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絶滅記  作者: banbe
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北の山6

 夜が明け、日が昇る頃には天気は回復し青空が覗いていた。

 日の光は巨大竜巻から受けた傷跡をはっきりと照らし出し、都にどれほどの被害をもたらしたのかを住民に見せつけた。

 そして、宮殿もルイン達が居た部屋より上が全て壊され、空がくっきり見えた。


「うぅ……かはっげほっげほっ」


 あれだけ魔法を放ってもびくともしなかった水槽はボロボロに壊れ、水が無くなった水槽の中でルインは水を吐きながら目覚める。


「ここは……なんで空が……げほっ」


 状況を確かめようと辺りを見回すルインは絶句する、あれだけ頑丈だった部屋も崩れ、外界との接触を遮っていた分厚い鉄の扉も曲がり全く違う場所に飛ばされていた。


「ごほっ……何があったんだ、チウィーさんは!?」


 水槽の前に倒れている魔女を見つけたルインは急いで駆け寄り、息をしている事を確認。生きている事に安堵の表情を浮かべる。


「チウィーさん、チウィーさん!」

「う……ん……」


 ルインが揺さぶると魔女は目を覚ます。


「……ルイン、助かったのね。空が見える……ここは」


 空が見える事に疑問を覚えた魔女は、起き上がり周囲を見渡す。


「これは……凄まじいわね」

「俺は水に入ってからしばらくして意識を失ったんだ、これは何が起こったの?」


 魔女は一連の流れを簡単に説明した。


「ディムワズは力があなたを助ける為、環境すら破壊したと言っていたわ。そして現にあなたと一番近くに居る私は助かった、それも無傷で。彼の言っていた通り、竜巻はあなたの力なのでしょうね」

「俺が危険に晒されると環境を破壊するか……」


 ルインは無くなった壁際に立ち都を一望する。


「これが……」


 その光景は、今までルインの力が発動した南や西の都よりも悲惨で、竜巻の通った跡には建物の残骸しか残っておらず、巻き込まれた住民がどうなったかは想像に難くなかった。


「ぅぅ……」


 二人が茫然と都を眺めていると、崩れた部屋のどこからかうめき声が聞こえた。


「生存者かしら」


 魔女が声の方へ向かい瓦礫を退けると、胸に破片が刺さったディムワズが倒れていた。その元へルインも駆け寄る。


「……あなたの予想通り私達は無事だったわ」


「みたい……だな……巻き込まないと……言っていたのに、だが……怪我が無いようで安心した……ごふっ」


 胸に刺さった破片は肺まで達している様で、ディムワズの声は掠れている。


「魔王よ……自分の力の結果を知りたければ……西の都に……水槽の結界を張った者が居る……」

「やはりあの水槽の魔法耐性は西の技術による措置だったのね……」

「あの天災が……力によるものなら西の……術者も生きてはいないだろう……」

「あなたから最後まで敵意を感じなかった……」


 ルインは悲しげな表情でディムワズを見る。


「そんな顔をするな……お前はあくまで降りかかる火の粉を払った……だけ……」


 そう言ってディムワズは静かに事切れた。ディムワズの最後を見届けた二人は、小休憩を挟んで宮殿の外に出る。

 宮殿周辺も竜巻の被害が酷く人間の姿は見かけなかった。

 都から出ようと壊滅状態の街中を二人が歩いていると、ルインが森に置いてきた黒馬にまたがり、護衛を連れながら都を闊歩するエルフと鉢合わせる。


「居たな。かなり派手にやったみたいだな」


 エルフは周りの惨状を指す。

 だが手紙の件もあり、ルインと魔女は疑いの目でエルフを見る。


「おかげさまで、ただあなたと彼……ディムワズは兄弟だったのをなんで黙っていた?」

「ん?この戦いに必要な情報ではなかっただろう?」


 エルフは悪びれもせず軽く答えた。


「勇者のパーティと戦ったんだ、疲れたと思って君の愛馬と共に迎えに来たんだ。早速で悪いが事の顛末を聞かせてくれないか?」


 ルインはエルフから馬を返して貰い、都から出る道を進みながら戦いを話す。


「ふむ、なるほど奴はそんな事を……だが最初に言った通り私の手紙で余計な諍いは起こらず奴の前に立てただろう?」


 疑念が拭えないルインは、正面からエルフに問いただす。


「……色々腑に落ちない、あんたは俺に兄弟を殺させたかったのか?」

「私は力が見たいと言っただけだ。その結果奴は死んだけだ。都をここまでするとは思ってなかったが」


 冗談めかしエルフは言う。


「俺は兄弟の争いに利用されたのか」

「……私と奴は仲が悪かったという訳じゃない。奴が私達の森を庇っていた事も事実だしな」

「ならなんで俺を使ってこんな事を……」

「……時代の流れというやつだ、お互い立場もある。私は森の亜人達の長で奴は都の領主。最近では亜人を見過ごしている奴の立場が危ぶまれていたし、いずれ戦う事になるのはお互い分かっていた。そこへ君達が来たのだ」

「だから利用したと?」

「少なくとも私は本当に君が人間に有効か試しただけだ。奴も人間側に立っていたから君を送ればただで帰すと思えなかったからな。好きにしろと書いたのはその為だ」

「兄弟が死んだのに随分と冷静なんだな」

「お互い戦うと分かった時点でどちらかが死ぬのは想定済みだ。私の私情など放っておけ。今回起こった事は魔王が勇者のパーティで北の都の領主である賢者ディムワズを破った、これに変わりはない」

「はぁ……じゃあ」

「ああ、魔王ルイン。最初の約束通り、人間に抗う君達に協力しよう」


 エルフは馬に乗るルインの手を差し出し、ルインはそれを掴み握手を交わした。

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