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絶滅記  作者: banbe
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鬼3

 ショウウオ族の集落を出た鬼人はそのまま村に戻る。すると夜も更けているのにもかかわらず村人達は外で話し合っていた。

 鬼人はその中に世話になっていた村人を見つけ、声を掛けようとする。だが、その前に村人達に見つかり取り囲まれた。


「お前!戻ってきたのか!」

「俺達を騙しやがって!」


 村人達の豹変ぶりに鬼人は驚く。


「待ってくれ、俺にそんなつもりはなかった。それに俺は自分を一言も人間だと言っていないぞ」

「東の船着き場から入れるのは人間だけだ!亜人はその場で追い返されるんだよ!」

「そんな横暴な」

「分かったらさっさと出ていけ!魔王が現れて、こっちは忙しいんだ」


 村人達は鬼人の力の強さを知ってか手を出すことは無かった。


「な、だったらここで働いた分の食料を分けてくれ。最初にそう約束したはずだ」

「食料だぁ?」


 村人達は一斉に鬼人を世話した村人を見たが、しかしその村人は顔をそむける。


「あの人も亜人となんて約束してないってよ。でもそうだな……俺は優しいから分けてやるよほら!」


 一人の村人が食べかけのパンを鬼人に投げつける。


「お前達……そうか魔王の言っていた事は本当だったんだ」

「害獣駆除をやると言っていたくせに降参した上ノコノコ戻ってきやがって。魔王はどうした?同じ亜人だから見逃して貰ったのか?」

「害獣とはあの亜人達の事だったんだな……可哀想に」

「亜人が亜人を憐れんでるよ、滑稽だな」


 村人達は鬼人を嘲笑った。


「いいから早く出て行けよ!俺達は魔王をどうにかするので忙しいんだ!」

「お前達があの魔王をどうにかできるとは思えんがな……」

「だから応援を呼びに行ったんだ。魔王が居るなら国はすぐに動くだろうしな。何ならお前も捕まるかもな」

「良いから早く出てけってんだ!それともお前魔王のスパイか?」


 村人達は今度は石を投げようと構える。だが、鬼人も腰の剣に手を掛ける、それを見て村人達は慌てて手に持っている石を地面に落とし及び腰になる。


「な、なんにしてもこの村はもう亜人なんかにしてやる事は無い!さっさと去れ!」

「ッチ……」


 不満げに舌打ちをしつつ、鬼人は村に背を向けた。


「しかし……食料もないしこれからどうするべきか……」


 そして向かったのは、ルイン達が居たショウウオ族の集落だった。


「呆れた、それで今度は私達を頼って戻ってきたの?」


 事情を聞き開口一番、魔女に悪態をつかれる。


「……疑った件は謝罪する」


 家の中の椅子に座るルインに鬼人は深々と頭を下げ続ける。


「だが俺には目的がある、降参しここを去った分際で図々しいのは承知の上だ。だが、どうか食料を分けて欲しい。それと良ければスタナが眠る場所を教えて欲しい」


 ルインは苦笑いし、魔女は呆れて溜息をつく。


「まあ、頼ってきてくれるのは素直にうれしいんだけど、俺達もそんなに余裕がある訳じゃないんだ。前の魔王の事については……」


 ルインは魔女を見る。


「……魔王の亡骸がどうなったのかは分かってないわよ?」

「なんと、勇者が倒したと広まっているのではないのか?」

「倒したこと自体は広まってるし、勇者は証拠として魔王の角を持ち帰っている。けど、彼は最後に魔王をどう倒したのか語っていないわ」

「へぇ、パーティで協力して倒した訳じゃないんだ」

「追い詰めたのは全員らしいけどね、最後は勇者と魔王の一騎打ちになったと伝わっているわ」


 ルインの質問に魔女が答えるが、その光景を鬼人は不思議そうに見る。


「君は今の魔王なのに先代の事をあまり知らないんだな」

「魔王なんて言ってるのは人間と、俺を旗印に戦おうとしている者だけさ」


 ルインは周りのショウウオ族を指すと、ショウウオ族はバツが悪そうに顔を背けた。


「ふむ、この地の魔王とはそんなものか。では食料の件も……」

「悪いけど、今の俺達じゃどうすることも出来ない。ただ方法はない訳じゃない」

「と言うと?」

「目の前に豊かな村があるじゃないか」

「まさか……」



 翌日、日が頭上まで登った頃、ルインと鬼人は集落の裏にある海辺で、集落のショウウオ族の水浴びを眺めていた。


「これは一体?」


 鬼人はルインに聞く。


「彼等は水を浴びて体の調子を整える。だから水場と陸地が必要だったんだけど……」


 海で身を潤わせているショウウオ族だったが、その皮膚は赤くなり明らかに塩水は体に合ってないのが分かる。


「海の水ではダメなのか……」

「それでもやらないよりはマシだし何より今日、戦いがある」

「このまま別の地へ逃げればだろうに、わざわざ争う必要があるのか?」

「君は争いたくないからと言って、取られた物をあきらめるのか?」

「……」


 ルインの問いに鬼人は閉口してしまう。


「元々、あの広大な畑は彼等が住んでいた土地を利用して作られたんだ。ショウウオ族が水を浴びた土地は豊かになる、人間達の間ではそう言われてるらしい」

「それで土地を追われたのか。あの畑はなかなか見事な物だったが彼等のおかげだったんだな」

「彼等が他に移った所で、また豊かになった土地が狙われるのは目に見えてる」

「水浴びの跡が目的なら、同じ事の繰り返しか……」

「だからここを離れるにしてもまず、人間を何とかしないと」


 二人が話していると体格の良いショウウオ族が話しかけてくる。


「魔王さま、オレ達準備終わったぞ」

「だから魔王は止めてって……チウィーさん、終わったってー」


 ルインは小屋の中にいる魔女に声を掛けた。


「はいはい、薬は出来てるわよ」


 魔女は集落の家から出てきて、作りたての薬をショウウオ族に手渡す。


「症状が酷い所に塗ってね」

「助かる」


 薬を貰ったショウウオ族は海辺の仲間の元に戻った。


「よし、彼等が薬を塗り終わったら出発だ」

「大丈夫か?村人は応援を呼ぶと言っていたが……」

「何とかするつもりだけど……その分君が働いてくれるんでしょ?」

「本音を言えば異国の争いにはあまり関わりたくない。だが、食料がなければな……」

「そこはギブ&テイクって事で」

「ああ、分かってはいる……」


 鬼人は亜人と村人の戦いに参加する事を決める。代わりに村から人間を追い出した際、村の食料を分けて貰うという約束をルインと交わしていた。


「腕は立つみたいだし期待してるけど……」

「大丈夫だ、途中で逃げ出すなんて事はしないさ」

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