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絶滅記  作者: banbe
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共生3

 ルインは戦えない亜人達の盾となりながら、救助に当たっていた。

 人間の軍は他にもいくつもの部隊が村の中に侵入していたのだ。

 この村の子供の多くが獣人と人間のハーフ、つまり亜人である。住民は村中を回って子供達を集めるが、人間の兵に襲われそうになる。

 その光景を見たルインはとっさに、住民と人間の兵の間に入る。


「あんたは王様!?なんでこんな前線に!?」

「そんなことより早く避難を!」


 だが住民はルインより前に出て兵と対峙する。


「王様がこんな所に居るなら、あんたの軍も近くに居るんだろ?戦えないやつらを守ってやってくれ!」


 村の住民は戦えない者をルインに託した後、止める間もなく武器を手に、人間の兵に向かって行く。

 ルインは怪我をしたり、まだ小さく走れない子供を無理やり馬に乗せ、ワドファーの軍が作った簡易基地に走る。

 戦場と化した村の出口を目指す途中、一人また一人とルインは逃げる者を助けていく。


 ワドファー基地がある方の村の入り口では、既にワドファー軍が戦闘準備に入っており、ルイン達を援護するように陣形を展開した。

 ルイン達はワドファー兵に守られながら、奥で指揮を取っている宰相と合流する。


「ルイン様!ご無事で!その子らは村の……?」


 ルインは事の顛末を宰相に手早く説明した。


「なるほど……既に村は戦場と化しているのですね。私は子供を預かります、護衛に十人残りなさい」

「あの村を人間に奪われる訳にはいかない、俺は戻って人間と戦う」

「分かりました、お気をつけて」


 ルインは子供が乗る馬を宰相に任せると、ワドファー軍一部隊を引き連れ再び村内に急いだ。

 村の中では戦いはさらに激しくなっており、火のつけられた家も増えていた。ルインは急いでワドファー軍を住民の援護に向かわせるが、人間の兵は明らかに最初見た数よりも多くなっていた。


「どんどん増えてる、やっぱり最初の奴らだけじゃなかったか……」


 ルインは単独で人間の兵達を突破し、レオンを探し村の奥に入って行く。するとレオンは三人の亜人を庇いながら戦ってるのを見つけた。


「お前達はワドファーに逃げろ!俺は人間だから奴等に捕まって殺されはしない」

「だがそんなボロボロな体で……」


 庇われている亜人の言う通りレオンの体には至る所に傷があり、かなりのダメージを負っている状態だった。そんなレオンの前に指揮官が出てきて剣を向ける。


「確かにあんたは強い冒険者だ、とても俺一人だとお前の相手にならなかっただろう。だがそんな力の差は数で簡単にひっくり返せる。これが軍と冒険者の差だ!」


 指揮官はレオンに剣を振り下ろす、しかしその間にルインが入った。


「!?魔王!」

「ワドファーの?戻ってきたのか!?」


 突然割って入ってきたルインに驚き、指揮官はとっさに剣を止めた。


「?」


 いつもならここで人間の兵はルインに攻撃を仕掛けていた。しかしこの指揮官は攻撃を寸前で止める。


「危ない危ない……魔王よ、残念だがお前の力は研究されている。死ぬと分かっていてお前に攻撃を仕掛ける馬鹿はない!全員、魔王は無視しろ!今はこの村さえ手に入ればいい!」


