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絶滅記  作者: banbe
59/95

鬼2

 ***



 男はルインに連れられ、亜人達の集落に到着する。

 道中、一切拘束されず、対応の甘さに疑問を抱いた。

 だが、その疑問も集落を見て吹き飛んだ。


「これは……ボロボロじゃないか」


 集落を見た男は呟く。

 男の言った通り集落の建物はボロボロで、一軒の小屋の前には場違いな立派な黒い馬が繋がれていたが、その馬以外は全て急ごしらえの様な作りをしており、更に何者かの攻撃を受けた痕跡が至る所にあった。

 ルイン達は馬が繋がれている小屋に入り、男も亜人達にそこに入るように促される。


「家というより小屋だな、俺はここで殺されるのか?」

「ここは彼等の立派な家だからそんな事はしないよ」


 ルインは苦笑いしながら言った。


「なら何故ここに?」

「単純に個人的な興味だよ。君はたぶん旅をしてここに来たんだよね?それも結構遠くから」

「そうだ……なぜ分かった?」


 ルインはまた魔女と顔を合わせ、苦笑いする。


「恩があって人間の味方をしてるなんて言われたらそりゃね……」


 気が付けば周りの亜人達は三人分の席を用意しており、ルインに座るよう促され、男は大人しく従った。


「それがそんなにおかしい事なのか?」

「そうだね、じゃあまずは今この国周辺の状況を話そう。彼等はショウウオ族、この地を人間に追い出された」


 ルインは男にこの国の差別とショウウオ族の現状を語る。


「――という訳でこの国周辺では差別がある。そして、彼等は人間から迫害を受けている」

「なんだと……いや待て俺は最初あの村の人間達から疎まれてなかったぞ」

「傘を頭に被ってたから村人も分からなかったんじゃないかな、俺も最初人間だと思ったし」

「……それで俺が亜人と分かり、あんな態度を?……あんたは魔王と呼ばれてる身だ、それを信じろと?」

「好きにすればいいよ、それより俺は君がなぜこの国に来たのか知りたい」

「そうね私も気になるわ、特にその背中の荷物の事をね」


 ずっとルインの隣で警戒していた魔女が会話に入ってくる。


「君はこれの気配が分かるのか」

「ええ、だから最初の攻撃はかなり気を使ったわ、下手に刺激したくなかったし」

「あの弱い火球か……良いだろう。手掛かりがあった方がこちらも助かる。まず俺の事から話そう」


 男は自身の出生を語る。

 生まれは遥か東で、彼は鬼人と呼ばれる種族だと言った。五十年以上前に一度この地を訪れ、その時、仲良くなった亜人の友からしばらく前に荷物が届く。それが、男が背中に持っている物だと言う。

 いきなりの事で困惑し、しかも、それがその友人の大事にしていた剣だったので、真意を確かめるべく再びこの地へ訪れたとのことだった。


「そして、これがその剣だ」


 鬼人は背の荷物を取り出し、ルイン達に見せる。とても大きく立派な剣で、刀身からは威圧感さえ感じられた。


「凄い剣だ」

「これは……」


 剣を見た魔女の深刻な顔がますます険しくなり、魔女は鬼人に尋ねる。


「……その友の名前は?」

「スタナという男だ」

「やっぱり……」

「えっ誰?」


 ルインだけはその名前にピンと来ない様だった。


「前の魔王の名前よ」

「なっ!」

「前の……」


 魔女の一言に二人は驚いた。


「じゃあこれは前の魔王の剣って事?」

「そうね、だったらこの魔力不思議じゃないわ」

「待ってくれ、スタナが前の魔王だと?彼は誰かを害すような奴じゃなかった。正義感が強く、誰からも慕われた男だった」

「ならその正義感が人間にとって邪魔だったって事ね」

「そんな横暴な……」

「この近辺はそれがまかり通ってるのよ」

「ならばもうスタナは……」

「彼は昔に勇者に討たれたわ」

「……そんな。いや待てそれは本当の事か?」


 鬼人は今の状況を訝しむ。


「まあ荒唐無稽な話よね。会いに来た友が魔王で勇者に討たれてたなんて」

「今の話に不審な点はない、だが君達は魔王と呼ばれていた」

「自分達を正当化する方便とでも言いたいの?」

「少なくとも何の証拠もなしに、はいそうですかとは信じられん。そもそもお前達魔王はここで何をしている?」

「俺達は今、迫害を受けている彼等を守る為、人間に抵抗している最中だ」

「守る?村人は害獣の被害に遭ってると言っていたぞ」

「よく言うわね、まず最初に亜人を追い出しにかかったのは人間よ。彼等は水陸両性の亜人、水だけでも陸だけでもダメなの」


 魔女は、周囲に控えるショウウオ族達を指さした。


「その上、人間はまだ彼等の居場所を狙ってきてるわ、だから人間達に必死で抵抗してたのよ。それがこの惨状」


 鬼人は決して広いとは言えない家の中を見る。通ってきた集落を見てもここが一番客を入れられる建物だが、とてもみすぼらしかった。


「あの村の畑だって本来は彼等が住んでいた土地、無理矢理追い出したんだから抵抗は当然でしょ」

「村人達は良い人だった……どうにか穏便に済ます事は出来ないのか?」


 魔女は大きく溜息をつく。


「あなた、最後は人間にあんな態度されたのに庇うの?」

「他の村人は違うかもしれない」

「それは人間達もあなたを人間と勘違いしていたからでしょ?同族や身内に甘いのはどこも一緒、罪を犯しても身内に甘かったら無罪なんて事ないわよ」

「……まだ君達の話だけを一方的に鵜呑みにする訳にはいかない。それより結局、君達は俺をここに連れてきてどうするつもりだ?」

「どうするつもりもないさ。最初に言ったろ?他所から来た君に興味があるって。話は聞けたし、旅を続けるなり好きにしていいよ」

「なんだって?俺を逃がすのか?」


 鬼人は耳を疑う。


「ただ、なるべく俺達の邪魔をしないでくれると助かるな」

「俺は、また村人達の所に戻るぞ?」

「どうぞ、そもそも君は俺に降参したからここにいるんだ。人間の元へ戻りまた戦ったとしても問題にはならない」

「っく!」


 鬼人は悔しそうに家から出て走り去って行った。


「あなたにしてはきっぱり言ったわね。でも本当に話を聞きたいだけだったの?」

「同じ亜人だし分かってくれると思ったんだけど……でも今日のやる事は終わってたし、作戦は変わらず明日決行だ」


 ルインのその言葉に周りのショウウオ族達は歓喜した。

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