量が増大し元々あった都の水が溢れたのが原因かと。ディムワズの検死も行いましたが彼は吐血による血が気管に入り呼吸が出来なくなり窒息、これもある意味溺死といえます」


 魔女は続けて聞く。


「同時期に西の都から溺死者は居なかった?」

「……居ましたよ、結界が得意な術師が。入浴中に足を滑らせ湯船で気絶、そのまま朝まで誰も気づかず……これも溺死でした」

「これであの竜巻はルインの力という事になったわね」

「でも俺の意思で力が使える訳じゃないからあんまり自覚は無いな……」

「あなたの力は故意は勿論事故だろうと、加害に自覚がなくても容赦なく結果を返す力という事が分かりました」

「ルインの力はディムワズの仮説通りという事になった訳ね」

「勿論この事は我が国の王都にも報告を上げました。その結果出た答えが魔王とは敵対しないという事。これは我が国の総意と思って頂いて構いません」

「それでこの接待ねぇ」

「ほう、ならば人間との戦いは事実上勝利という事か。個人が国に勝つなんてすごいな」


 黙って話を聞いていた鬼人は食事を続けながら言った。


「ははは……でも人間が降参しようが、本質が変わらなければ意味ないよね?」


 鬼人の言葉に困りつつもルインは魔女に話を振った。


「そうね、ルイン今まで一方的に攻撃された被害者なんだから、敵わないから仲良くしましょうなんて虫が良すぎない?」

「それに亜人の迫害を辞めない限り俺だけ特別扱いしても変わらないよ、人間がどうしようが俺は被害を受けている亜人の間に入るつもりだし」

「……それは上に報告しておきます」


 以降、食事はルインの検査の待ち時間の説明などの話をして終わる。

 そして、翌日から三人は宮殿の中で研究所の捜索を開始する。

 魔女は魔術で探すため部屋に引きこもり、ルインと鬼人は使用人など宮殿の人間から世間話をすると見せかけ街の様子をうかがった。

 使用人達は人間だったが世間話も仕事の内と割り切って当たり障りのない話をする。しかし鬼人の他の地域や国の話を聞きつい故郷自慢を始めてしまう。

 ルイン達はその会話の中にある地理の情報を記憶し所々繋いでいった。

 そして夜は、不自然に思われないように一人が残り、二人が窓から外に出て研究所を探しに行った。

 研究所捜索は続き、検査結果が出たと告げられたのはルイン達が都に入って二日目の夜、夕食の場での知らせだった。


「……という訳で明日は一緒に研究所に向かってくださらないでしょうか?できればお一人でお願いしたいのですが」

「……一人でか、分かった」

「明日魔王に結果を伝えればひとまずあなたの頼みは完了します。その後ぜひ亜人と人間の共生について話し合いませんか?私は本気でワドファーと手を取り合うことを目指しています」


 食事を終え部屋に戻る三人。

 今までは周囲の人間の目もあって、なるべく三人で集まらない様にしていたがさすがに翌日動くとなるとそうも言ってられなくなる。


「いよいよね、何とか研究所の場所は絞り込めたけど」


 魔獣を研究している建物は、人間達の話と魔女の魔術でどうにか判明した。


「場所はルインの検査をした研究所の後方の広い建物、でも内部がどうなってるかはさすがに分からないわね……」

「やはり直接潜入になりそうだな、後はいつ仕掛けるかだが……」

「明日の夜にしよう、共生の妄想話を聞くのはちょっと辛いけどね」

「ならば明日は戦闘に向けて準備した方が良いな」


 方針が定まり三人は休んだ。

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