 指揮官は周りに伝えると兵達はレオンを囲う。


「みんな、なるべく俺から離れないように」


 囲われてなお、ルインは村の住人を庇うように両手を広げる。


「けど……このままじゃ、俺はあまり役に立てそうにない」


 ルインは後ろに居る村の住民達に謝る。


「……そうでもない、俺が合図したら頭を下げてくれ」


 人間の兵はなるべくルインに攻撃が当たらない様、住民達にどんどん近づいて行く。

 しかしそれを見計らってレオンは斧を巨大化させた。


「伏せろ!うおおおおっ大回転斬り!」


 囲っていた兵達は巨大になった斧の回転に巻き込まれ、間髪入れず囲われていた亜人が指揮官を狙い飛びかかる。

 しかし指揮官は警戒したのかギリギリのところで躱す。


「危ない!まだそんな力を残していたか」


 レオンの一撃のおかげで包囲は崩され、一度に兵を失った指揮官は立場が逆転する。


「ハァハァ……お前のその身のこなし、そしてこの動きがバラバラな作戦。お前達はただの軍兵じゃないな?」

「今の俺はただの兵さ、だがこの作戦には前職の伝手やコネを使わせてもらった」

「前職?ならお前やこの兵達は元冒険者か!」

「全員ではないけどな。正規兵は都で手いっぱいだ、新たな魔王が出てきて冒険者達も活気づいてる。使わなければ勿体ないだろう」


 レオンは静かにルインに話しかけた。


「……王様、そっちの協力を断って悪いんだが、俺達に協力して欲しい」


 ルインは頷く。


「まずはあの指揮官をなんとかする、盾になってくれ」

「分かった!」


 返事すると同時にルインは短剣を構え指揮官に向かい駆けだし、後ろにレオンと亜人達が続く。

 指揮官はルインからの攻撃に備えようとするが、ルインはすぐ横をすれ違う。何もしてこない事に驚き、一瞬の油断した隙にレオンは大斧を振るう。

 剣で何とか防ごうとする指揮官だが、勢いの乗った大斧に耐えきれず剣は弾き飛ばされてしまい、さらにレオンに続いていた亜人の爪と牙の餌食となった。

 喉笛を斬られた指揮官は声を上げることも出来ず絶命する。

 敵の最後を見届けたルインはレオンに言った。


「指揮官が居なくなれば人間の士気は落ちるはず、今の内に体勢を立て直そう」

「いや、冒険者が兵に混じっているなら士気はあまり関係ないだろう。それどころか報酬の取り分が増えるから喜びそうだな」

「そんな……」

「だからこそ王様、いやワドファーに協力を申し込む」


 レオンは昼とはうって変わってルインに深々と頭を下げた。


「どんな協力をすればいい?」

「……村の亜人達を逃がして欲しい」

「何だって!?」


 ルインが口を開く前に亜人達が驚いた。


「おいレオン!どういうことだ!」

「村の全員で移動するって手はずだったろう!」

「それが理想だった、だからこれは何かあった時の為の第二の案だ」

「第二の……案?」

「そんなの話聞いてないぞ、いつ決まったんだ」

「……亜人が居ない場で決めた」


 その言葉を聞いた亜人の一人は、怒りレオンに掴みかかる。


「てめぇ等だけで決めただと!それじゃ人間の国とやってる事が同じじゃねえか!俺達は仲間じゃなかったのかよ!」

「今回の戦いは原因が原因だ!単なる冒険者には荷が重すぎるんだよ!」

「前だって一緒に逃げられたじゃねえか……」

「それはいち早く避難したからだ。ここまで争いに巻き込まれたらもう無理だ。バラバラに逃げれば生存率だって上がるし、人間は人間で足止めできる」

「クソ……」


 住民同士の口論にルインは割って入る。


「早くするんだ、今この時もみんな戦ってるんだ」


 亜人は諦めたようにレオンから手を放した。


「……今は言い争ってる場合じゃないな。良いだろう、村の亜人は俺達が声を掛けて逃がす」

「俺達人間はお前らの逃げる時間を稼ぐ、安心しろ人間なら途中で逃げることも出来る」


 そう言うとレオンは人間と時間を稼ぐ為、人間の兵に向かって行った。


「よし、俺達は村中の亜人を……どうしたの?」


 ルイン達も行動しようと駆け出すが、先導する亜人は浮かない顔をしており、疑問に思ったルインは走りながら事情を聞いた。


「レオンは……いやこの村の人間達は、俺達を逃がすため死ぬつもりだ」

「何だって?……でも今俺達にできる事は無いよ……急ごう」


 ルインと亜人達は、住民が目につく度、声を掛けて行く。戦闘の最中の者や追ってくる人間も居たが、ルインを盾になんとか数十名集めワドファーの兵の一部とも合流する。

 彼等は元々冒険者や訓練を積んでいる住民が多く、多数の人間の兵相手でもまともに相手をしなければ逃げる事は難しくなかった。

 そして、固まりながら村の住民を助ける姿を見た人間は、諦めたように引いて行った。


「よし今の内に村を出よう」


 亜人達を前にルインは提案する、しかし自分達の村が好き勝手にされ、共に過ごしてきた人間達は今も戦っている。更にまだ村に住民が残っているもいるかもしれない状況で、亜人達は賛同しなかった。だがレオンと一緒に居た亜人はみんなを説得する。


