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絶滅記  作者: banbe
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東の技術2

「どうぞお座りください」


 ルイン達は案内されるまま、用意された席に座る。


「俺がここにいるのを知ってたのか」

「数日前、魔王を見たという報告を近くの村人から聞いていました。となれば他の都同様、ここ東も狙われていると思うのは当然でしょう」

「俺は自分から都をどうこうしようとした事はないよ。で、この対応は一体?」


 敵を歓迎する様な豪勢な出迎えに、ルインは疑問を投げかけた。


「私達に抵抗や敵意がない意思表示です。かつてのパーティの仲間……領主達は力や知恵で貴方に抵抗しようとしました、それもあなたが知る通りの結末になりましたが……。ですが私は戦う力が無いヒーラー、あなたに手を出さなければこちらも被害はないはずです」

「なるほど……それでこの対応か」

「私達の国とワドファーは新たに同盟を結ぶことになりました。あなたはワドファーから追われたはず、なぜこの都へ?」

「ワドファーの事は伝わってるのか。ここには技術があると聞いた、だったら俺の種族と力の事も何かわかると思ってね」


 妨害工作に来たことを正直に言う訳にはいかず、ルインは咄嗟にごまかした。


「たったそれだけ……?」


 あまりに簡素な答えにエルハイナは驚く。


「たったそれだけとは酷いな。種族は滅んだんだろうと思ってるけど、この力は制御もできてないんだ。今までも力の事を調べたけど結局わかってない。ワドファーを追い出されて時間が出来た今、調べてもらおうと思ってね」

「ワドファーの内情は詳しく知りませんが、魔王であるあなたが追い出されたのですか?」

「そう、民は当初抵抗を望んだけど長引く戦いに着いていけなくなった。だから作戦で遠征してた俺を放りだした。俺もここまで国と離れたらどうにもできないからね」


 ルインは嘘とも真実とも言えない理由を語る。


「そうでしたか……ワドファーと手を組めれば残る脅威はあなただけ。ですが今私ではあなたを倒せない。ならばこの都と……国と共生していただけませんか?こうやって話ができるのは分かりました。信頼しろとは言いません、ですがこの都に利用価値を見て欲しいのです」

「勝てないと知ると共生しろ、か。人間はずいぶん都合がいいね」

「あなたがこれからどうするのかは知りません。ですが、せっかく争いが静まろうとしています。望むなら種族と力の事は調べましょう、他に知りたいことがあるならいくらでも協力します。なのでこれ以上両国に混乱をもたらさないでいただきたいのです」

「今まで混乱をもたらしていたのは君達人間だよ?」


 ルインの静かな返答に静寂が訪れる、しかし先に沈黙を破ったのはエルハイナだった。


「確かに差別をし争いを持ち込んでいたのは人間側です。ですがそれも新たに同盟を結ぶことで解決しようとしています」

「……」


 この言葉でエルハイナが現状を正しく理解してないことをルインは確信した。

 現状のワドファーは力を温存し隠すため国を混乱させてまで人間達を受け入れた。そんな中、差別が無くなるはずがない。それ所か調子に乗った人間は更に差別を助長するだろう。

 しかし今は工作の為、東の都に滞在しなければならない、ルインは訂正する事なくエルハイナの言葉を受け入れる。


「……あなたの言い分は分かった。じゃあ俺の力を調べてくれるんだね。だったら俺からは動くことはないよ」

「はい、できるだけあなたの力になりましょう。そうだ、魔王と同時に、他のお二方も健康診断してはいかがかしら?ただ待っているのも退屈でしょう」


 魔女と鬼人は目を合わせ頷いた後答える。


「私はパスよ、人間なんて信用できないもの」

「同じく、この地の人間は亜人を見下し過ぎている」


 エルハイナに誘われた二人はきっぱり断った。


「そうですか……分かりました、では魔王一人だけの検査をさせていただきます。ですがまず今回の騒動を解決してからです。訴えにあった小瓶は人間達の物。どうか彼等に返して貰えないでしょうか?」

