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絶滅記  作者: banbe
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鬼4

 まだ日が高い時刻、前日に壊しておいた柵が何とか視認できる距離に、ルイン達一行は集まっていた。


「まずは畑に侵入、背の高い畑に紛れて奇襲を行う予定だ。けれど──」


 壊れた柵の周囲には、既に数人の見張りが立っている。畑は広大で全体を監視しきれないが、その分、草木や障害物はあらかじめ取り除かれており、見晴らしがよく近づく事は困難になっていた。


「あの見張りが邪魔だ、キドウなんとかできる?」

「……いきなりご指名か」

「無理にとは言わないけど」

「いや、やろう」


 鬼人はルイン達の元から少し離れた場所に移動し、わざと見張りの村人に見つかる。


「おい、こいつまだこの辺うろついていたよ」

「……昨日の事は謝る……だから食料を分けてくれ……」


 よろめきながら弱ってる演技をし、鬼人は見張りの村人に近づく。


「あれからずっとこの辺に居たのか、だけどお前にやるような食料は……」


 鬼人は不用意に近づいてきた村人の腹に拳を叩き込んだ。


「おい!どうした?」


 それを見て動揺した村人三人を素早く倒す。他に人間が居ない事を確認した鬼人はルイン達の方に合図を送った。


「彼、強いわね」

「やっぱりそうだよね。昨日相手した時、凄い気迫で動けなかったし」

「あれ余裕じゃなくて竦んでいただけなのね……」


 ルインの言葉に、魔女呆れながら鬼人の元に向かった。


「ここからは背の高い畑を利用して、作業している村人達を排除していく。まずはなるべく単独で行動している人間を狙い、他の村人達に悟られないよう行動するんだ」


 ショウウオ族はルインの言葉を聞き、それぞれ畑の中に入って行った。


「キドウは……今の方法が通用するなら真正面から行ってくれると助かる」

「良いだろう。君は?」

「俺はこうするのさ」


 ルインはマントを翻すとショウウオ族の姿に変わった。


「おぉこれは……」

「俺もある程度時間が経ったら真正面から行く、陽動だよ。チウィーさんは何かあった時の為にフォローに入れるようここで待機してもらう」

「なるほどわかった、では俺も行動を開始する」


 ルイン達の作戦が始まった。

 だが人間達も馬鹿ではなく昨日、魔王を確認してから最大限に警戒していた為、奇襲の効率は上がらなかった。

 逆にすぐに村の周りの様子がおかしい事に気付かれ、早々に畑仕事を切り上げ村人達は、鎌や剣などを持って固まってしまう。

 鬼人とルインは何とか注意を逸らそうと、真正面から村へ向かった。


「あいつ!昨日の亜人だ!」

「周囲の様子がおかしいのはあいつのせいか!」

「来るな来るな!」


 鬼人を発見した村人は、鬼人に石や鎌など投げつけ、さらに警戒してしまう。


「キドウ、ここは一旦撤退しよう」


 ショウウオ族の姿をしたルインが鬼人に近づくと、村人達の攻撃がさらに激しくなる。


「やはりあいつあの害獣達と組んでやがった!」

「死ね!」


 村人達は火の付いた松明などを投げ、ルインと鬼人は追い払われる羽目になった。


「うーんやっぱり俺には軍師の真似は無理かぁ」


 撤退しながらルインがつぶやく。


「あれだけ迷いなく指示してたのに、誰かの真似事だったのか……」

「チウィーさんは上手くショウウオ族達をまとめてくれてるといいけど……」


 ルインと鬼人は村を大きく周り元の魔女が待機していた位置に戻る。


「村人達は守りに徹するみたいだな」

「追手が無くて助かったけど陽動にも引っかからないのは困ったね」

「そっちもダメだったみたいね、彼等も人間達の警戒が高くてあまり手ごたえが無かったそうよ」


 ショウウオ族達も戻っており、作戦が上手くいかない事で消沈していた。


「魔王さまごめん、俺達あまり役に立てなかった」

「いや俺こそこんな策しか思いつかなくて済まない。あまり犠牲者を出さずに人間を追い出したかったんだけど……」


 ショウウオ族はこれまでの迫害でかなり数を減らしており、ルイン達はショウウオ族の数を守る事を優先して行動していた。


「しかし……こうなったら正面対決しかなさそうだな。幸い村人とこちらの数は同じくらい、俺と魔王が居れば負ける事は無いだろう」


 鬼人は自信ありげに言った。


「彼等を正面から戦わせるのは避けたいんだけど……」


 それでもルインが渋っているとショウウオ族の一人がルインに意見する。


「俺達、戦える!」


 その言葉を肯定するように周囲のショウウオ族達は、次々と自分達持っているトライデントを掲げやる気を見せる。


「……分かった、俺も覚悟を決めるよ。人間達には増援も来る事だし時間はあまりかけられない。ここからは一気に正面突破しよう」


 ルインのその発言に、ショウウオ族達は一気に士気を高めた。

 村人とショウウオ族の数はほぼ同じ。村人達は村の中心に固まっていたため、ショウウオ族の被害を最小限にしたいと考えたルインは、挟撃作戦に出る。

 作戦は単純。村の左右から、ルインとキドウをそれぞれ先頭にして挟み撃ちを仕掛けるというものだった。


「挟んで力押しか、一気に単純になったな」

「早期に決着をつけて増援に備えたいしね。じゃあ行動を開始しよう!」


 魔力通信機を持つルイン達は、村の反対側から攻め入るため、背の高い畑を利用して移動した。


「こちらルイン、位置に着いたよ、いつでも行ける」

『待機組は待ちくたびれてるわよ、早速行動開始ね』

「よし、行くぞ皆!」


 魔女は空に向かい、大きな火球の魔法を放つ。それを合図にルインと鬼人、それぞれを先頭に二手に分かれたグループが村に突入する。

 鬼人は先程の姿を見られた事もあり村人達からは既に敵と認識されていたようで、すぐに石を投げつけられた。


「やはり魔王側に着いたか!亜人など信用できんな!」

「自分達のやった事を棚に上げてよく言う……ふん!」


 鬼人は村人に斬りかかるが村人はその一太刀を避ける。


「なに?」

「こんな所で働く以上ある程度の訓練は受けてるんだよ!戦うと分かればこれくらい!」


 今度は逆に村人が鬼人に剣を向けた。


「なるほど、それでここの亜人達はここまで追いつめられたのか……だが」


 鬼人は村人をすぐに切り捨てた。


「俺から言わせれば付け焼刃だな、中途半端でまったく物になっていない」

「だったら数で攻めるだけだ!」


 剣や鎌などを持った村人達が鬼人に一斉に襲い掛かる、だが鬼人は難なく躱し返り討ちにする。


「そうだ、俺だけを狙え。そうすればショウウオ族が狙われずに済むからな」


 向かってくる村人を鬼人は斬りながら冷酷に言い捨てた。

 一方ルイン達も鬼人程早くはないが、村人達を倒していく。


「なんだ!?攻撃が届かない!」


 村人が剣を振り下ろそうが、石を投げようが、ルインを先頭に向かってくるショウウオ族には届かず、その上不可解な事故で死者重傷者が続出する。


「一体何がどうなってるんだ!」


 ルイン達は村人達が混乱している間に、ショウウオ族が近づき一気に制圧という戦法をとった。

 二方向から攻めてくる亜人に村人は対処しきれず追いつめられる。


「クソ……亜人共め……」


 ルインと鬼人の合流が間近に迫りつつある中、人間との決着がつきつつあった。

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