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絶滅記  作者: banbe
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北の山4

 当時、勇者が生まれた村では人間、亜人関係なく暮らしていた。

 その頃の子供達は、他の子がどんな種族であろうと関係なく、住んでる場所が近ければ誰でも自然と仲良くなる。勇者達六人はそんな村のただの幼馴染だった。


 ある日、勇者は冒険者という仕事がある事を知る。未開の地を探索し、必要とあれば敵と戦い、成功すれば周囲から褒められる。

 流行りの職業だったおかげで、当時の勇者達も幼心に皆、冒険者に憧れを抱いた。

 最初はごっこ遊びで冒険者の真似事をしていたが、各々はその遊びの中で自分に得意な役回りを見つけ、いつしか本気でその職業を学ぶようになっていた。

 何か成果があれば仲間内で見せ合い、確実に力を付けていった六人はついに冒険者業に就ける年齢に達する。

 下準備は万全。息の合った連携で、彼らは一躍名の知れたパーティへと成長していった。

 そして名が通り始めた頃、年頃だった勇者は同じパーティでありながら翼の生えた亜人の少女、ソラと恋仲になる。


「ソラ……それが空翼人?」

「彼女が自分からどの種族だと口にする事は最後までなかった。我々も種族なんかにこだわりはなかったし、彼女が空翼人と知ったのはずっと後の事だ」


 ある時期から、冒険者家業は国が直接依頼する物が増えて来る。報酬は良かったが難易度も高かった。だがソラと恋仲になった勇者は格段に強くなり、どんな困難な依頼もこなしていった。

 パーティの仲間それぞれも勇者に置いていかれない様、必死で努力して強くなっていった。ソラを除いて。

 ソラは、国の依頼が多くなり出した頃から、パーティに参加する頻度が少なくなった。


「そしてある時期からソラは我々の前から姿を消した。理由は今でもわからない」

「いきなり?」

「少なくとも私は誰からも何も聞いていない、勇者には何か言っていたかもしれないが、今現在まで何も語っていない。そしてソラが居なくなった事で一番落ち込んだのは彼だった」


 姿を消す直前、もうソラはほとんどパーティには参加しておらず、勇者達の連携は崩れる事は無かった。それから魔王が現れ魔王との戦いに続く。


「それ以降亜人差別も増してきて誰も積極的に探す事はしなかった。私達は仲間のソラと共に、大事な何かを失ったんだろうな……さて、これが私が知っている空翼人だ。あいつらが恋仲になった時何かした。それが空翼人の祝福だと俺は思っている」

「直接聞かなかったの?」


 魔女は躊躇い無しに聞いた。


「そんな野暮な真似できる訳ないだろ。それに勇者も最初、自分自身の力に戸惑ってたみたいだしな」

「大事な事じゃない、それで私の意見も聞きたいって言うのは?」

「俺達のパーティは戦士、ガイ以外は皆魔法を使えた。だがソラは珍しいバフ魔法の使い手だった、とすればソラはずっと勇者に魔法を使っているとは考えられないか?」

「空翼人の祝福の正体が、ソラのバフ魔法が恒常的に作用し続けているもの、と考えた訳ね」

「魔法の類だったら、私の知らない何かを大魔導師の教えを受けた君なら知っていると思ってね」

「無いわね」


 魔女は一蹴する。


「そんなに長く続く魔法は無いわ、もしあるとしてもそれはもう魔法じゃなく別の何か。例えば呪いとかね、だからこそ勇者も空翼人の祝福と言われてるのだろうし」


 ルインもその意見に口を挟む。


「それに師匠さんは魔法の力は一切感じなく、性質は勇者の力に似ていると言っていた。つまり、空翼人の祝福は魔法とは違うという事を師匠さんははっきり分かっていたんだと思う」

「だったら私が知っている事はこれだけだ。君の力が魔法によるものだったら私の仕事も早く終わりそうだったんだがな。では決闘の続きと行こうか」


 ディムワズが立ち上がると、ルインも構える為、椅子から立ち上がる。

 それを合図に使用人達が部屋の机と椅子を片づけた。


「今更だが、ルールを決めよう」


 広々とした部屋になりディムワズは、ルインに言った。


「ルール?」

「決闘をこのまま始めると、勝敗がつくまで無限に試せてしまう。が、私もこの都の領主で忙しい身なのだ、夜明けまで勝負がつかなければドローとする」

「なるほどあまり長いと俺も退屈だし、それには賛成だ」

「それと当然の事ながら、これは私と君二人の決闘だ。なので魔女は手出し無用で頼むよ」

「でも何かあれば身は守らせて貰うわよ」

「少なくともこの都に居る間、誰にもあなたには手は出させない。私を倒すか引き分けの場合、二人そろって無事に都を出られるという訳だ」

「でも逃がす気はサラサラないんだろ?」

「当然、連れてこい」


 ディムワズは指示を出すと、使用人が奥から手錠で繋がれた屈強な大男を連れてくる。


「彼はこの都の死刑囚だ」


 そう言うとディムワズは死刑囚に近づき、手錠を外した。そして、使用人が持ってきた大きな斧が彼に手渡された後、死刑囚に言う。


「これはチャンスだ、私の言う事をきちんと聞けば釈放してやる。あの亜人は魔王だ、なるべく傷つけずに捕えてみせろ」

「なに、魔王?だったら殺した方が早ええじゃねえか!」


 死刑囚はルインを睨むと、斧を振りかぶりながら接近する。


「これで俺も英雄だぁぁぁ!」

「おい!言う事を聞け!」


 ディムワズの制止など聞きもせず、死刑囚はルインの首めがけ大斧を振るう。しかし斧は劣化していたせいか、死刑囚の力に耐えきれず、斧は振った瞬間に折れてしまい先端が死刑囚の首に落ちる。


「俺の……斧が……」


 切断はされないまでも、半分以上斬られた首は、体の上から落ち肉で支えられながらぶら下がり、死刑囚はルインの前に倒れる。

 ディムワズは倒れた死刑囚に目もくれず、無表情に自分の首筋を触った。


「首は繋がっている様だ」

「俺を死刑の道具に使わないでくれよ……」


 死刑囚の血がかかったルインは、呆れたように言った。


「これは失礼、彼に血を拭く物を」


 ディムワズの命令で使用人は布を持ってきて、死刑囚の死体もすぐに片付けられた。


「まさかこれだけじゃないでしょ?」


 血を拭いながら、ルインは問う。


「当然、これは単なる実験。あの死刑囚が君を攻撃するきっかけを作ったのは私だが命令違反を犯し、行動の責任は私まで来なかった。実験は成功といったところか」

「わざと命令に従いそうにない血気盛んな人を選んだのね」

「……まさか、魔王を捕えられる力が強い奴を選んだだけだ」


 魔女の指摘を否定する。


「次は少々移動して貰う事になる、ついて来てほしい」


 ディムワズはそう言って部屋から出て行き、ルインと魔女はついて行く。

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