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絶滅記  作者: banbe
62/95

鬼5

 しかし、突如亜人達はあらぬ方向から魔法攻撃を受ける。


「!」

「なに?」


 ルイン達は魔女達が隠れている反対側の畑から、四人の冒険者が馬に乗って向かって来るのを目撃する。

 二人の冒険者は広範囲に魔法を放ち、近づきつつあった。鬼人は剣で防ぐが周りのショウウオ族達は当たってしまう。

 ルイン側も複数のショウウオ族に魔法が当たったが、魔法を放った者も、自分の魔法が暴発し落馬した。


「あんな遠くから魔法を……」


 魔法が放たれた方角から、馬に乗った三人の冒険者達は、ルイン側に一人、キドウ側に二人と分かれ向かって来る。

 後方から状況を見ていた魔女はルインに魔鉱石を使い連絡を取る。


「ルイン、私は魔法が当たったショウウオ族をカバーするわ」

「助かる、魔法で複数戦闘不能な者が出た」

「キドウも全く同じ状況よ」

「たぶんこれが増援だろうけど……冒険者だ」

「まずはキドウ側をカバーするわ、そっちは何とか持ちこたえて」

「こっちの魔法使いは倒した、俺が前に出てみんなを退かせる」

「ショウウオ族達が下がってきたら畑に結界を張るわ、何とかみんなをまとめて」

「分かった!」


 通信を終えるとルインはショウウオ族を庇うように前に出る。


「目くらましに……ライトニングストライク!」


 魔女はショウウオ族が逃げやすいよう、冒険者達に落雷の魔法を放つ。


「うお!なんだ!」


 冒険者達は突如放たれた魔法に驚き、足が止まる。


「今のうちに怪我人を撤退させて!軽傷者は重傷者をカバーしてあげるんだ!」


 ルインはショウウオ族に下がるよう指示を出す。

 一方、魔女は位置が近い鬼人側の怪我をしたショウウオ族を畑の中へ連れて行く。キドウ側の無傷なショウウオ族は数名しか残らなかった。


「あなたは囮になって冒険者を引きつけて。私はこのままルイン側の負傷者も回収しに行く」


 鬼人にそう言った魔女は、負傷したショウウオ族を下がらせた後、魔法を放ちながらルイン側へ向かって行った。


「囮とは上等だ、だがあの程度なら倒すのに時間はかからん。君達は無理して付いてこなくていい、このまま村人を追い詰めるんだ」

「分かった」


 鬼人は無事な数名のショウウオ族を置いて単身、馬に乗る冒険者達の元へ向かう。


「やはり急いで正解だったな。これ以上到着が遅れていれば、村はあいつらに落とされていたかもしれねえ。お前達!村人の援護だ!」


 魔法を放ったうちの一人は、槍を持つ赤い鎧を着た金髪の若い冒険者だった。彼は馬を降り、先頭に出て仲間に掛け声をかける。

 すると、他の冒険者も馬を降り彼に続いた。

 鬼人は一番目立っていた赤い鎧の冒険者に向かっていき剣を振り下ろしたが、だが冒険者は槍の持ち手部分で防ぐ。


「いきなり俺を狙ってくるとは、威勢がいいのかそれとも運が悪いのか」

「お前が号令をかけていたからこの集団の頭だと思ってな」


 赤い鎧の冒険者は鬼人の剣をそのまま押し返す。


「へぇ、いきなりリーダーを狙った訳か……ふん!」

「その方が戦いが早く終わるだろう?」

「相当自信がある亜人だな……その通り、俺がこのパーティのリーダー、シュンだ。聞いて驚け俺はあの勇者と肩を並べた大槌ジュノーの息子だ!」


 冒険者は鬼人に名乗り出る。


「……そうか、俺はキドウ。訳あってこの戦いに参加することになってしまった通りすがりだ」

「?おいおいこいつ親父の名を聞いても反応薄いな……」

「その大槌が凄腕だったとしてもお前はその息子ってだけだろう?」

「はっ言うねぇ、だったら凄腕の冒険者に鍛えられた俺の腕、見ろよ!」


 シュンと名乗る冒険者は、鬼人と戦いながら一緒に来た仲間の冒険者に指示を出す。


「こいつは俺に任せてお前は村人を助けるんだ!魔王が見当たらない今がチャンスだ!」


 シュンの指示を受け仲間の冒険者が鬼人の横を通り過ぎ、ショウウオ族と村人が戦っている所へ向かう。


「むっ!」 


 冒険者達を止めようと鬼人も下がろうとするが、シュンに行く手を塞がれてしまう。


「おっと行かせねえよ!」

「っく、ショウウオ族!逃げろ!」


 鬼人が叫ぶが、ショウウオ族が気づいた時には既に冒険者はかなり近づいていた。

 冒険者達が村人と戦っているショウウオ族に飛びかかった瞬間、間に短剣を持つ別のショウウオ族が割って入る。

 鬼人とシュンが次に見た光景は、ショウウオ族の前に倒れている冒険者達だった。


「は?いったい何が?」

「そうか……どうやら向こうは心配ないみたいだな」

「何言ってやがる、おい大丈夫か!」


 シュンが鬼人を相手にしながら仲間に声を掛けるが、ピクリとも動かなかった。

 もう一人の冒険者も短剣を持つショウウオ族の前に倒れ、シュンは焦り仲間の元へ向かおうとする。しかし、鬼人に止められてしまう。


「ッチ、おい!お前退けよ!」

