魔王3
時を同じくして、人間の国でも同じように会議をしていた。
会議室の上座に大臣が座り、政府の高官や軍の指導者など国の評議会の面々が集まっていた。
もう何度目かにもなる国の会議は、ワドファーとは違い場はかなり荒れていた。
「西の都のデモは激しくなるばかりです。ワドファーが介入した直後の為、なかなか収束せずにいます」
「西の都の軍だけではもうどうにもできません、王都への協力を要請します!」
「南の都はまだ軍が整ってない、こちらにも指揮できる人員が足りない」
「北と東からも兵は出ている!それで何とかしろ!」
「それじゃ足りないんですよ!」
「そもそも王位継承はいつやるんですか!?」
言葉が行き来する中、大臣は机を叩き周囲の注目を集める。
「みなさん少し冷静になって!」
だが周りの声は冷ややかなものだった。
「大臣風情が何を!」
「我々はまだ、あなたがその椅子に座る事を認めてはいない!」
「何か発言するならまずその椅子から降りて貰おう」
野次を飛ばされても大臣は冷静に話す。
「まあ待ってくれ。王の子供はまだ小さく、とてもじゃないが政はまだ出来まい。王子が即位したとしてもどの道私が国を回すことになるのだ。しばらくの間私に代理をやらせてもらえないだろうか」
周囲からの野次は罵声に変わる。
「何を馬鹿な!」
「権力を乗っ取りたいだけだろう!」
「国を動かせる人間は他にもいる。お前がその椅子に座る必要などない!」
今度は大臣は頭を下げながら言った。
「だが会議をする度この有様。今は我々で争っている時間はないんだ、ほんの少しの間だけで良い」
「少しの間だと?もう戦いは始まったんだぞ。本格的な衝突が起こればそれこそ代理を決める機会が無くなる」
「安心して欲しい、ワドファーを滅ぼすのに時間はかからない。私は直接、敵の王を目にした」
「どういうことだ?」
「元よりワドファーの戦力は圧倒的に少ない、そしていくら王が特殊な力を持っていても大群の前では無力。私が王の代理を務めればワドファーなど問題にならず戦争を終わらせ、すぐに王位継承問題を話し合える」
会議室内にざわつきが広がった。
大臣が座る玉座のすぐ斜め前に座っていた男が質問する。
「もし短期に決着がつかなかった場合どうする?」
大臣は自信満々に答えた。
「そうなればこの地位、財産。全て差し出そう」
その言葉を聞いた会議室の人々は静かになっていく。
「私が代理という事でよろしいか?」
「とりあえずはだ」
「後で決着までの期限を決めよう」
周りは渋々了承する。
「感謝する」
大臣は再び頭を下げると、人間の会議はやっと本題に入った。
「……それで、短期決戦に向けた策はあるのか?」
斜め前の男が聞く。
「まず敵は我々に宣戦布告した挙句、王を殺し逃亡。さらに敵の軍は西の都に介入。ここまで来ると南の都宮殿壊滅と西の都の領主、マリア殺害も何らかの関係がある可能性が高い。こんなに我が国の平和を乱したんだ、敵国ワドファーの王ルインを魔王と認定する」
「!?」
会議室内は再びざわつき出した。
「魔王だと?」
「そうだ、怪しいとは思わないか?突然の南の都王宮壊滅と戦士ガイの死、突如出てきた謎のワドファー王後継者。そして、我が国最高の魔法使いであるマリアの死」
「確かに戦争になる前後でこんな事件が続くなんて」
「戦士ガイも魔法使いマリアも強烈な強さを誇る勇者の仲間達、それが短期間に二人も……」
「全て現ワドファー王ルインが仕掛けたとでも?」
「ならそのルインという者が、ワドファー前王を殺して国を乗っ取ったって事か?」
会議の面々が次々と憶測を話す中、大臣はさらなる追い打ちをかける。
「そしてさらに我が国の王が殺された後、敵の王ルインはこの城から去る際、勇者に重症を負わせた。私もその場に居合わせ、この目で確認し、城内の兵何十人もの証言がある。凄まじい力を持つ者が我が国の平和を脅かそうとしているんだ、魔王認定に異論はないな?」
室内に異議を唱える者はいなかった。
「ならば魔王および、その王国であるワドファーの主要戦力に賞金を掛け、冒険者ギルドに通達する。これにより、大々的に魔王討伐の冒険者を募る」
過去の魔王討伐以降、冒険者の数は減っていったものの、勇者のパーティ含め冒険者には強者が多く居た。
腕のある冒険者達は戦う対象が居なくなると、王都の兵にスカウトされていきそれが王都の兵が他の都の兵より優秀とされる理由だった。
「足りない戦力を冒険者で補うという事か」
「冒険者は依頼さえすれば何でもやるからな」
「それに給料のある兵と違い、依頼に失敗すれば金を払わなくて済む」
「前回の魔王討伐以降、単なる便利屋として人気が無くなっていたが、これで冒険者業も活気づくか」
大臣の提案はかなり好評の様だった。
「大金を稼げる機会があれば人手も増えるだろう。勇者は現在傷を癒しながら魔王を倒す手段を探している。だが準備さえあれば勝てると勇者は言ったのだ。今はワドファーをさっさと倒し、後にゆっくり都の再建と王位継承について話そう」
人間の国の会議も何とか終わる。
会議の後、人間の大臣は広い王の間の玉座の前に立っていた。
「この国の最高権力まで今一歩……気味の悪い亜人共を駆除し、異議を唱える邪魔者共を密かに排除していけば、この玉座は完全に俺のものとなる!ふふふふ……はははははは!」
王の間には大臣の笑い声が響いた。