「うーん別にいいけど、俺達は亜人に暴行してた彼等を止めただけだ。あの小瓶はそのお礼で貰った物なんだ」

「……経緯は分かりました。彼等には小瓶が戻ればこれ以上追及しないと念書を書かせます。これでこの件は手打ちにして貰えないでしょうか?」

「暴力を振るっていた亜人に謝罪してもらいたい気持ちはあるけど、海の中に帰っちゃったし……本当小瓶が彼らの物ならそれでいいよ」

「そう言ってくださると助かります、では彼等の荷物を持って来てください」


 エルハイナはルインに礼を言った後、兵に没収したルイン達の荷物を持ってくるように命じる。

 すると部屋の中に全員が持っていた剣や杖、食料などが運び込まれてきた。


「没収したものはこれで全部です、確認してください。小瓶が戻ればあなた方は正式に私の賓客として迎える事になります」


 言われた通り三人は荷物を確認する。


「俺の荷物は全部あるね」

「私も問題ないわ」

「俺もだ」


 三人は荷物の無事を確認した後、ルインは小瓶をエルハイナに渡した。


「はい、これが言っていた小瓶だ」

「確かに、確認しました」


 ルインが渡した小瓶を見て魔女は尋ねる。


「そう言えばその小瓶、助けた亜人は若返りの薬って言っていたけど本当?魔術でも組み込んでいるの?」


 エルハイナは慌てて否定する。


「いえ、あれはそういう振れ込みの単なる化粧品ですよ」

「化粧品?」

「そう、若返ったように見えるくらい肌に潤いを与える化粧品です、あれを作ったのは私なんですよ。おかげさまで結構な売上が出ています」

「なんだ……だったらあれには魔術的な物は入っていないのね?」

「ええ私は魔法は回復系しか使えませんし、あなたやマリアみたいに魔術に造詣が深い訳じゃないので」

「これで騒動は解決だね」

「はい、確かに。これであなた方はこの都にとって賓客です、では早速魔王の力や出自を調べる為、研究所に向かいましょう」

「研究所?」


 三人は兵舎から出るとエルハイナと共に、豪華な馬車に乗せられる。


「すごい、王として王都に行った時以上に豪華だ」


 馬車の中も豪華で椅子は柔らかく、窓には外から分からない様布が掛けられていた、しかし、中は暗くはなく光る魔法石が中を照らしていた。


「賓客ですので、それにしっかりあなた方を隠しておかないと……亜人を特別扱いすると、それを気に食わない人間も出てきます。そんな輩に馬車を攻撃でもされたら……」

「俺の経験上そこから大混乱が生まれるだろうなぁ」

「私は亜人に抵抗はありませんが、多くの人間はそうはいきません。ですがこの馬車なら誰が乗ってるのか分かりませんし、こんな豪華な馬車に何かしでかす愚かな者など、この都にはいないはずです」

「なるほど、この馬車は俺達の為じゃなくて都の人間を守る為か」

「さて、研究所までしばらく時間があります。何か聞きたいことなどあれば答えますよ」

「……」


 ルインが迷ってると鬼人が手を上げ質問する。


「俺からいいか?海の向こうから来たのだが……」


 鬼人はこの国へ来た目的を話し、前の魔王の事を聞いた。


「今更奴の仇を討とうなんて考えてはいない、だが墓や亡骸が残っているのなら教えて欲しい」

「なるほど最後に戦った私達ならそれを知ってるんじゃないかと」

「魔女からある程度の事は聞いた。勇者の仲間ならより詳しい事を知っているんじゃないのか?」

「戦った場所はここより南の国で今は荒廃しています。墓があるかどうかはちょっと……魔王のその後、持ち帰った角がどうなったか私も知りません……彼なら、勇者なら何か知ってるでしょうけど……ご期待に沿えなくてすいません」