「レオン達は人間の兵を足止めしてくれてる、まだ残っている者が居たらあいつらが何とかしてくれるだろう」

「そんな無責任なことがあるか!今まで一緒にやってきた仲間だぞ。第一あいつらを置いていくのか」


 住民の一人が声を上げる。


「レオンは……この村の人間は俺達亜人を逃がす為、時間を稼いでくれている……」


 レオンと一緒に居た亜人が、レオンとの会話を全て話し、亜人達に村の人間が考えていた事を伝える。


「そんな……じゃあ、あいつらは俺達を逃がすつもりだったのか!」


 村の亜人達は仲間とは言え人間の事を本気で心配する。

 ルインとワドファーの兵達にはそれがかなり奇異な事に見えた。


(これが前魔王との戦いの前に普通に見られていた光景なのか……)


 ルインはこの光景を心に刻みながら声を上げる。


「俺はレオンからみんなの事を頼まれた、戦うにしても逃げるにしてもいったんワドファーの方へ合流してくれないか?」


 その言葉を聞いた住民達は、皆申し訳なさそうにルインを見る。


「王様よ、すまない。俺達は仲間を置いていけない」

「な!?レオンは体を張ってみんなを守ろうとしてるんだよ?」

「人間の国軍とか冒険者とかなんてどうだっていい!仲間が命を賭けるなら自分も命を賭ける、俺達はずっとそうやってきたんだ!」

「それに人間と言えど、国に立てついた奴を国が放っておくとは思えない。人間なのに差別もしないあんな理解のある奴を死なせちゃならねえ!」

「レオン達の覚悟を無駄にするのか!?」

「だからって俺達の覚悟も無駄にして良い訳じゃないだろ!」


 ルインは言い返せなかった。


「……分かった、だけど兵達は順に進行してもらってるから、そんな突撃みたいなことさせられない」

「元々お前達の力は借りる気なんてなかったんだ、期待はしてない」

「だから俺が行く」


 ルインの言葉にワドファーの兵がざわついた。


「俺なら死ぬ事は無いだろうし……差別しない人間はもしかしたら俺達の希望になるかもしれない」

「そうか、よしなら急ぐぞ。あんたはこれを」


 先ほど、レオンと一緒に指揮官と戦った亜人がマントを手渡す。


「あんたの力は研究されてるって話だ、相手に攻撃させたいなら正体を隠しな」

「そうか、俺だと分からなければ……ありがとう」


 ルインは住民達と村の東側に移動する。


 村の住民が固まり出したのを見た人間達は、自身も徒党を組もうと東側に集結していた。

 住民達はまだ原型が残る家に隠れながら人間達の様子を伺う、そこには大量の人間の兵の格好をした冒険者がおり、その数は今も村の中で戦っているワドファーと合わせても倍は居た。