「どうやらここを通す訳にはいかなくなったのは俺の方みたいだな」


 鬼人はシュンに向かい剣を構えた。


「はぁ?何言ってやがる!どけぇ!」


 シュンは強引に槍を振るうが鬼人は涼し顔をして避ける。


「くっそ何なんだよお前!」

「さっき名乗ったはずだが?それよりお前の……冒険者の実力とはこんなものか?」

「なにぃ!」

「何やら大層な名乗りをしていたからまだ実力か能力を隠していると思ってな」

「てめえ……良いぜ俺の本気を見せてやるよ!」


 シュンは落ち着く為に一呼吸し、槍を振るう。今度は強引な槍捌きではなく的確に鬼人を狙った攻撃だった。

 鬼人も避け切れないと判断したのか剣で防ぎ、金属音が辺りに響く。


「なるほど大口を叩くくらいにはやる様だ、だが……」


 鬼人はシュンの隙を見て一気に距離を詰め剣を振るおうとしたが、しかし逆に隙を突かれる。


「そこだ!バーン!」


 シュンの放った炎の魔法は鬼人の顔に直撃した。


「これが俺の本気!槍と魔法のコンビネーションだ!」


 だが鬼人には全くダメージはなく、涼しい顔で体勢を整えた。


「なるほどな」

「なっ……」


 シュンは慌てて鬼人との距離を取り悪態をつく。


「くそっ化け物め……これだから亜人は」


 すると、シュンの後方から三人の冒険者らしき人間が向かってくる。

 増援を確認したシュンは到着した冒険者達に嫌味たらしく言う。


「やっと着いたか」

「何が着いたかだ。全く……お前のパーティだけ先走りやがって」

「そうしなかったら既に村は壊滅してたんだよ」


 到着した冒険者達は周りを見回す。


「あそこに倒れているのはお前の仲間だろう、大丈夫なのか?」

「あいつらも助けに行きたいがこの亜人が邪魔なんだ」

「お前が阻まれる程の亜人がいるとはな……魔王が近くにいる可能性もある。姿を見たか?」

「俺は確認してないが……この亜人は魔王に匹敵する程の強さと見た。こいつは俺が貰う」

「馬鹿言え、勝負にこだわってる場合じゃない。協力してこいつを倒すぞ!」


 増援で来た冒険者達は剣や槍を構え鬼人に相対する。


「行くぞ!」


 三人の冒険者は華麗なコンビネーションで鬼人を攻撃する。だが、鬼人は全ての攻撃を避け退屈そうに言った。


「この地の冒険者は本当にこの程度なのか……」

「何!?」


 冒険者達が鬼人のつぶやきに反応した瞬間、鬼人の横一閃が三人の冒険者達をとらえシュンの後ろまで吹き飛ばした。


「お前達!」


 シュンは冒険者達の元へ向かおうとするが鬼人の圧がそれをさせなかった。


「どうした彼等の元へ行かないのか?」

「今お前に後ろを見せたら俺はやられるんだろう?ここは戦場だもんな……冒険者を小石みたいに吹き飛ばしやがって」


 一撃でやられた冒険者を見て呆気にとられていたシュンだったが、ゆっくり近づいてくる鬼人に対し槍を構え直す。


「お前達はそんなに強くないな。だったらこの戦いはそう長引きはしない」

「随分舐めたことを言ってくれるな……俺達は王都の冒険者だぞ!増援だってまだ来る!」

「国が率先してこんな事をしてるのか、世も末だな。しかし増援は厄介だ……」

「お前達は最初から勝てないことが決まっていたんだよ!ふん!」


 シュンは鬼人に猛攻を繰り出すが、鬼人はしばらく考え込みながらシュンの槍を捌く。


「うーむ……」

「てめえ!」


 鬼人の態度に、明らかに手を抜かれている事に気づいたシュンは怒り、さらに激しく攻撃をする。

 しかし、その時間は長くは続かず、村で戦っていた亜人の声で終わりを迎えた。


「キドウ!こっちは終わったよ。村は俺達の物だ」

「なんだって……」


 シュンは村人達が戦っていた方を見ると、仲間と村人達が倒れていた。


「クソ、みんなやられたのか……」


 ショウウオ族の姿をしているルインが、まだ戦えるショウウオ族を連れてが鬼人の元へ来る。


「増援も少なかったしなんとかなったよ、後はそいつ一人だけだ」 

「しかし、彼によるとまだ増援は来るらしい」

「それは厄介だな。俺はともかく他のみんなはもう限界に近い。水も補給しなきゃいけないし」

「故に少し工夫しようと思ってな。ここは俺に任せてくれないか?」

「良いけど……」

「ならば君はその姿のままここに残ってくれ」

「?」


 ルインは疑問に思いながらも鬼人の戦いを黙って見守る事にする。


「俺の仲間や村人だって簡単にやられるほど弱くはなかったはずだ!一体どうやって……」

「魔王の加護を受けた彼等には、冒険者など弱すぎて相手にならなかったそうだよ。俺も良い方法を思いついた、少し遊んでやろう」


 鬼人はハッタリを使いショウウオ族の強さを演出しながら、シュンを挑発する。


「何ぃ!遊んでやるだと……てめえ!ぜってーに死なす!」


 シュンは自分達の扱いの軽さに露骨に怒り、鬼人に襲い掛かった。

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