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絶滅記  作者: banbe
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北の山1

「ふぅ、険しいな」


 黒馬に乗るルインと杖に乗る魔女は、緑の少ない山脈の道をひたすら進んでいた。


「遠回りしてるしねぇ。その馬は体力もあるから進むのは早いけど」


 二人は軍師が戦略を学んだという先生に会いに行く途中だった。

 何故この人選で向かったかというと、会議の場面に遡る。



「その先生に協力を仰ごう」

『ですが問題が多いです』

「……一つずつ解決していこうか」

『ではまず場所ですが……彼が居る場所は、人間の国北の都よりさらに北の山の麓なのですが、一番近いルートは今私が居る森なのです』

「それは……戦場になってるし森を抜けた先も人間の陣地があるね」

『今は人間達が積極的に攻撃して来ていないとは言え、ここを通るのはどうかと……もう一つ山脈を行くというルートもありますがかなり遠回りになり、時間がかかります』

「他に道があるならそっちを行こう、他の問題は?」

『先生は非常に気難しい方です。おそらく、兵や外交官が行っても相手にされないでしょう』

「うーんそれは……」



 という事で、国の依頼なので国王であるルインが直接行く事になった。補佐に様々な知識を持つ魔女が同行した。兵が同行しなかったのは、山道では装備をつけた兵が遅すぎると判断された為だ。

 しかし、人間の国からかなり離れているおかげで、敵となる者が全く現れず、二人は久々に戦いから離れた日々を送っていた。

 道中、魔女は以前のように、ルインに様々な知識を教える。


「なんかこうしてると、ワドファーに行く前を思い出すなぁ」

「そうねぇ、あの頃はこんな事になるなんて思ってもみなかったわ」

「王になったり魔王になったり戦争したり……こんな経験するとは」

「そんな経験するのはあなただけだと思うわ」


 ルインと魔女は今まであった思い出話に花を咲かせながら進む、しかしルインがふと思い出した事を聞く。


「そういえば勇者の力、空翼人の祝福って何?」

「……師匠の言っていた事ね」

「うん……」


 魔女は少し考えてから答える。


「私もよく知ってる訳じゃないの。噂や言い伝えくらいなら教えられるけど」

「ぜひ教えて。何かヒントがあるかもしれないし」

「じゃあまた歴史の勉強の再開ね。空翼人って言うのは昔に存在していた亜人。原初の魔王を倒す為、力を尽くした内の一種族よ。今は姿は見られず、居なくなった原因も分かってないわ」

「原初の魔王って、全てを滅ぼそうとした神話時代の魔王だよね」

「そう、たぶんこの魔王はどの地方にも伝わってる神話じゃないかしら。そして空翼人は私の師匠のさらに師だったと聞いてるわ」

「え、じゃあチウィーさんって空翼人の孫弟子って事?」

「そうね、でも私も話に聞いただけで直接会った事はないけど……」

「でも師匠さんは祝福の事知らないって言ってたね」

「ええ、師匠は魔法を学んだだけで、空翼人の事自体は教えてもらってないと言ってたわ」

「そうか……でも、だったら勇者はどうやってその祝福を?」

「ここまでが言い伝えの部分、そしてここからは勇者についての噂よ」


 魔女は勇者のパーティの一人と兄弟弟子という立場ではあったが、思っているほど親しい間柄ではなかった。そう前置き、勇者のパーティの事を語る。


「確かにマリアとは共に学んだ、けど彼女の心は常に勇者達と共にあった。彼等は小さい頃からの幼馴染だったのよ」


 勇者のパーティかつての仲間達は、まだ人間の国がここまで高慢ではなかった頃、同じ村で生まれ同じ環境で育つ。

 当時、人間の国は拡大の途上にあり、未知の土地の開拓や調査に挑む冒険者は、子供達の憧れの的だった。


「何か凄い物を発見したら一気に有名になり、富も名誉も手に入る。勇者達もそれに惹かれたんでしょうね」


 物心つく頃には、皆それぞれの得意分野を磨き始めていた。特に熱心だった勇者は、剣も魔法も知識も必死で吸収した。


「そして冒険者として名を上げていた頃、凄い六人組のルーキーが居るって噂が広がったの」

「六人?勇者のパーティは五人じゃなかったの?」

「最初は六人と言われていたわ、私も昔、確かに全員で六人いたと聞いた事ある。でもそれがいつの間にか五人というようになっていた」

「勇者のパーティに一体何が……」

「そして六人のパーティと言われていた頃、亜人も居たと言われていたわ」

「じゃあその消えた六人目の仲間が空翼人だったと?」

「おそらくね、けど私は彼等と会った事が無いから本当の事は分からない」

「空翼人か……」


 その後も、魔女は授業を続けながら二人は山道を歩き続ける。


「という訳で、空翼人というより亜人関連の資料はほとんど残ってないわ」

「だったらそもそも、空翼人がどういう種だったかももう分からないんじゃ」

「そうね、ただ残る功績からその技術も知識も、どの種よりも秀でていた事は確かよ、っと」


 ルイン達の眼下には一面、緑豊かな光景が現れる。


「緑だ」


 山脈をぐるりと周り、ようやく軍師の言っていた北の山の森に着いたのだ。二人は山を下り森の出入口に移動する。


「やっとここまで着いた〜」

「気を抜いちゃダメよ。交渉はこれからなんだから」

「そうだ、森を見たらちょっと気が緩んじゃった。これからだもんね」


 ルインは改めて気を引き締め、馬を引きながら森の中へ足を踏み入れた。

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