「いや……だが勇者か。やはりそう簡単には会えないんだろ?」

「彼は今や国の切り札、私達も本来そうだったのですが……今の彼は私以上に自由はないはずです。彼が外に出るのも誰かに会うのも国の許可が必要です」

「そうか……」

「魔王がここにいるなら勇者がここに来る可能性は無いの?」


 魔女は鬼人に続けて聞いた。


「さぁ……少なくとも今の所来るという情報はありません。王都の方々は自分達の身を守らせる為彼を身近に置きたがるでしょうし」

「勇者も大変なのね……」



 その後も検査の事や技術の事を聞いていると研究所に到着する。

 一行は馬車を降り周りの人間に見つからない様素早く建物の中へ入り、ロビーで待つ事になる。

 エルハイナは受付へ向かい女性に話しかけた後、ルイン達の元へ戻ってきた。


「後は彼女の指示で動いてください。私は検査の準備があるのでこれで」

「あなたが直接検査するのね」


 魔女は尋ねる。


「彼の力は知られています。なので責任者である私が直接検査させていただきます」


 そう言うとエルハイナは研究所の奥へ消えて行った。


「検査はあちらで行いますが、お付きの方々は二階に施設関係者用のラウンジでお待ちください。では魔王様こちらへ」

「じゃあ後でねルイン」


 魔女と鬼人は受付の女性とルインを見送った。


「本当に待つつもりか?」


 鬼人は魔女に尋ねる。


「まあ、とりあえず様子見ね。どこに何があるか分からないと妨害も出来ないし。あなたはどうするの?」

「それに関しては思ったことがある、ラウンジで話そう」



 ルインは受付の女性に更衣室の前まで連れてこられ立ち止まる。


「この中で検査着に着替え奥の扉へ向かってください」

「奥はどうなってるの?」


 ルインは少し警戒し受付の女性に聞く。


「奥ではエルハイナ様がお待ちしています」

「……わかった」


 覚悟を決めたルインは更衣室に入って行く。

 中で生地の薄い検査着に着替えたルインは、更衣室の奥の扉でエルハイナと再び対面した。


「お待ちしてました。検査項目が多いので手早く始めましょう」

「あなたは一人なんだな」

「……あなたの力の事もありますし何かあっても、巻き込む人数は少ない方がいいですから」


 エルハイナはそう言うと更に部屋の奥に進みルインも着いて行く。奥の部屋はこじんまりしていたが何か機械が多く置いてあった。


「下手に触らないでくださいね、今も動いている物がありますので」


 ルインとエルハイナは奥の机の前で椅子に座る。


「では始めます、まずは簡単な事から……」


 触診から始まり口の中を確認したり、至って普通の健康診断が始まった。


「……人型亜人の特定は一番難しいんですよ、身体に何か目立った特徴があればいいんですが……」


 その後もルインは機械を使い色々な計測をしたり、唾液、爪なども採取される。


「さて、これで最後ですが……一番の難関でしょう」


 エルハイナは注射器を取り出す。


「それは?」

「これは血液を採取する道具……ですが」

「血液……そうか」

「そう、今からあなたの体を傷つける行為をします。大丈夫あなたの力は既に知られていて、加害側は同等の被害を被るだけ、なので私は死ぬことはあり得ない」


 エルハイナは半分自分に言い聞かせながら一息つき、ルインの腕に注射の針をあてがう。


「ではいきます」


 注射器を押し込もうと力を入れる、しかしルインに注射の針を刺そうとした瞬間、エルハイナの腕から血が流れ白衣を赤く染めた。


「くっ……」


 エルハイナは痛みで顔をしかめ、手を止めてしまう。


「やっぱり無理か……」


 ルインはエルハイナに代わり注射器を自ら持つと一呼吸して自分に刺した。


「いつ……」


 エルハイナは自分の血がルインに落ちない様片腕で器用にルインから血を抜く。

 結果エルハイナの白衣の赤い染みさらに広がった。


「血を抜いた結果も返ってくるのですね、このままあなたに止血をすれば私の血も止まるのでしょうか……」


 エルハイナはルインの腕から針を抜くと手早く止血する、しかし自身の腕の流血は止まる事は無かった。


「これは自分で止血しろって事ですね……あなたの血も処置したんだからその結果も返ってきてくれても良いのに……」


 エルハイナは愚痴をこぼしながら自分の腕の止血をする。出血の原因は腕に着けていた腕章のピンが外れて刺さった事で負った怪我が原因だった。


「さて一番重要な血液は採取できました、なるべく急ぎますが検査には時間がかかります。その間窮屈でしょうが我々が用意した場所で過ごして貰います。都を亜人が歩くと混乱が起きかねないので」

「……分かったよ」



 ラウンジでは魔女と鬼人がルインを待ちながら、小さな声で話し合っていた。


「領主が直接出入りする研究所、まずここを調べたいわね」

「だがやはり明るい内だと人が多い……詳しく調べるなら夜か」

「で、そっちは?さっき思うことがあるって」


 魔女はお茶を飲みながら鬼人に尋ねた。


「それなんだが、どうもこの都では自由に歩き、傘の代わりを探すなんて事出来そうにない。そしてやはりスタナの事は気になる、討った勇者の仲間も知らないとなると、俺は勇者に会い問いただしてみようと思う。幸い君達の近くに居れば勇者に会えそうだしな」

「ならこれからも私達と行動するって事ね」

「ああ」


 二人が話していると、検査を終え着替えたルインとエルハイナがやってくる。


「やあお待たせ」

「終わったか、結構時間かかったな」

「へぇ、血を取られたんだ」


 魔女は包帯を巻かれたルインの腕とエルハイナの腕を見比べた。


「彼の力は医療行為に支障が出ますね……今回は少し刺す程度でしたが、彼が大病を患って切開なんて事になると誰も治療できないですし」

「私はルインが大病を患うなんて事ないと思うわ、その力のおかげでね」

「それも含めて何かわかるといいのですが……」

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