「こんなに……」


 その中に人間の兵に捕まったレオンと数名の村の住民を発見する。

 住民はみなボロボロでかなり抵抗した跡が見られ、村の外へ連れられようとしている最中だった。


「マズい!連れて行かれる!」

「待つんだ!」


 焦った少数の亜人は、ルインの制止も聞かず飛び出してしまう。

 人間の兵に模した冒険者達は、亜人の突然の攻撃に驚く事は無く反撃してきた。


「レオン達は囮か!」


 飛び出した者に呼応して、亜人達は次々と仲間の救出に向かう。

 亜人達が助けに来た事にレオン達も驚く。


「お前達なんで来た!」

「勝手な事をする仲間が居るからだ!」


 亜人達の勢いは良かったが、助けに来ることが予測されていたせいか、仲間である村の人間の元までたどり着けない。それどころか、戦力差で亜人達は押され始める。


「このままじゃ被害が増える一方だ……」


 ルインもマントを被ったまま、人間の兵の前に飛び出した。

 正体を隠した効果はあったのか、人間達は一番突出してきたルインに斬りかかってくる。

 ルインの力で不自然に兵達は倒れ戦場は混乱する。


「なんだ!どこから攻撃が!?」


 混乱の隙を突き亜人達は一気に攻め込み、ついに捕まっているレオン達に近づいた。

 亜人達は急いでレオン達人間の住民の拘束を解く。


「お前達……これが罠だってこと分かっていただろ!」

「お前こそ、俺達が仲間を見捨てるなんてする訳ないだろ!」

「だから俺達人間だけで話し合ったんだよ……」

「みんな話は後だ、今はこの場を何とかしなきゃ」


 拘束を解かれたレオンや住民は、人間が持っている武器を奪い戦闘を始める


「王様!なんであいつらを連れて来た、協力を頼んだのに!」


 混戦の中剣を振るいながらレオンはルインを責める。


「ごめん、だけど俺だけじゃ止まらなかったんだ……」

「そうだワドファーの王は関係ない」

「罠なんだよ!俺達だけなら捕まるだけで済んだのに……まだ敵の兵は来る、誰かが足止めしなきゃ逃げられないんだよ!」


 レオンの言う通りこの場で少し人間を倒した所で戦力差が縮まることはなく、周りも徐々に押し返されていく。


「おそらくまだ後方に部隊はいるだろう、頼む逃げてくれ……」


 レオンの必死の懇願に亜人は困惑する、だが無情にも考えてる時間はなく、村の外側から人間達が大勢侵攻してきた。


「なんだこの凄い数……」


 その中には軍の鎧を着てない者もかなりいた。


「まずい!奴らここで俺達を一網打尽にするつもりだ。逃げろ!」


 兵が向かってくるだけではなく、矢や魔法も放たれ、あまりの数の差に亜人達にはもはや選択肢は無く、逃げる事しか道は無かった。

 レオンを始め村の人間は当然のように亜人達の盾になる。


「ワドファーの王!今度こそ本当にみんなを頼むぞ!」


 逃げる亜人の列、最後尾に着いたルインにレオンは言った。


「分かった!」


 レオンは人間の軍勢に立ちふさがる、だが突出した一人の若い冒険者がレオンを無視して先へ行こうとした。


「行かせねえよ!」

「ぐぁ!」


 その冒険者を切り捨てレオンは呟く。


「剣はあんまり得じゃないんだがな……」

「どけじじい!この村の亜人は狩りの対象なんだよ!」

「冒険者としての依頼か?奇遇だな、俺も冒険者としてあいつらを守る!」

「はぁ?ギルドはそんな……」


 若い冒険者は何か言い終わる前にレオンに顔面を殴られ潰された。


「パーティの仲間を守るのは冒険者として基礎中の基礎だろうがぁぁ!」

「おおおぉぉぉ!」


 レオンの叫びと共に村の人間達は敵の兵に向かって行った。



 ルイン達はある程度後ろに下がるとワドファー兵と合流、時折飛んでくる矢や魔法から亜人を庇いながら村を突っ切り西へ逃れる。


「村もあいつらも見捨てなきゃいけないのか……」

「これから一体どうすれば……」


 ワドファーが村の監視の為作った簡易基地に何とか到着するが、村の亜人達は皆意気消沈した状態だった。

 ルインは宰相に状況を説明する。


「なるほど冒険者は思いの他厄介そうですね……」

「軍として統率されてる訳じゃないって聞くし、村を超えてくる奴も居るかもしれない。あの数じゃ今の戦力じゃ勝てない。早急にここを離れよう」

「今日建てた基地をもう手放すのは心苦しいですね」

「だけどこんな状態じゃ……」


 ワドファー兵も村の亜人達も、心身ともにボロボロだった。


「一人二人の相手ならまだしも、連携の取れるパーティ複数に囲まれたら逃げ切れないかもしれない」

「ルイン様達が村に向かった後魔力通信機で兵の要請をしました。途中で合流できるでしょう」

「助かる、戻るのが多少楽になるよ」


 ルインは村の亜人達にこのままワドファーへ行くことを提案、亜人達は力無くその案に頷いた。

 戦闘直後で疲弊したまま、休む間もなく移動が始まり、道中ルインと宰相は今後の方針を決める。


「突発的な遭遇戦とはいえ完敗でしたね」

「準備の差かも。これからはあの村を中心にして戦う事になるだろうね」

「魔王認定から冒険者をあんなに早く集めて、前面に押し出してくるのには驚きました。ですが逆に考えれば西の都はまだ混乱の最中でしょう。国外で戦うなら王都や他の都から正規兵が来ない今がチャンスです」

「あの村が奪われたら西の都から脱出する亜人を受け入れられなくなる、あそこは早急に取り戻すよ」

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